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続・無能扱いで追放された俺が婚約破棄令嬢と手を組みました  作者: ハムカツ
アッシュ=グラウンドの華麗なる冒険
7/23

アッシュ、失敗で落ち込む?



「アッシュ、つまり今回はどういうことだったのだ?」


「とりあえず悪霊を俺が倒してめでたしめでたしじゃダメなのかよ?」



 消化不良気味のアリアを横目に、俺は肉よりもたくさん、茹でてない野菜を山盛りにしたサラダを口に運ぶ。シャキシャキの野菜を生っぽいと嫌がる連中も多いが、俺は割と好んで食べる。


 油と塩で、シンプルに味付けされた赤い果実の酸味の入った甘さがたまらない。



「折角力が振るえると、喜び勇んで扉を潜れば。アレで終わりだったのだぞ?」


「下手に手間取るよりはずっと良いパターンだぞ?」


「ニャー、幽霊相手はいつもあんなもんだニャー」



 アリアは目の前に並べたハムとソーセージとベーコンの盛り合わせを、いやもはや量が多すぎて山盛りになったそれを上品かつ、高速で食べていく離れ業をみせながら。レイナはいつも通り魚の蒸し焼きを。そしてチャコは俺のサラダから奪ったチーズを口にしながら話を続ける。



「せめて、どういった話だったのか。理解しなければ冒険ではないだろう」


「そりゃ、確かに道理だ。それが無きゃ、作業と変わらんな」



 さて、どこから語るかと考えを纏め始める。当然俺の理解が真実だとは限らないのだが。それでも事前情報と、ダンジョンと化した幽霊屋敷の中で得た情報と合わせて。それなりに正解に近い結論を導けているのは間違いない。



「まず、悪霊の正体はあの屋敷で100年前に死んだ王妃だったのはいいな?」


「ふむ、それは依頼開始前に聞いていた話だからな」



 アリアは真面目に、レイナも相槌を打ちながら俺の話を聞いている。チャコは改めて給仕が持ってきた焼き魚を喜んで食べているがいつもの事だ。



「謎なのは、何故王妃が死んだのかって理由だろう?」


「うむ、まぁ他にも疑問は色々あるが、一番大きいのはそれだ」



 すっと俺は右手で指を三本立てた。



「可能性として考えられるのは3つある。まずは第二王妃による暗殺」



 そう口にしながら、指を一本折り曲げる。100年前にあった王位継承権争いは、それはもうゴタゴタした物だったらしい。20人近い王族が、血で血を洗う抗争を繰り広げ。たった10年の間に7回も王が即位したというのだから驚きだ。



「ただ、その可能性は薄いな。彼女は子を産む事が出来なかったらしい」


「王の寵愛を受けていたとしても、殺すリスクの方が大きいのは確かだが」



 アリアの目の前に積まれていた肉塊は、もう半分に減っている。貴種は良く食べると聞いたことがあるが、彼女のそれは体質か? それとも若いからか。あまりの食べっぷりに驚きが隠せない。



「それで、2つ目は?」


「単純な病死、王妃は日に日にやせ細り、最終的に息絶えたとメイドの霊が言っていただろう?」



 レイナの解説に合わせて、俺はもう一本指を折り曲げる。当時の資料から彼女の体が弱く、衰弱死したとされているのは間違いないだろう。少なくとも複数の資料、主に当時の貴族の日記からそれが真実だと思われていたのは確実だ。



「その言い様なら、本命は3つ目か?」


「ああ、資料的な裏付けはないが。間違いなく王妃は嫉妬に狂って自殺したんだ」



 憑りつかれそうになった俺だから分かる。あの悪霊は嫉妬していた。自分より恵まれた何かに、あと一歩で届きそうな何かに。けれどそれを超える為の努力を行わず、ただどうしようもない感情を抑えられず、高まった殺意が自分を殺してしまったのだと。



「ああ、憑かれた時に何か言っていたのか?」


「……似た気持ちを知っているからな。分かっちまうんだよ」



 当時の記録と照らし合わせれば、何に嫉妬していたかは考えるまでもない。王妃には子はおらず、第二王妃には3人の息子がいたのだから。王の愛を受けていながら、それでも子を孕めず。自分より後から来た第二王妃が、次々と子を産んで行ったのだから。



「だからこそ、ああも鮮やかに。か」


「鮮やかか? あの無様なやり口が?」



 気が付くと、アリアの目の前に積まれていた肉の山がきれいさっぱり消えている。会話しながらこのペースで食事をしていて、音を立てないというのは一種の才能ではないかと、どうでも良い事を考える。



「ニャー、こっちから見るとグレックと差は無いニャ」


「無様さがあるとするなら、お前の後ろ向きさだろうよ」



 アリアの言葉を、チャコとレイナも肯定してくる。そうなのだろうか? オッサンと比べると何もかもスマートにやれてない気がするが。それでも俺はちゃんとやれているのだろうか?


 そんな事を考えながらフォークを動かしていると、いつの間にかサラダがなくなっていた。まぁパーティメンバーがやれていると言ってくれるのなら。それを素直に認めるのもリーダの度量か。


 そう切り替えて俺は、改めてサラダを注文する。


 折角の打ち上げなのだから、好きなもので腹いっぱいになるのも悪くない。

本日の更新でアッシュ=グラウンドの華麗なる冒険は完結となります。


明日の更新はプロット構築の為、お休みとなりますのでご了承下さい。

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