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たたかえません


「え、訓練をミカエラさんと一緒にですか?」


「そうだ、今日はお互い休みだろう?それに今日は明日のイベントの準備で基地にいるものが多いから訓練場も人が少ない。たまにはどうだ」


「た、しかに最近は学校がないので家にいることの方が多いですが・・・。」


 朝食を食べながらミカエラさんから訓練のお誘いをうける。

 学校は試験やらレポートなんかの提出も全部終わったし、次の学年に上がるまでは基本的に休みである。

 そしてターシャさんのところと騎衛隊に行く以外で外出するわけにもいかない気もして、基本的にミカエラさんの家にこもってばっかりになっている。


 まあ・・・今自分がどれだけ動けるのか、把握しておかないとだよね・・・。自分の家もミカエラさんの家でもできることは限られているし。・・・それと、


 体動かしてる方が好きなんだよね・・・。本を読むのと同じくらい。勉強は・・・学校で学んでいる分野はまだしも、そこまで頑張れないし・・・。・・・色々思い出してしまうし、なにより頭がすっきりしなくて苦しいんだよね。


「リィデア?今日はやめておくか?」


「わ?いえ・・・!いきます!・・・でも、私のような女子がお邪魔しても大丈夫なのでしょうか?」


「まあ、ちょっと髪型やら服装を工夫させれば大丈夫だろう。私のを使うといい」


 ・・・確かに。


「ありがとうございます!お・・・お借りします!」


 ミカエラさんから必要なものを借りつつ、せっかくなのでいつもミカエラさんがしているような後ろで低めの一つくくりをつくる髪型を真似していると、その上からミカエラさんがいつも使っている髪留めをつけられた。


「ミカエラさん、これは・・・?」


「せっかくだ、あげる。髪留めの横向きに刺さってるやつはそのまま嫌な奴めがけて投げられるし、かわいいし、リィデアによく似合う。」


「嫌な奴めがけて・・・あ、ありがとうございます」


 嫌な奴かどうかは置いといて・・・確かに非常時役に立ちそう。

 ・・・訓練しに行くはずなのに心が弾んできた。いけない、集中集中・・・。


「まあ準備はこんなものか。じゃあ行こうか。」


「はい!」


―――――――――――――――――――――――――


「ここが訓練場だ。」


「広いですね・・・」


 ミカエラさんに案内され辿り着いた場所は、想像よりもはるかに広く、一周走るだけでもかなり鍛えられそうだ・・・。ミカエラさんが言っていた通り、他の隊員の方は見た感じほとんどいない。それぞれ自主練に励んでいる感じだ。


「人数も多いし、あと広ければ広いほど何でもできるからな。ああ、前はこのあたりからあの木の根元あたりまでロイが吹っ飛んでいってたな。」


「ここから・・・?」


 ミカエラさんが示す木からここまではテニスコート一面分ほど距離がある。

 ここからあの木って、人が吹っ飛ばせる、吹っ飛ばされる距離なの・・・?というか、吹っ飛んでったんじゃなくて、ミカエラさんが吹っ飛ばしたのまちがいでは・・・?

 

「そういや、リィデアはどうやって戦うんだ?」


 あ、これわりと当たり前のやつだ。

 ・・・ちょっと自分も吹っ飛ばされてみたいかも。


「え、私ですか?・・・その場にあるもので何とかするので・・・。基本的には着の身着のままって感じですね。あとは相手から武器を奪ったり、落ちている武器を拾ったり・・・とかですかね?」


 一応いろんな武器を扱えるようには・・・家に引きこもっていた頃にガロイが教えてくれたけど、『結局は自分の体でなんとかするしかない』って言われたんだよね。・・・それはそう・・・。


「なるほど。・・・しかし・・・、まずは騎士の訓練らしく剣を使ってみるか」


 ミカエラさんから模擬剣を渡され、お互いに距離を空け、剣を構える。


 ・・・ミカエラさんってどんな戦い方をするんだろう。・・・って、真面目にやらないと。

 一人でも生きていけることを示さなきゃ、いつまでも居候のままになっちゃう。


 瞬間。空間ごと切りそうな速度でミカエラさんが距離を詰めてくる。

 地面を蹴った音、ほとんど無かったんだけど・・・!?

 まともに剣を使おうとしてたら簡単に死ぬーーー!


 刀身は残しつつ、ミカエラさんの攻撃の威力を活かして後方にくるりと飛び退き、追撃してくるミカエラさんの剣を少し活用しながらミカエラさんの頭上をくるりと通り過ぎてミカエラさんの背後に着地する。

 といっても着地する頃にはミカエラさんは私の方を向いているんだけど。


 追撃、怖いーっ!もうこの訓練場の塀を超えて逃げたい。嫌だーー!


