【第7話】誰かを頼ること、誰かに頼られること
【注意】
・若干の残酷な内容を含みます
・ネガティブになりやすい方は閲覧注意
私が家に辿り着く頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
日中の暑さが嘘のようで、涼しい風が外から自室へ流れ込む。
暗くした部屋の中、風を感じながら、私は独り物想いにふける。
この世の中には「死にたい」という思想にかられる人は思っている以上に多くいて、その一部は自傷行為をしたり、自分を殺めかけたり、はたまた本当に死んでしまったり。
私の親友もその一人で、今日行ったあの場所で君は死んだ。
今日事件を起こし自らも死んだあの犯人もその一人だった。
ただ、死に方が悪かった。どういう事情があったにしても、他人を殺めることは許されない。
「手を差し伸べてやる人がいなかった」
あのコメントにはそう書いてあった。
それは違う。差し伸べ方は人それぞれだが、一応助け舟は出るもので。
だが、死んでゆく、こういう事件を起こしてしまう人はそれを受け入れなかった。そういうことなのだ。
もちろん引き止める側の力が足りなかったとも言える。
事実、私も君が死んだあの日、自分の無力さを痛感した。
しかし、だ。
手を差し伸べてやっただけで全ての人の気持ちが変わり、死にたいという感情が消えるような世の中であれば。
死にたいなんて感情を本気で抱く人なんて、そもそもいるはずがない。
けれどもそういう感情を抱く人がいて、毎日のように人が死んでゆく。
この世は暖かいようで冷たくて。そして残酷だ。
私たちはこんな世界を生きてゆく。
ある日突然、生きる希望、意味を失ってしまうその日が来るかもしれない。
その時が来たら、私の心がどう変わるかは知ったものでは無い。
だが、私はこう思う。死ぬなら一人だ。
他人を巻き込むなんて絶対にしない。
だからこの犯行を擁護するような意見とは分かり合えない。覚えた違和感の正体はこれだ。
私は今日も朝目覚め、服を着て、食事をとり、外に出かけ、何かをして、家に帰り、そして夜眠る。
そのサイクルを毎日繰り返す。この世を生きてゆく。
抱く善意は無駄になることもある。だが、ないよりはいい。意見には否定したが、手を貸すことは否定しない。
身の回りに困っている人がいたのなら。相談に乗ってやって欲しい。背中をポンポンと叩いてやって欲しい。
君がもし困っているのなら。誰かに相談して欲しい。誰かを頼って欲しい。
私は窓を閉め、目を瞑り、眠りについた。
大きな月が夜空を照らす、天気の良い夜だった。
【作者の一言】
『あの日、あの夏。』をお読みいただきありがとうございました。
予告してはいませんでしたが、こちら第7話が最終回で、これにて完結です。
今回の事件への私の考え、そして抱え込んでいる人への語りかけを含め、伝えたい、書きたい内容は全てかけたかと思います。
次回作は東方project二次創作小説シリーズの新作を考えております。Let's Kouma Partyの方もそろそろやらないとですね、そちらも制作します。
ではまた次の作品でお会いしましょう。