【第3話】死にたい
【注意】
・若干の残酷な表現が含まれます
・ネガティブになりやすい方は閲覧注意
「死にたい。」
高い空に太陽がぎらぎらと輝く、猛暑日となったとある夏の日。遠くの空に積乱雲が聳えていた。その日の夕方だったか、君はそう言った。
私は唐突に君から聞いたその言葉の意味を理解できなくて、しばらく黙っていた。それから数分経って、私は口を開く。
「どうしたんだ、何かあったのか?」
今思えば無機質で冷たい言葉だったかもしれない。その時は自分なりに何かしてあげたいと思って口から出た言葉だったはずなのだが。
「家族が僕を置いてどこかへ行ってしまった。親も金も生きる希望でさえも、何もかも失った。だから死にたい。」
君は毅然とした表情でそう言い放った。
「それなら俺の家にでも来るか。食べ物くらいはちゃんと出せるぞ。」
この言葉も今思えば空虚な言葉だ。私の友人は全てを失った。そんな事くらいで状況は何も変わるはずがない。
「いや、いい。」
そう言うと、君は踵を返しどこかへ歩いていった。
何故私は君の後を追いかけなかったのだろう。
その後君は、しばらく私の前に姿を現さなかった。
【作者の一言】
第3話をお読みいただきありがとうございます。
とある夏の日、いきなり友人から「死にたい」と告白を受けた『私』。
この後なにがあったのだろうか。
次回、第4話に続く。