異世界へ
不定期更新ですが、宜しくお願いします
「アレクサ……何処か遠くへ……行きたい」
『はい。どの様な場所が宜しいですか?』
「誰も……私を……私の事を……知らない場所へ行きたい」
『はい。わかりました。貴方の事を知らない場所ですね。良い場所がありますよ。では、すぐに向かいます」
「へ? 向かいます? えっ!? うわあああーあああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
家が!私の趣味満載の家が!揺れているわ。まるで、嵐の時の大波に揺られている船の様に大きく大きく上下左右に不定期に揺れている!?
壁一面に創った、特別専用ガラス棚に並べている、私の可愛い可愛い繊細なガラス細工達が!カチャカチャ音を立てながら倒れていっている。これは悪夢だわ!あってはならないことよ。壊れちゃう。
「あーあああー……私の大事な大事な白鳥様。龍君、うさちゃん、みんなが住む特注の大きなお城!!アレクサ! 何? 何が起こっているの。どういう事なの!どーなってるの!家が!私の家が、大事な宝物達がぁぁぁ」
『ご心配無く。もうすぐですから。ほら、着きましたよ。玄関を開けてみてください。貴女のご希望の場所ですよ』
私は、何がどうなったのかが心配になり。ガクガクする足を叱咤しながらアレクサが言うように玄関まで行ってみた。恐る恐る震える手でどうにか鍵を開け、扉をひらくと、そこには見たこともない街が広がっていた。
私はしばらく呆然として機能停止していたが、目の前の有り得ない情報に怒りが込み上げてきた。
「えっ!!何ここ。どこなのこの街は?何時もの廊下じゃない。
なんなのよ。外国?歩いてる人達ってハロウィンでもしてるの?皆、ヨーロッパとか西洋風?っていう感じの服装してる!髪はカツラなのか、青や赤やオレンジ、白銀とかって初めて見る色ばかりだし、すっごい派手だわ。あり得ない事が起こってる。私、夢見てるんじゃあないわよね」
『夢ではありませんよ』
「アレクサ!!!アレクサ!どういう事なの!ここはどこなの?あなたが、あなたが本当に私をここに連れてきたの?」
『ここは、異世界の街。ファープールです。私は、貴女の命令に従いました』
「じゃあ。アレクサ返して!帰りたい」
『無理です。家ごと切り抜き、ここに来ましたので、帰れはしません。貴女が自由に生きるのは、今からこの街になります』
私は、落ち着いて頭の整理をする事にした。
あの世界に私の居場所は無かった。家族は居ないも同然だし、会社も……助けてくれる人も誰も居ない。居なくなった……
友達も、居た……けど、居なくなってしまった。一番の親友だったのに、あんな子だったなんて。
夕樹を夕樹を私から奪って!やってもいない事を!濡れ衣を着せるなんて……私は浮気なんてしてないわ!お金も取ってないのに!!浮気をしたのは!浮気をしたのは、夕樹じゃない。あんな子に騙されるなんて!会社のお金も、きっとあの子の仕業なのに……だって私何もやっていないのに、全て私のやった事になってる」
私は……思い返しては、感情がたかぶり途切れぬ涙を流す。自分が一人という寂しさ。こうゆう時に側にいてくれる人の居ない私は、やっぱりだめな人間なのかしらと、私自身を愛し、全面的に信じてくれる人なんていやしない。
「ううううううああうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁー」
『貴女はもうあの世界には帰れない。帰さない……幸來』