「・・・リィデア、君の身のこなしは異常だな」


「そ、うですかね・・・」


 とりあえずミカエラさんが止まってくれたことの方が今の私には大きい。自分のことどころじゃないんだけど。


「君の家は皆こんな感じなのか?」


「いえ・・・ここまで派手になっちゃうのは私ぐらいですね・・・お恥ずかしながら・・・」


 お兄様はもっとスマートに動くし、お姉様は敵と対峙してる体でも優雅で品があって・・・。

 自分は跳ねたりひねったり潜ったり・・・?仰々しいったらしょうがないんだよな。


「ミカエラ?今のはなんだ・・・ってリィデアちゃん!?」

「あなたでしたか。今のはどうやったんです?」


「ロイさんにルイさん・・・!」


 救いの手が・・・!早く帰りたい。


「二人か。明日の準備やらはもういいのか」


「おう!そろそろ皆かえってくると思うぞ」

「ゼオバルド部隊長にどうせミカエラは訓練場にいるだろうから、イベント準備を手伝わない薄情さを嘆いてこいって言われましたねえ。」

 

「・・・悪かったな。私がいなくても部下がうまくやるだろ」


「それはそうだけどね~、俺らも基地で準備というか部下の指導してたくらいだし~」

「準備といっても基地はいつも使っていますからね。他の隊の手伝いするくらいでしたね。」


 ・・・いつもこの3人と関わることが多いけど、当たり前に3人とも優秀なんて言葉で言い表せないくらいすごい人たちなんだよね・・・気が引けるな・・・。


「てかリィデアちゃんさっきの何?どうやったらああやって動けるの?」

「ともすれば生死が関わる状況であの動きができるのは並大抵のことではないですよ」


「え、いや、ミカエラさんと剣でまともにやりあえる気が全くしなかったので・・・ああするしかなくて・・・」


「まあミカエラは強いからね~・・・ってそこじゃないからね?」


「え」


 ロイさんがずずずっと近づいてくる。近づいても何もないですよ・・・


「ロイ、近い。」


 私とロイさんとの間にミカエラさんが入る。


「えー、ミカエラ最近独占欲強くない?リィデアちゃんにあの動き方教えてもらいたかっただけなんだけど」


「・・・教えてもらったところでお前は私が吹っ飛ばす。あとちゃん付けで呼ぶなと言っただろ」


 やっぱりミカエラさんが吹っ飛ばしてたんじゃん・・・。じゃなくて。

 ・・・ロイさんが私のことちゃん付けで呼ぶの気に入らないんだ・・・?

 

 ・・・また胸のあたりがチリチリする。不思議・・・。


「やはり()が関係しているのでしょうか、にしてもすごいですね」


 ルイさんが私を見ながら何か考えている。

 ルイさん、何かと私のこと見透かしてそうでこわいんだよね・・・


「そんな・・・私は家族のなかでも不出来な方なので・・・動きもその・・・目立つし」


「じゃあ何かあったときは今日のようにド派手に頼む。その方が見つけやすいからな」


「ミカエラさん・・・」


「そうだねー!リィデアちゃんに近寄ってくる悪い奴はミカエラが一掃してくれるよ」

「それなら私もロイもすぐに駆け付けられますから安心ですね」


 ・・・なんか、当たり前に3人がいつもいるような感じで言われてるけど、これなに・・・。


 とはいえ、一人だとちょっと目立ちすぎるし隙も多いから敵が多かった場合危険っちゃ危険なんだよね・・・。まあ何とかするしかないんだけど。


「ってかミカエラ!ここ原則部外者立ち入り禁止!皆帰ってくるからさっさとリィデアちゃん送るか一緒に帰るかしないと!」

「そうですね。いくらお客様だとしても訓練場で模擬剣を持っている状況はまずいっちゃまずいですね。まあ他の隊員も数人いるので今更感ありますが」


「リィデアは私の訓練に付き合ってもらっていたんだ。何も問題はない」


「わー出たよ訓練おばけ」

「あとで何かあっても肩もてませんよ」


「わかってる。リィデア、帰るぞ」


「は、はいー!!」


 あわててミカエラさんについていく。あ、模擬剣・・・はミカエラさんが持っててくれてる。急げ急げ・・・


―――――――――――――――――――――――――


「にしてもリィデアちゃん末恐ろしいねえ」


 急いで帰っていった二人を見ながら、ロイが言う。


「そうですねぇ・・・。あれが辺境伯令嬢ですか。」


 彼女の身のこなしは、令嬢らしからぬとかいう域をゆうに超えている。あんな芸当が人間に可能なものか。


「なあルイ、マレンディアナってそんなに物騒なのか?」


「どうでしょうか・・・。あれはマレンディアナというか、()の問題でしょうね」


「ひー・・・。俺、あの()には行きたくないな」


「そうですね、私もそう思います。」


 彼女のことも()のことも、まだまだ調べることは多いと思うルイであった。

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