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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第882話、回収するモノ、捨てるモノ


 七号浮遊島の軍事施設から、使えそうな兵器や装備を回収する。気分は墓泥棒ってか。

 大帝国にその軍備を取り込まれてしまうのは阻止しないといけない。


 さて、軍艦や魔人機の回収を進めていた俺たちだが、問題が発生した。


 というのは、魔法文明兵器の中の戦闘機と四脚の無人戦車である。


『戦闘機にはそれぞれ二種類あって、有人型と無人型に分かれています』


 SS兵が現場で撮影した写真で差異を見せる。


『有人型は魔力がないと動かせない仕様です。そして無人型は例の精霊型制御システムで動きます』


 精霊型制御システム――要するに、エルフとか人間とかを生体部品にして動かすやつだ。アンバンサー系の技術の応用だろうが……。


「戦車は無人仕様だったな」

『はい、北方領に仕掛けてきた敵戦車の残骸からそう確認されていますが、精霊型制御システムを積んでいたのは間違いないかと』


 シェイプシフター兵は機械のように冷静であるが、それでも時々人間くさい仕草をすることがある。俺に報告する彼も、どこか声が重かった。


「精霊型か……」


 人間とかエルフを部品にしてしまうというのは、どうしても嫌悪感が先に来てしまう。


『ボディや多くのパーツは問題ありませんが、精霊型制御システムには寿命があるようで、こちらは確認した全てで交換が必要です』

「つまり、現状ではスクラップも同然か」

『はい』


 動かないのではね。


 とはいえ、精霊型制御システムを新品に交感すれば、兵器としては使えるわけだ。俺たちはやらないが、大帝国は精霊型制御システムの素材を作る術があるからな……。


 有人型は魔力が必要とは、また微妙に使い手を選ぶ仕様だ。さすが魔法文明時代の兵器。天上人は全員魔法が使えますってか。


「無人型は検証用にいくつか回収。有人型も、後でどうするか考えるとして、これも運び出しておけ」

『承知しました。残りは破壊しますか?』

「大帝国には渡したくないからな。……いや、あとでこの格納庫を開放して水没させるからそのままでいい」


 七号浮遊島の本体はいま北の海の中。軍港も含め発進用ゲートを開けば、海水が流れ込んで全部沈めてくれるだろう。

 俺はポータルだけ開いて、作業は部隊に任せる。


「ああ、そうそう。この浮遊島に結界水晶があるはずだ。それも回収を忘れないように」


 世界樹を有するエルフの里の結界。魔法文明時代の代物なら、この浮遊島にもあるはずだ。帝国さんも帝都の守りに使っているから、こちらでも手に入れておきたい。


 そこへ通信機からの呼び出しを受けた。相手は古代都市遺跡に回ったベルさんだった。


『こっちは現地についた。地下に潜ったが……凄い光景だ。マジで世界樹が横に伸びてらぁ』


 遺跡内に入りたいから、入り口を開けてくれ、というベルさん。


「了解した。アレティを連れて、そっちへ行くよ」


 ポータル移動って、こういう時便利だよな。俺は、制御室のアレティを呼び出し合流。そこから第二遊撃隊の旗艦『セントー』に飛び、そこでベルさんの作ったポータルを使う。


「よっ」


 暗黒騎士姿のベルさんが俺たちを迎えた。浮遊ボートの上である。


「本当に横倒しなんだな」

「ああ、普通に行ったら崖を上り下りしないといけないところだ」


 とても広い地下空間に、横向きに伸びる世界樹。……何ともシュールな光景だ。


「ここ、大渓谷でもあったのかね」

「かもな。が、浮遊島の大半は下の地層に埋まっているだろうよ」


 そして目当てのものは、その埋まっている部分にあると思われる。


「アレティ、ここから近いアクセスポイントは?」

「はい、お父さん。世界樹の根元にも転移陣はありますから、そこから入りましょう」


 アレティが指し示すほうへ、浮遊ボートは動く。なお俺たちの乗るボートの後ろに浮遊ボートの群れがついてくる。何だか水槽の中の魚みたい。



  ・  ・  ・



 アレティが端末を操作して確認したところ、古代都市遺跡の浮遊島は四号島だそうだ。氷大陸の七号と同型で、その構造も似通っている。


「まったく同じじゃないのかい?」


 ベルさんが言えば、アレティは真顔と答えた。


「これだけ大きな構造物ですから、細部はそれぞれの島で違います」


 軍艦みたいなものだな、と俺は思った。何々型、何々級と同型艦でも、造船所が違えば、細かな部分で違う。マニアはその細かな違いで、同型艦でも、艦の名前を言い当てる。


 この四号浮遊島も、七号と同じく生命体の反応は確認できなかった。SS兵による捜索でも無人。


 が、彼らシェイプシフターにはともかく、生身の人間にはこの横倒しの島は不便極まりなかった。


 固定されていないものが重力に従って落下したようで、物が散乱している場所があった。


 また本来、制御パネルが壁についているものが天井にあったりと、浮遊魔法や足場がないと届かなかったりするところもあった。次のフロアへ行く扉が、壁なのか天井なのか床にあるのか……。


 しかも落下した影響はかなり大きかったらしく、魔力が通っていてもドアが変形して開かなかったりと、普通に横断するより遥かに手間取っている。


「邪神塔ダンジョンを思い出すな」


 ポツリとベルさんが漏らした。昔、俺とベルさんで挑んだ奇妙なダンジョン。あの滅茶苦茶ぶりは……うん、思わせるところがある。


 ふと、かつての仲間たちが脳裏によぎった。邪神塔に挑んだ戦士たち――クーカペンテ出身の、故国解放のために大帝国に挑んだ者たち。


 かつての戦友たち。無事だろうか。俺が、連合国からの裏切りで戦場を離脱した後、巻き返した大帝国によって、解放されたクーカペンテ、プロヴィアは再び大帝国の支配下に落ちた。


「ジン?」

「何でもないよ」


 探索を進めよう。魔法文明兵器の回収だ。


 しかし、ここでも横倒しの弊害(へいがい)が出ていた。戦闘機格納庫――全部ひっくり返って、瓦礫(がれき)の山になっていた。


「……」


 次、魔人機格納庫。……全滅ではないが、原型を留めている機体は少なかった。壁面が床になって、積み上がっている機体が大半だが、いくつか損害が軽微で欠損部位を直せば動かせそうなものもあった。


 残っている機体を回収してポータルで送っている間、艦艇格納庫へ。


 結論からいうと、四つある軍港中、前二つが落下時の衝撃で潰れ、使用不能。残る二つも、アームから脱落し、衝突したものもあって、回収できたのが、戦艦6、空母1、クルーザー8、フリゲート14という有様だった。軽い損傷があったものを含めて、である。……それでも、結構な戦力だけどね。


 落下して修理しないといけないものについては、形がよいものは切断して予備部品として回収させることにする。


 さて、兵器の回収と平行して、SS部隊には、浮遊島内の調査をさせている。居住区や倉庫区、工場区画などなど……。


 生存者は発見できず。また亜人の魔力を吸収して資源とする装置や、亜人クローン製造装置のある施設も見つけられたが、これらの施設も稼働していなかった。


 作りかけだったクローン体は、人型になり損ないの骨という形で残っていた。……折れた世界樹遺跡で見つけた大量の骸骨の入った装置も、クローン製造装置だったんだなぁ。

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