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叛乱
それは月のない夜だった。
星もない闇夜の広い河原を行く者たちがいた。
その数三十人程。
皆胴丸に脛当、手には刀や槍を携えている。
その一行は松明も無く進む。
まだ年も明けて間もない冬の川は
水が少ないとはいえ凍える程冷たい。
二筋の水の流れを越え、
田を横切り、灯りもなく静まり返った民家の集まる往来に差し掛かると先頭の一人の男が腕を上げ、その一行は立ち止まった。
男は全員を確認すると、その中の若い男に頷いた。
若い男の「ゆくぞ」
と短い一言で再び一行の進軍は再開した。
彼らが向かう先は今川の舘であった。