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サイコパスな医師は話が長い。

作者: 恒河沙

「いやー、金子さん。お久しぶりです。今回は前回の診察の結果をお伝えしたいと思いまして、呼ばせていただきました。


 それよりも本当に久しぶりですね。前回の診察はうちの若い奴がしましたから、金子さんと顔を合わすのは、半年ぶりになりますな。半年ぶりとなると、夏頃ですっけ。確かそうですな。前回の金子さんは半袖だった記憶がありますな。


 そう考えてみると、金子さんは夏服の方が似合いますな。なんというか肌は色黒で、体も筋肉質ですから、夏がよく似合う風貌ですな。私は見ての通り、どれだけ食べてもこの瘦せこけた体付きですし、色白なんです。


 だからと言って、冬が似合うかと言われれば、そんなことはありませんな。私は四季で例えるよりも、死期で例える方が似合っているかもしれませんな。


 ハッハッハッ


 すいませんな。昨日思いついたドクタージョークなのですが、一度試してみたく思ってしましましてな。いやー、それにしても本当にいい体をされていらっしゃいますね。


 確か、水泳をされていらっしゃったんでしたっけ。なんというかこの肩からお腹にかけての逆三角形っていうんですかね。それが素晴らしいですね。それだけ胸周りの筋肉がすごいと、通常サイズの服なんかは入らないんじゃありませんか。


 私も水泳を始めれば、そんな筋肉が身に付くことができるんでしょうかねえ。さっきも話しましたけど、どれだけ食べても太らないんですよ。ですから、食べ物が体に身に付かないでそのまま出てしまうんでしょうな。


 今までにも、テニスやサイクリングとかのスポーツをやってきたんですが、いまいち続いてこなくてですね。家にはテニスラケットと自転車が埃をかぶっていますよ。だから、私にとってはスイミングはあっているかもしれませんな。


 だって、スイミングは続かなくても、海パンは場所を取りませんからな。


 ハッハッハッ


 駄目ですな。始める前から辞める時のことを考えてしまっています。こんな考えだから、何かを続けることができないのでしょうなあ。


 実際、私はバツ2ですからな。一人目の妻は早くに先立たれてしまったからしょうがないとしても、二人目の妻は私が妻に飽きてしまったから、離婚してしまったと言っても過言ではないですからな。


 良く、美人は三日見れば飽きると言うでしょう。流石に三日で飽きると言う訳ではありませんでしたが、結婚する前には少しずつ妻の顔には慣れていきましてな。私は妻に飽きている私に気づいていながらも、両親に挨拶も済ませておりましたし、後戻りはできないなと思いまして、勢いそのままに結婚してしまったんです。


 しまったと言うと言い方が悪いですな。一応、妻の名誉のために、妻のいい所をつけ足しておきますと、料理もできて、掃除も抜け目なくて、家庭のことをするにかけては完璧でしたね。


 それでも、結婚生活を続ける内に、私は妻の内面を愛したのではなく、外面を愛していたということを思うようになってきたんです。もちろんそのことを私は妻には言いませんでしたが、私は妻への愛情と言う者はだんだんと冷めていきました。


 そのことを妻も感じ取っていたのでしょうね。そのまま夫婦関係は冷え切っていき、私は二つ目のバツを付けることになったんですよ。本当に私のこの性格を直してしまいたいと思うのですが、どうしようもありませんですな。


 ハッハッハッ


 すいませんな。ついつい私のつまらない身の上話をして、空気を暗くしてしまいましたな。明るくいきましょう。そうそう、結婚と言えば、金子さんも結婚されていたんでしたな。確か、お子さんが二人ほどいらっしゃっいましたな。


 下の子は、前回の診察の時に生まれたと言っていましたから、今は生後半年と言ったところですか。一番かわいい時なんじゃないですか。今のうちに可愛がっておかないと、後悔しますよ。


 言葉を覚えて、学校に入るまでは生意気も言いませんから、言葉をしゃべらない可愛い内に可愛がっておくんですよ。


 生後半年と言うと、もう離乳食を始めて、寝返りをでき始めるころですかな。それと今頃は赤ちゃんの免疫が落ちて、病気にかかりやすくなっていますから、金子さんも、奥さんも病気をもらわないように気を付けてくださいね。


 もし、何かあれば、この病院に来てくださいね。まあ、私が何も言わなくとも、すぐに連れてくると思いますがね。


 ハッハッハッ

 

 いやー、それにしても、金子さんは奥さんの育児を手伝ってますか?


 おっと、今の発言は女性にとってはタブーな言葉でしたね。今の発言には家事とか、育児とかは女性がやるものであるっていうニュアンスが含まれていますから、金子さんも奥さんに言ったら駄目ですよ。


 こういう細かい言葉一つ一つでいろんなことが変わってきますからな。最近は特にうるさいですな。私が小さい頃は、クレヨンとか、色鉛筆とかの色の中に肌色なんてものがありましたが、今はないそうですね。確か、なんだったかな。


 ペールオレンジっていうらしいですよ。ペールオレンジが入っているクレヨンとか色鉛筆を想像してみるとおかしいですよね。だってですよ、あおいろ、あかいろ、みどりいろと来て、ペールオレンジいろが来るんですよ。


 日本語ばっかりの中に一つだけ英語なんて、日本のプロ野球の球団に助っ人外国人が入っているみたいな違和感ですよね。


 ハッハッハッ


 いやー、面白いですね。ペールオレンジって。さらにですよ。調べてみるとですね、ペールオレンジのオレンジはオレンジ色のオレンジだって分かるんですけど、ペールって言うのが、薄いって意味なんですよね。


 だから、ペールオレンジは薄いオレンジって意味なんですよ。ってことはですよ。私たち日本人の肌の色は、黄色人種の薄いオレンジだって言っているってことなんですよ。本末転倒ですよね。


 ハッハッハッ


 あー、おかしい。ヤバいですよね。」


「あのー、そろそろ診断の結果を聞かせてくれないでしょうか?」


「ああ、すいません。忘れていました。


 よく考えてみると、ペールオレンジの件から私は何を言っているんだろうと思っていました。なぜあんなに笑っていたのか、今考えると分からないですね。


 そうですね。金子さんを突然呼び出したのは私でした。なのにこんなに喋ってしまって、申し訳ありませんでした。心から深くお詫び申し上げます。


 いやー、実はこんなに長く喋ってしまったのも深い訳がありまして、金子さんの前回の診断で分かって事と関係があります。


 私は長年、医者をやってきました。たくさんの患者さんを診てきたんですが、その中でもたった一つだけあの時、ああしていればと後悔することがあったんです。


 それはですね。あなたのような普通の健康そうな患者さんでした。しかし、その患者さんを調べてみると、色々と不思議なことがありました。私はその患者さんを詳しく調べていくと、現実ではありえないような不思議な病気にかかっていました。


 私は目を疑いましたが、その結果を信じて、患者さんにその奇妙な結果を伝えました。患者さんは驚いていましたが、すぐに状況を飲み込み、病院を去りました。


 私はその時の対応を後悔しています。そんな時、私はあの時の患者と同じ病気のあなたに出会った。私は、今、嬉しいです。





 それでは、端的に言いましょう。あなたの余命は3000字です。」


「えっ、それってどう言……。」

 金子さんは私の前で倒れこんだ。私が脈をとると、もう金子さんは息を引き取っていた。

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