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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第一部

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第94話、武器を見に行こう

 

 冒険者ギルドについた俺は、解体部門に先日の大空洞での収穫を持っていった。

 解体部門のソンブル氏は日曜にもかかわらずギルドにいて、例によって血のついたエプロン姿である。 


  

 そういえばアーリィーは初めてだった。俺が冒険者で、その関係者ということで、本来は部外者立ち入り禁止の解体場に彼女も入ることができた。


「フロストドラゴンにアイスウルフ。……ホワイトリザードはあまりないが、間違いなく、十三階層のミスリル鉱山に行ってきたね?」


 ソンブル氏も慣れたもので、以前俺が持ち寄ったことのある素材となると、どこで狩ってきたか見当をつけていた。


「相変わらず、君が狩ってくるモンスターの数は多いね。最近ようやく何人かがミスリル鉱山エリアのモンスターの素材を持ってきたけど多くないからね」


 収納魔法のある魔法具持っている冒険者もあまり多くないだろうし、俺みたいにストレージが使えなければ、持っていける量なんてたかが知れてる。フロストドラゴンなんて、現地で解体できなきゃ運べないだろうし。


「でも冒険者の中には、もっと深い場所に潜れる人もいるだろうに」

「そりゃミスリル目当てでもなければ、あんなところには行かんよ。途中には厄介なジャングルゾーンがあるんだろう? 採掘じゃなくて、狩猟や討伐目当ての冒険者は別の場所へ行くさ」

「なるほど」


 俺が、ミスリル銀を一人で精錬まで持っていくから忘れがちだが、普通の冒険者はそこまでしない、というかできないもんな。


 素材買取の報酬を受け取った俺は、アーリィーと一緒に解体場を出て、ギルド建物の二階にある武器防具を扱う武具屋に向かった。

 モンスター討伐や護衛など荒事が多い冒険者にとっては武器や防具は必需品。であるならば、ギルド内にショップを構えたほうが何かと便利。というわけで商業ギルドの協賛店舗が冒険者ギルド建物にはある。ちなみに、駆け出し冒険者のための武器レンタルもやっている。


「いらっしゃい」


 武具屋の店主が、入ってきた俺とアーリィーを見やる。四十代そこそこの、少々腹の出たおっさんといった風貌だ。


「おたく、初顔だね。魔法使い用の杖でも探しているのか? あ、それとも防具のほうか?」


 俺の初心者感丸出しのローブを見やり、店主は言った。俺は営業スマイルを顔に貼り付ける。


「お構いなく。ちょっと武器を見させてもらうだけです」

「そうかい」


 店主は肩をすくめるとカウンターに戻っていった。ただ見ていくだけで、金にならない客と判断したのだろうか。まあ、いいけど。


「ねえ、ジン。武器を新調するの?」


 アーリィーが聞いてくる。俺は、剣が並べられている棚を見やる。


「いや。最近、剣とか斧を作ってなかったから、イメージ補強のための観察」

「あ、何か新しい武器を作るんだね?」


 ヒスイ色の目を細めて、アーリィーが俺の見ているモノを見ようと寄ってくる。うん、ちょっと近いよ。


「ジンのライトニングソード、結構な業物だものね。今度はどんな武器を作るの?」

「まだ具体的なアイデアはないよ」


 あるのは、手元にそこそこの数のコバルト製の武器。……コボルトを倒した際に手に入れた作りが雑な武器の数々だ。作りはともかくコバルト金属には違いないので、加工し直してマシなものに作り変えようという魂胆。

 片手剣や斧、槍を眺め、ふと防具コーナーに目が行く。真っ白な軽鎧が目に入った。アーリィーも気づく。


「あ、綺麗」

「スケイルアーマーか。……ああ、これ、フロストドラゴンの鱗が使われてる」


 雪のように真っ白な鱗、外皮を持つ霜竜である。つい先日、魔石狩りで倒したし、とった素材を今しがたソンブル氏ら解体部門に買い取ってもらったばかりだ。


「おや、ひと目見ただけでわかるのかい?」


 店主がカウンターから声をかけてきた。


「『大空洞』ダンジョン産で新品だよ。そこそこ評判がよくてね、いまそこにあるので在庫は最後だ」


 ドラゴンとしては底辺とはいえ、その鱗は並の魔獣よりは硬い。ただの鉄よりは軽くて硬いから、売れるのも理解できる。


「それなら、もう少ししたら、在庫は増やせると思うよ」

「ん? どうしてだ?」

「ついさっき、ここの解体部門にフロストドラゴンの素材が持ち込まれたのを見たよ」


 わざとらしく俺は言った。

 そう、ここの武具屋は、冒険者ギルド内にあるだけあって、冒険者がとってきた素材を武器や防具に利用した品が、ちらほら見られる。だから、たまに希少魔獣の素材を使った高額武具が置かれていることがある。

 まあ、大抵は獲ってきた冒険者が自分用の装備に作ってもらったりするから、早々店頭には並ばないけど。


「上手い商売だよ」


 俺は、アーリィーに言った。


「上物装備を見せられるとさ、冒険者は手に入れたくなるから、より頑張って魔獣討伐に励む。仮に自分では使わない武具の素材だったとしても、売ればお金になるんだってわかるし」


 でもまあ……。

 一般用の量産品と違うカスタムモノは、結構心惹かれるものがある。そう、つい、作ってみたくなったり、ね。



  ・  ・  ・



 武具屋を出て、しばらく冒険者ギルドのフロアで、そこにいる冒険者たちを眺めていた。特に持っている武器を。

 長さや大きさはどうか。飾りは? 魔石の有無は?

 市販の武器を持っている者も居れば、アレンジされたモノや一点ものを装備している者がいたりと様々だった。


 ある程度見たあと、俺たちは冒険者ギルドを出て、次の目的地であるウマンさんの魔法道具屋へ向かった。

 日曜なので道具屋も休みかと思ったら、表の扉が開いていた。覗いてみたら、ウマンさんがいた。


「よう、ジン坊、今日はどうした? エアブーツなら材料集める段階で、まだ製作すらしてないぞ」

「ちょっと寄り道に、と言ったら嘘になるのですが……。相談したいことがありまして」

「相談?」


 表に出てきたウマンさんは、そこで俺の隣にもうひとりいることに気づく。あ、どうも、とどちらともなく挨拶。ウマンさんは俺を見た。


「なんだ、お前のコレか?」

「ええ、そんなところです」

「おー」

「ジン、これって何?」


 怪訝な顔をするアーリィーに、俺は耳打ち。――彼女か、ってことさ。


「彼女!?」


 ぼっ、と途端に赤面するアーリィー。俺は苦笑しながら、ウマンさんに向き直った。


「魔石を加工するとき、魔石くずが出ますよね? それってどうしてます?」

「使い道のない削りカスか?」


 ウマンさんは、ボリボリと髪をかいて少し考える。


「いや、普通に裏に捨ててるけどもさ」


 ほう、それはそれは。俺は上目遣いで、魔法道具屋店主を見た。


「その削りカス、もらえたりします?」

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