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 智花が屋上への階段を駆け上がっていく。


「ち、智花!?」


 裕介も慌てて後を追った。


 智花が屋上に出る。


「違う! いや、違わないっ! ま、待ってくれ、智花!! とにかく俺の話を聞いてくれ!」


 智花が屋上のフェンス前で止まる。


 裕介には背を向けたままだ。


 その身体が微かに震えている。


「智花! ホントにごめん! 俺が100%悪い! 許してくれ!」


 裕介は智花の後ろで土下座した。


 額がコンクリートに着くまで下げる。


 頭の中に「マッハチュウチュウ」の「絶体絶命チェックメイト」が流れだした。


 ああ。


 まったくどうしてこんなことになっちまったんだ。


 俺はお前が好きなのに。


 本気で好きなのに。


 俺がバカだから傷付けてしまう。


 許してくれ。


 頼むから許してくれ。


「いきなりキスするなんて…」


 智花が肩を震わせる。


「ひどいよ…練習なのに…」


「ち、違う!!」


 裕介が思わず顔を上げる。


「俺が好きなのは最初からお前なんだ!!」


 智花の震えがピタッと止まった。


「………え?」


「お、俺が好きなのは智花なんだよ! だから…だからお前とデートしたり…恋人みたいにしたくて…つい…ごめん…」


「それって…告白はせずに私と…デートしようとしたってこと…?」


「ご、ごめん…ちゃんと告白せずに他に好きな娘が居るみたいなフリしたのは謝る! フラれるのが怖くて…勇気が出なかった…美味しいとこだけ…中途半端なことした! ホントにごめん!」


 智花は振り返らない。


「それなのに…キスはしたの?」


「うわーー! ホントにごめん! お詫びに何でもする! お前の言うことを何でも聞くから! 頼むから許してくれ!!」


 裕介が再び頭を下げた。


 屋上を静寂が包む。


 校舎の彼方に見える夕陽が、黒雲の後ろから少しずつ顔を出してきた。


「何でも…」


「ん?」


「何でも聞くんだね」


「ああ、何でも聞く! 約束する!」


「じゃあ…もう一回してよ」


「………は?」


 裕介が頭を上げ、首を傾げる。


 黒雲がさらに流れ、真っ赤な夕陽の光が2人を照らす。


 逆光になった智花がパッと振り返った。


「もう一回、ちゃんとキスしなさいよ!」


「………ええ!? ………おおおーーーっ!!」


 その瞬間、裕介の頭の中の「絶体絶命チェックメイト」が「逆転タングステン」に切り替わった。




「週末どうする?」


 智花が訊く。


 屋上フェンス前に並び、夕陽を眺める2人。


 5分前まで土下座していた裕介の制服パンツの両膝は白く汚れている。


「付き合って初デートだからな…水族館とか…?」


 裕介が答えた。


「まだ付き合ってない」


 智花が頬を膨らませる。


「ええ!?」と裕介が驚く。


「な、何でだよ! さっき2回目のキスしたじゃん!」


「さっきのは1回目のが嫌だったから! 騙されてしたのを早く消したかったの!」


 智花が眉を吊り上げた。


「そ、そだな…ごめん…」


 裕介がシュンとなる。


「だから」


 智花が続けた。


 その頬が赤くなる。


「水族館で…ちゃんと男らしく告白してよね」


「お、おう。分かった」


 2人が見つめ合う。


 裕介が智花を抱き締めた。


「ちょっ、何よー」


「智花、好きだ!!」


「もう! 何フライングしてるのよ! 告白は明日でしょ!」


「練習」


「バカ!」


 智花が裕介の脇腹をつねった。


「いったっ!」


「本当にバカ」


「ごめん」


 智花が裕介を見つめる。


「私も裕介が好きよ」


「え!? 今の!?」


「告白の返事の練習」


 2人は抱き合ったまま、笑いだす。


 しばらくして、それが収まると。


 3回目のキスをした。




 おわり





















 最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)


 大感謝です( ☆∀☆)


 勝手に書いた作品の宣伝ツイに快くイラスト使用許可をくださいました「ひなたぼっこ」さん、ホントにありがとうございました(*´∀`)♪

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― 新着の感想 ―
[良い点] まだ初心な高校生のさわやかさが表に出て良かったです。 [一言] 明るく楽しく良い所取りの小説でした。 読後に新鮮な感情が湧きました。
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