記憶
自責
「リィデア様、失礼します。」
「フィリアね。どうぞ。」
「失礼します・・・、読書中でしたか。本、本当にお好きですね。」
「えぇ。幼い頃からずっと読んでるのに、この家の蔵書の全てを読み切るにはまだまだかかりそうだからおそろしいわ。」
「皆様本を読むのがお好きですからねぇ。加えて集めるのもお好きですから。・・・リィデア様も集めてらっしゃるじゃないですか。また本棚を増やさなければと話していたところですよ。」
「・・・そうね・・・迷惑かけるわ。」
「いえそんな。お好きなものがあるのは良いことです。」
「ありがとう。・・・フィリアのおかげよ。」
「いえ・・・。そう、リィデア様、今日もやるか、とガロイが気にしておりました。」
「そうね・・・お願いしようかしら。」
「最近頑張っておられますね、何かお考えですか」
「・・・この家を、出ようかと思うの」
「・・・リィデア様・・・」
・・・これは・・・、記憶・・・。
私がフィリアに・・・この家に、そして私にずっと仕えてくれているフィリアに、家を出ると言った時の・・・。
―――――――――――――――――――――――――
「リィデアさん、今回のテスト、どうだったんです?」
「えっ、ちょっ・・・」
「へぇ・・・ご兄姉の方々に比べれば大したことないんですね。」
「な・・・」
「本ばっか読んでないで勉強したらどうなんです?先日高学年への切り替わりで代表の挨拶を読んでいたのは、成績の善し悪しではなく、辺境伯家だからなのでしょうか。」
「ちが・・・」
「そう、辺境伯家ともなれば将来が安定しておりますものね。勉強は二の次なのでしょうか。羨ましいです。」
「え・・・・」
・・・嫌な記憶。
お父様とお母様は仕事でいつも忙しくしていて、お兄様、そしてお姉様まで仕事や勉強で家を出てしまったばかり。それで、なんとなく本ばかり読んでしまって、勉強が疎かになっていた時のこと。
・・・辺境伯家の落ちこぼれ。
私が・・・こんなんだから・・・だめなんだ・・・こんなんだから・・・皆、私を置いて・・・。
私は、何を言われても仕方がないんだ・・・。
―――――――――――――――――――――――――
「リィデア様?朝でございますよ。失礼しますね。」
「フィリア・・・」
「今日は学校ではありませんか?朝食がまだのようなのでお呼びに参りました。」
「・・・ごめんなさいフィリア。・・・今日は・・・休むわ・・・。」
「・・・かしこまりました。私どもは常に屋敷にいますので、何なりとお申し付け下さいね。」
「いいの・・・?」
「えぇ。皆様には私からお伝えしておきます。」
「でも・・・」
「そうですね・・・せっかくですしガロイに言って稽古をつけてもらいましょうか。いつもの応用編です。この機会に、もっと強くなりましょう」
「フィリア・・・」
「大丈夫ですよ。リィデア様はリィデア様です。」
・・・フィリアが私の手を握ってくれる。
あたたかくて、泣きたくなるくらい。
あたたかい・・・?
―――――――――――――――――――――――――
「ん・・・。わ、ミカエラさん!?」
ミカエラさんが、私の手を握り、私が寝ていたソファにもたれかかるようにして眠っていた。
「え、どうしよう。とんでもなく申し訳ない・・・、ミカエラさん、ミカエラさん・・・!」
「・・・リィデア・・・。」
「へ・・・!!?・・・って、寝てる・・・」
ミカエラさんに名前を言われて驚く。・・・初めて言われた・・・。
「どうしよう、このままじゃ動けない・・・。」
・・・でも、ミカエラさんの手はあったかくて。
「・・・もう少し、このまま・・・寝ちゃおうかな・・・」
もう少しだけ。
・・・ミカエラさんには後で謝ろう。そう思いながら、もう一度瞼を閉じた。
辺境伯令嬢、リィデア




