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VR彼女との過ごし方 二話 【VR彼女との暮らし】

 海外の親父から大学の合格祝いとして送られてきたVRゴーグルとグローブ。

 最新式という事で早速使ってみたら、何故かVR彼女と言う聞いた事の無いシステムが入っていた。

 そのVR彼女が起動してしまい僕が選んだ【レリィ】と言うキャラが彼女となり、一緒に過ごす事となった。


「てんじの趣味ってなに?」

 レリィは自分で選んで買った服を着ている。

 やっぱり女性の服は女性に任せないとダメだね。

 随分と可愛くなった。

 清楚系だ。


「てんじ聞いてる?」

「あ、ごめん。 僕の趣味はゲームに漫画、アニメをみる事だな」

「ふ〜ん……」

 しまった! オタ趣味全開で話してしまった。

「ゲームってどんなのやるの?」

「RPGとかシューティングとか色々だけど」

「何か私にも出来るのってある?」

 VRのレリィに出来るゲームって言ったら、やっぱりVRゲームになるのか?


「そうだなあ……」

 僕が考えていると、レリィは僕の隣に座り、付けているゴーグルを指差す。

「そのゴーグルでゲームしてくれれば私も色々出来るよ」

「そうなの! ならこれでもやってみる?」

 僕はゴーグルにゲームをインストールする。

 そしてやるゲームはパズルゲーム。

 360度の方向から中心に向かって落ちて来る物を重ねて消すゲームだ。

 僕はグローブでコントロール出来る。 レリィは手を動かしてコントロールしている。

 レリィが上手い! さすがAIだ。

 だが次は負けん!


 お次はレースゲーム。

 リアルなレース場や街並みを走る事が出来る。

 車種も様々な物がある。

 レースゲームの勝者は僕だ。

 レリィは……、下手過ぎないか?

 カーブの時は体が動き、動きが激しい為肩がぶつかる。

 一週遅れにした時は「ちょっと待ってよ〜!」と肩をぶつけてくる。

 なんだこの気持ちは……。

 これが彼女がいるやつの気持ちなのか?


 そしてレースゲームは俺の完勝。


「なら、次はこれ! これやろ!」

 レリィがゲームを選んできた。

 ゲームはシューティング。 僕の得意としているゲームだ。

「今の所一勝一敗だよね。 だから、これに勝った方が一つお願い出来るって言うのはどう?」

 レリィは自信満々に賭けを申し出て来た。

 やはりAIはシューティングとか強いのか?

 だが、僕だってそれなりの自信はある。

「よし、受けてたとう」

 勝負が始まる。


 先にレリィがプレイ。

 一面のボスまでは行ったようだけど、そこで残機を使い果たしゲームオーバー。

 そんなに上手く無いぞ……。

 次は僕の番だな。

 このシューティングは敵がランダムな場所から出てくるので、前の人のプレイを見ても問題ない。

 だが僕は得意分野だし、レリィはシューティングゲームも初プレイ。

 ならばここは……。

「ハンデを、あげよう」

「へ〜、随分紳士じゃない。 ほんとに大丈夫?」

「大丈夫さ。 俺が勝ったらどうするかな……」

「そうねえ……。 ならこんなのはどうかな?」

「こんなの?」

 レリィは胸元を大きく広げ、谷間を見せつけてくる。

 …………。


「どした?」

「あ……、な、なんでも無いよ」

 レリィはニンマリと笑っている。

 くそっ! 彼女居ない歴=年齢の健全な男子なんだ。

 相手が本物じゃ無くても見てしまうのは仕方ない筈だ。

 それにレリィは恐らく()()事が出来る。

 勝てば好みの姿をしたレリィを触る事が出来る。

 しかも合法的に……。

 勝つしか無い!!


 僕のプレイが始まった。

 ハンデとして残機を一機減らしてのスタートだ。

 残機が三機あるからニ機で一面のボスを倒せば点数でも僕の勝ち。

 中盤まで良い感じでこれている。 このままなら勝てる!!


