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いただくお皿

作者: みずぶくれ

私達姉妹は、揃って雑誌を読む習慣があった。

ある時、お互いの買う雑誌が、偶然お互いの読みたい内容を掲載していた事が始まりだった。

妹は少女漫画雑誌購入担当。私はファッション雑誌購入担当。


今日は私のファッション誌を二人揃って読んでいた。ケーキのように色も姿も鮮やかなモデル達が目に眩しい。写真越しなのに息遣いまで伝わってくるような可愛さだ。

私もこうなりたいな。こんなに可愛ければ好きな人も振り向いてくれるのだろうな。

私はモデルが着ているアイテムの詳細を読み込んでいた。形からでもこの可愛さに仲間入りしてみたかったから。

逆に妹はモデルには興味を示さず鞄の広告を見ていた。最近妹は白い皿の上に鞄や靴が飾られた広告を見つめる事が多い。妹はそのデザイン形式が気になったらしかった。そういった広告を見るのが癖になっているようだけど、本人は気づいていない。


いつもは無言で見つめるだけなのに、今日は違った。妹はブランドのバッグがお皿に乗った広告をトントンと指で押さえながら声を上げる。

「私バッグよりハンバーグがいいなあ」

「アンタは相変わらず食いしん坊だね」

「だってバッグは食べられないじゃん。なのにお皿の上に乗ってるなんてヘンだよ。バッグよりお肉がいい!」

「あれはそういう広告なんだよ」

「欲しいものを白いお皿にのせるの?」

「うん、そんな感じ」

私は適当に相槌をうった。

見かける度に見つめていたから、どんな高尚なことを考えているのだろうかと楽しみにしていたのに、あまりにくだらない。

妹は目をキラキラさせながら考え込んでいる。


「じゃああたし、赤ちゃんをお皿の上にのっけたいな」

「うわ、グロ」

「なんで?あたし妹が欲しいだけだよ?弟でもいいけど」

「ああ、そういうこと…」

そうきたか。皿の上に人間をのせるなんて将来有望すぎる発想だと一瞬驚いたけれど、心配のし過ぎでよかった。


「おねーちゃんはあたしがいるからいいよねー。あたしも妹ほしい。そんで小学生向けのファッション誌購入担当にさせる!でも弟でもいいよ。弟だったら少年週刊誌買わせる!読んでみたい!おねーちゃんはないの?欲しいもの!お皿に乗せたいもの!」


ほしいもの。人でも可。そんな言葉が脳を過ぎる。くだらない。そう思いつつも真剣に考え込んでしまった。欲しいもの。私が欲しい人。


「うーん、そうだなあ…こたろーちゃん」


私は隣の家に住むお兄ちゃんを思い浮かべた。こたろーお兄ちゃん。すらっとしていていつも優しい大学生のお兄ちゃん。私は彼を自分の頭の中で白いお皿にのせる。頭の中で盛り付けられた彼は結構いい感じだった。


「隣んちの?」

「そうそう」

「おさらのうえのこたろーちゃん!へんなのー!」

「あははっそうだね」


私はさっきまで考えていたモデルの事を忘れて、頭の中で白いお皿の上に盛り付けられるこたろーお兄ちゃんを妄想する。

優しい人だから、静かに盛り付けられているかな?それとも親しみやすい人だからレストランのご飯みたいに賑やかに盛り付けられるかな?

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