VR彼女との過ごし方 三話 【新しい彼女?】
僕の家にVR彼女が来てから一日が経った。
名前はレリィ。
昨夜はレリィとゲームを遊び、ゲームに負けた俺は一緒に眠った。
レリィはVRなのに触れる事が出来る。
触れるだけでは無い。 AIが優秀すぎる。
レリィは何者なんだ?
「う……う〜ん……」
頭が重い……。
「お・は・よ・う」
ゆっくりと目を開けると目の前にレリィがこちらを見ている。
「うわっ!」
驚いてのけぞるとベッドに頭を打った。
「いって〜」
頭を押さえながら、そう言えば昨日ゴーグルを着けたまま寝たんだった。
「お、おはよう」
VRとは言え、女性が隣にいる事がなれない。
「そんなに驚かなくても良いじゃ無い。 さ、早くご飯食べて学校に行きましょ」
「ん? 学校に来るの?」
「もちろんよ」
いやいや、いくらVR空間の中だけでも、それは困る。
もし、他の人に見られたらどうするんだ?
人型のなんて今までいないんだから。
とは言え、早く朝食を食べて学校行かないとな。
今日は朝から講義があるからだるい。
「本当に着いてくるの?」
「当然」
「他の人に見られると困るんだけど……」
特に知り合いに見られると何を言われるか……。
「ああ、その事なら大丈夫よ」
「大丈夫?」
「そ、大丈夫大丈夫。 ほら、早く行こ」
食事も終わり、部屋を出る。
ゴーグルは連絡手段としても使えるし、調べ物も出来る。
なので、着けて歩いていても問題ない。
ただ外を歩く時、隣に女性がいるのが不思議だ。
これで手を繋いだり、腕を組んだりすれば恋人として見られるのだろう。
「本当に大丈夫なのか?」
僕の心配もよそに、レリィは外の世界を楽しんで歩いている。
VRペットを連れ散歩している犬に吠えられてビックリしてみたり、撫でに行ったり。
ただ不思議な事にペットの飼い主にはレリィが見えていないのか、ペットが急に吠えたり、お腹を出して寝っ転がったりと変な行動に驚いていたりする。
どうやら本当に他の人にレリィの姿は見えていないようだ。
大学の講義中も、学校の中見てくるとか言ってどっかに行っちゃったり自由に教室の中を歩き回ったりしている。
距離の限界はあるみたいだけど、僕からは自由に離れられるようだな。
今日は午前中だけで午後の講義は無い。
昼が少し過ぎたけど、夕飯の買い物だけして帰ろう。
スーパーでは買う物を決めて袋に入れ、出口に向かうだけでゴーグルに合計金額が表示され、勝手に引かれる仕組みだ。
「今日は野菜を使ったパスタ作りましょうよ」
「パスタか……」
自分で作る時は全てレンチンだ。
レンジで麺をレンチン、レトルトソースもレンチン。
楽で美味しい。
レリィはパスタに使う材料を指示して袋に入れる。
オリーブオイルなんて家には無いから結構な値段となってしまった。
今月は節約しないとな。
レリィに指示されながらキャベツ、玉ねぎ、アスパラ、ベーコン、唐辛子、ニンニクを刻み、オリーブオイルを温めニンニクの香りを出した後、ベーコンに軽く焦げがつく位火を通し、塩少々、玉ねぎが透き通る位に炒めたら唐辛子、アスパラを加え、別で茹でていた麺の茹で汁を加える。
茹で汁でフライパンに付いた焦げと一緒に乳化させる。
茹で上がる一分前に麺を取り出して加え、一分混ぜたら完成。
レリィの的確な指示により、完成したパスタは自分で作ったとは思えない程の美味しさだった。
「美味い!」
「でしょう!」
こんなに美味しいならもう少し多く作っても良かったな。
「そうだ、手紙が来てたわよ」
「手紙?」
今の時代はゴーグルで世界中通信が出来るから、紙の手紙なんて滅多にない。
玄関のポストを調べる。
「誰からだろう?」
手紙の差し出し人は……、親父!?
手紙の内容は大した事が書いていない。
外国の美味しい料理食べましたとか、ここに行ったぞとかくだらない内容だ。
お金送ってくれてるだけましか。
他に入ってる物は……と、封筒からポロッとカードが落ちてきた。
「なんだこれ?」
見た感じゴーグルに取り付け可能のようだけど?