 だがその時、僕の背中に温かくも柔らかい感触が当たる。

 隣に座っていた筈のレリィがいつの間にか後ろに周り、両肩を掴み、体重をかけてきていた。

 ただ体重をかけて来ているだけなら良い。

 何か柔らかい物が当たってるな〜位だが、レリィはその柔らかい物を僕の背中に押し当てたまま、背中から首筋まで移動してくる。

 それは反則でしょ。

 最大火力までパワーアップしていた僕の残機は一機失った。

 負けるもんか! と体制を立て直し、最大火力まで持って行く。

 もう少しでボスだ。


「てんじってゲーム上手なんだね」

 耳元で囁かれた。

 正確にはASMRのような感じだ。

 ASMRとは人が聴覚や視覚への刺激によって感じる、心地よい、脳がゾワゾワするといった反応や感覚だ。

 もちろんこのゾワゾワ~っとした甘い声に最後の残機はボス前で撃墜された。


「やったー! 私の勝ちい〜!」

「ちょ! 最後のはズルく無い?」

「ズルく無いです〜。 私はゲーム上手だねって褒めただけだもんね」

 くっ、言い返せない。


「私の勝ちだからね。 何してもらおうかな〜」

「もうお金は無いからな。 服は買えないぞ」

 親父からは学費を払ってもらっているので、生活費は出来るだけ自分でバイトをしている。

 だから使えるお金も少ないのだ。


「えー、てんじ甲斐性なし〜。 なんてね。 一緒に寝てくれれば良いわ」

「一緒にって!?」

「ゴーグルを着けたままじゃ寝にくいかもしれないけど、そこは私が勝ったんだし、ちょっと位いいでしょ?」

「そ、それは構わないけど……」

 一緒に寝るってあれか? あれなのか?

 心の臓がバクバクとして来た。

 これがDTの鼓動。

 でもいくら触れる事が出来るレリィにそんな事できるのか?

 相手はVRだから一人でしてるのと変わりないのでわ?

 はたから見たらマヌケそうだし。

 いや見せるわけじゃ無いけど。

 朝にレリィが彼女として登録されてからまだ夜。

 知り合ったばかりなのに良いのか?

 でも、レリィは僕の彼女として登録されたって言うし、レリィから誘ってくれてるし……。


「……し……てんじってば!」

「あ、はい!」

「私の話し聞いてる?」

 しまった! 思わず僕のエロ思考回路をフル稼働させてしまった。

「ご、ごめん、それでなにかな?」

「だから、寝る時はグローブ外しといてねって言ったの」

「わ、わかった」

 寝る時、ゴーグルなら良いけど、グローブは流石に邪魔だからね。


「あー、楽しかった。 汗かいたし、私は先にシャワー入るからね。 覗いちゃダメよ」

「え? シャワー入るの?」

「なによ。 当たり前じゃない」

 そうか、当たり前か……。

 いや、当たり前じゃないだろ!

 レリィは風呂場に向かって行ったが、ゴーグルを外せばそこには誰もいない。

 もちろん風呂場を覗いたっていないのだ。

 でもレリィは風呂場に入って行く仕草をする。

 こっそりと脱衣所を見れば脱いだ服が置いてあり、シャワーの浴びる音がする。

 もちろん実際にはシャワーは使われていない。

 使ってたらホラーだからね。


 とんでも無く良くできたAIだ。

 言葉に対する受け答えだけで無く、仕草も殆ど人間を真似ている。

 文句も言うし、喜怒哀楽も普通にこなす。

 どんな技術なんだ。

 僕の親父がなんかそう言った職場で働いてるって言うのは知っているけど、もしかしてこれは親父の会社で作ったAIなのか?


「ふ〜、スッキリした」

 シャワーを浴びてご満悦のレリィはバスタオルを巻いて長く綺麗な金髪を拭きながら上がってきた。

 僕はその姿に後ろを向いてしまう。

 そして呪文のように唱える。

 相手はAI 相手はAI 相手はAI 相手はAI…………。


 後ろを向いていた僕の前に後ろ向きで座ると、僕の手にドライヤーと(くし)が握られていた。

「乾かして」

 レリィは僕に乾かして欲しいようだけど、女性の髪なんて乾かした事なんて無い。

 櫛で(とか)した事もない。

 恐る恐る髪に手をやりドライヤーをかける。

 なんだかシャンプーの良い香りがしてくるようだ。


「人にしてもらうのって気持ちいいね」

 髪の毛が乾くと、立ち上がり!バスタオルをバサっとその場に落とす。

「みえ……」

 背中から下までお風呂上がりの薄紅色な肌が見えるはずだったが、一緒背中が見えただけで、パジャマに着替えていた。

 …………なんでこう言う所はリアルに着替えないんだよ!

