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その2 「キャラクターの名前」に関して



 本当に大事なことなので先に述べておく。

 「アビゲイルが出てきちゃうのはマズい」




 私は『小説の登場人物の名前を考える基準』を『沼』に例えることがある。

 私は沼の端の方にいる。真ん中まで移動しようとすると、急激に深くなり、体が完全に沈みきってしまう。

 他の『沼』を見ると「スノコで補強して沈まない様にしてる人」、「シュノーケルで息をしている人」、「完全に沈んでるが呼吸を必要としない人」、「沼と同化していて最早見えない人」などが()()()()()()


 今回はそういう話だ。遣り様、又は有り様の問題でしかないと言える。

 私も『沼』の住人であろうとしたことはある。私の場合は「浮き輪を装備しているが足のつかない所に行かない人」である。

 そのかわりと言っては何だけれども、私は端にある沼の水が飲める。その結果、その名前に納得は出来るのだけれど、美味しいかどうかは別の話になる。


 異世界小説を執筆するにあたって、最も大変なことは何か?

 おそらく「登場人物の名前を考える」が上位に来るであろうことは想像に難くない。


 想像に難くないんだけれども、かの有名な「ゴブリンスレイヤー」ではキャラクターは個人名では無く、職業や役割で全て表現され、個人名が出てこない。かの作家先生は「沼の上を歩いている状態」である。




 「登場人物の名前を考える」ことは作家先生によっては大変な作業であり、苦しみであり、生み出された時の喜びもまた非常に大きいと思う。

 そして、異世界を構成する重要なファクターであり、異世界情緒を演出する上で、ここは失敗出来ないと考えている人も多いかもしれないし、そうで無いかもしれない。


 私の問題に話を戻そう。

 先日(2021年2月末ごろ)私自身の「沼深度」は果たしてどれくらいの深さなんだろうか、と疑問に思い、測ってみるべく、色々と考えてみた。

 どんな名前がどういう状況で出た時に、私はその作品を「()()()()()()()()」のだろうか。


 結論から先に言うと、私の「沼深度」は考えていたよりさして深く無かった・・・。

 自身の沼深度を測る、一つの指標として 真白氏の「異世界ファンタジーにおけるヨーロッパ風の名前の付け方」という、ありがたいエッセイがあるので、ご興味のある方は是非、ご一読いただければと思う。


 で、私の場合なのだが・・・私は実は十字軍関連に興味があり、「塩野七生」先生の「十字軍物語」(新潮文庫版 全4巻)を本屋に日参してまで購入して、読んでしまった。

 であるから、フランク人(ヨーロッパの人達)とアラブ人(アラブ人・トルコ人含む)が如何に憎みあい、殺しあって、現在にいたるまで根深く民族的、宗教的対立が存在するのか、ある程度理解していると思う。


 そういう理由(わけ)であるから

「ストーリー上、何の言及も無く、ヨーロッパ風の名前とアラブ風の名前のキャラクターが同じ国に所属して、要職に就いた上で、信頼関係で結ばれている」

という状態では非常に困惑してしまう。

 例えば「2つの民族国家が長い歴史の中で争い、いつしか無視出来ない外圧が原因で融合したのだな」と脳内で補完でもすれば良い話なのだが、それをやるとハゲそうになる位にはストレスになるだろうし、ただでさえアレなのにハゲは困る。


 ストーリー上でその経緯が表現されていれば(エピソードの一つとして書かれていればなお良い)納得は出来る。しかし、何も書いてない状況でそれは無理だ。

 ヨーロッパ風の人たちとアラブ風の人たちが手を取り合って築く、ユートピア的な風景を「説明無しで」夢想出来るような感性はとっくに擦り切れて、二言目には「異教徒を殺せ!」と叫んでいる。


 たしかに当時、市民レベルで言えば、そういった状況もイタリアなどで見られたと思うのだが、政府の要職にまでイスラム教を信仰する人々が居たのかと言えばそれは無いだろう。


 しかし、一神教の存在しない世界で、貿易など人の行き来が盛んであるのならば、そういった状況は不自然でも無いと思うし、物語の奥行きを出す手段の一つとして採用されても良いと思う。




 これはあくまでも、私の「引っ掛かる」ところであって、他の人は関係ない。

 私が気にしているのは「ストーリー上や設定上の言及が無いこと」、「お互いに同じ国で要職についていること」だけである。

 ただし、作品を読み進めるかどうかの判断にかかる可能性があるため、ちょっと重いかもしれない。

 流して読み続ける作品がある一方で、流せない場合があるのだ。


 しかしだ!流せないとか偉そうに言えた義理ではないだろう・・・と思う自分も居る。


 そりゃ「ティ」とか「リィ」とか一杯くっついてる名前は実はヨーロッパ風と言い難いし、イスラム系国家のアイユーブ朝の創始者であるスルタンの「サラーフ・アッ=ディーン」(略してサラディン)なんて「誰だよそれ」って感じだと思う。


 自分のいる「沼」のそこをさらってきて、ミズキとか、アリスとか、シズハとか、モーラとか、ヨロラとか、カエデとか、マヌエルとか、セパタクロウとかそういったものを「全部」サルベージしたあとで「沼」の外に捨ててこないといけないんじゃないかと思う。

でも、それはやめて欲しい。

 ヤメテくれ!アビゲイルが出てきちゃうから! 実家を出る時に「封印」してきたから!本当だって!


 本当に大事なことなのでもう一回述べておく。

 「アビゲイルが出てきちゃうのはマズい」


















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