ゴーグルに取り付け、グローブをはめてデータをインストールする。
すると、ゴーグル設定時の人の形をしたシルエットが出てくる。
「またか? これってもしかして……」
僕は一番背の低いシルエットを選んでみた。
最初の時と同じ様に目の前に光りが人の形を作っていく。
「ん〜〜……、やっと出れたーー!!」
伸びをしながらショートカットの銀髪、身長は173㎝の僕より20㎝位低い150㎝位かな?
瞳はオッドアイだ。
今回はレリィが直ぐに体をタオルで巻いたので、見えていない。
名前を聞こうとしたが、先に口火を切られた。
「酷いよ兄ちゃん! ウチを最初に選んでくれると思ってたのに!」
いきなり抗議された。
「せっかく兄ちゃんと楽しい生活を送ろうと思ってたのに!」
「そう言われてもな……」
「仕方ないですよ。 てんじは説明書読んで無いんですから」
「えー! そうなの! 読んでくれてれば絶対ウチが最初に選ばれたのに!」
「……ごめんよ、それで君の名前は?」
「あ、ウチは【V0-2 ディア】って言います】
「ディアちゃんだね。 えと、ディアちゃんも僕のVR彼女だったりする……の?」
どうみても12、3歳だ。 いくらVRでも犯罪では無いだろうか?
「VR彼女?」
「え、ええ!そうですよ。 私達はVR彼女で、てんじの彼女になるんでしょ!?」
レリィは何か慌てたようにディアちゃんに伝えてるが、ディアちゃんはキョトンとしている。
「もしかして兄ちゃん、ウチの事女の子だと思ってる?」
「……え!? 違うの!?」
ディアの顔立ちは見ようによっては可愛くも見える。
女の子の様に白い肌だし。
「違うよ。 ウチは男だよ。 てんじ兄ちゃんと一緒。 兄ちゃんのお世話する為に出てきたんだけど、女の子じゃなきゃダメだったかな……」
ディアくんはなんだかグスッとベソをかいている。
「いや、そんな事は無いよ。 男の子で良かったと思ってるよ」
とりあえず泣き止ませよう。
「ほんと!」
パァッと笑顔を見せてくれて、抱きついてくるディアくん。
その笑顔は男の子とは思えない程に可愛く、僕も照れてしまう。
やっぱりディアくんもレリィと同じで触れるんだな。
「てんじってもしかしてそういう……」
ディアくんに抱きつかれて照れている俺を見てレリィが少し引いている。
「違う違う! そういう趣味は無い」
「ん?」
ディアくんは顔を上げて見てくる。 ディアくんは知らなくて良いんだよ。
そして、ディアくんが来た事で、VR空間が賑やかになった。
ディアくんはアニメが好きなようで、一緒に見ている。
操作する為にグローブをはめているので、ディアくんが僕の膝上に座っている感触はある。
レリィとは違うがやっぱり良い匂いがしてくる。
同じ男なのに何故だ?
ディアくんはアニメのロボット物が気に入ったみたいで、時おり僕の方を見て色々質問してくる。
同じアニメを好きになってくれるのは嬉しい。
そして、レリィと、ディアくんとゲームを楽しむ。
一人じゃつまらないゲームも皆んなでやれば楽しい。
就寝時、ゴーグルを外して寝ようとしたが、ディアくんがどうしても一緒に寝たいという事なので、今日は一人用のベッドに三人入る事になる。
勿論それはVR空間の事だ。
ゴーグルを外せば一人と言う事は知っているよ。
大丈夫、ペット飼っている人はよくゴーグルを着けたまま一緒に寝たりしてるらしいし。
僕だけじゃないよ。
昨日と違うのは今日はグローブをはめている。
このグローブ今までのグローブとは違い、小型の手袋位でそこまでの違和感は無い。
だがしかし、このグローブをはめていると、レリィやディアくんに触れてしまう。
レリィは仕方ないと言う事で背中を向いて寝ている。
ディアくんは僕の腕を足の間に挟んで抱きついて寝ている。
抱きつかれている感触と体温を感じる事が出来るので、動くに動けない。
片方の腕を動かすとレリィの臀部に触れてしまうし。
今日は寝不足になりそうだ……。
読んで頂き有難う御座います。
次話も宜しくお願い致します。