 僕は心の中でそう思ってしまった。


「見えると思った? へへ〜、ざんねんでした〜」

 少し大きいサイズのピンクと白のストライプ柄のパジャマを着たレリィは少し舌を出し、べ〜っとやってくる。

 ……可愛いじゃないかこんちくしょう!


 そんな可愛い仕草を見た後は、夕飯だ。

 だが、そんな彼女も食事は作る事が出来ない。

 僕だって一人暮らしの為、ご飯なんて基本的に作らない。

 だからカップ麺だ。

 そんな僕をレリィは申し訳なさそうに見て来る。


 バーチャルなら食事は好きな物を出せる。

 フレンチのフルコースだって宮廷料理だって思うがままだ。

 そんなレリィが出した食事は僕と同じカップ麺。

「この方が一緒に食べた感あるでしょ?」

「レリィは気にしないで食べてよ」

「いいの。 私はてんじと一緒の物が食べたいの」

 くっ! これが彼女と言うものなのか……? 現実は知らんけど……。

 明日からは同じ物を食べてくれるようにちゃんと作ろう。


「カップ麺も美味しいよね。 私は塩が好きなんだ」

「僕は醤油派」

「醤油も良いよね。 味噌も好きだけど」

「結局全部好きってことじゃん」

 そんなたわいもない会話が出来て僕は凄く楽しんだ。


 食事も終わると、僕はシャワーを浴びてくる。

 浴びながら色々考えてしまう。

 そして無駄とわかっていながら念入りに体を洗ってしまった。

 そして……。


 風呂から上がり、いつもは着ないパジャマに着替え、ゴーグルを着けるとレリィは既にベッドに座っている。

「さ、早く寝よ。 明日学校でしょ? 学校終わったら買い物行って、夜ご飯の材料買おう。 作り方は私が隣で教えてあげるからね」

 レリィはベッドをぽんぽんと叩いている。


 僕が布団に入ると、レリィは「布団に入れて」と促してくるので、布団を持ち上げてやる。

 一人用で大きく無いベッドに二人でいるこの異様な感じ。

 ゴーグル越しにはレリィは僕の隣で布団に入り、背中を向いて寝ている。

 外す気は無いが、ゴーグルを外せば一人用のベッドでわざわざ端に寄り眠る僕の姿があるだろう。

 だが構わない。

 ゴーグルを外さなければ一人じゃない! 一人じゃ無いんだ! と思い込む。


「この布団、てんじの匂いがするね」

「そ、そう?」

 もしかして臭かったりするのか?

 いや、本当は匂いなんてしてないはずだ。

 はずだよ……ね?

 でも、レリィが布団に入った事によって、なんだか匂いが変わった気がする。

 気のせいだと思うけど。


 良い匂いがするレリィの背中を思わず抱きしめたくなる。

 僕の彼女だし良いよね?

 ダメダメ、もっと紳士的に振る舞わないと!

 そんな葛藤が頭の中で繰り広げられるが、体は正直だ。

 思わず手が伸びてしまったが、感触は無い。

 なんで……?

「そうか! グローブ!」

 思わず口に出して言ってしまったのをレリィは後ろを向いたまま聞いていた。

「グローブ外してもらって良かった。 私の貞操の危機だったわ」

「え、あ……、ごめん……」

「くすくす……、しょうがないか、私彼女だし。 触りたくもなるよね。 でも私VR彼女だから我慢してね」

 そうだよね。 バーチャルだもんね。

 仕方ないよね。

 でもこれ逆に色々な物が溜まってしまいそうだ。

 蛇の生殺しか?

 明日はゴーグル外して寝ようと決めて、今日は眠る事にした。


 VRの中の布団が持ち上がり、レリィが出てくる。

「……ごめんね……てんじ……」

 レリィは起き上がって僕の頭を撫でていた。

 スヤスヤと眠ってしまっている僕はその事を知らずに……。

読んで頂き有難う御座います。

この物語りは中編位を考えております。


次話も宜しくお願い致します。

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