第872話、復活の魔神機
グレーニャ・エルの命令を受けた四機のA級魔人機セア・フルトゥナは、折れた世界樹へ接近した。
地上には、第二護衛戦隊の強襲揚陸艦『インドミダブル』から、遺跡防衛のために出ていたAS-01ソードマンと、ファイター二個小隊8機が展開していた。
盾持ちのソードマンとファイターは、マギアライフルやロングレンジライフルによる銃撃、弾幕を展開して、セア・フルトゥナの接近を阻み、撃墜しようとした。
しかし空を飛ぶセア・フルトゥナは、風に舞う妖精のように、ヒラリヒラリと迎撃を避ける。そして手に保持するクロスボウ型魔法銃や、電磁槍砲から反撃の風弾、もしくは電撃弾を放った。
双方の魔弾が飛び交う。セア・フルトゥナは空から撃ちつつ、地上部隊に接近。それにともない弾が機体を捉えるが、防御障壁が防いだ。
『敵の攻撃は障壁を抜けない! 突撃!』
四機のセア・フルトゥナは果敢に距離を詰め、次々にソードマン、そしてファイターを撃破する。
接近に対して盾から剣を抜いたソードマンが向かってくるが、その横合いから別のセア・フルトゥナが突っ込んで、その騎兵槍じみた武器で胴体を貫いた。
『敵部隊、排除!』
『侵入する!』
青肌エルフの女パイロットたちは、世界樹の穴から地下へと降りた。
『魔神機のコア反応を捕捉。――機種識別、リダラ・バーン、リダラ・ドゥブ!』
『魔神機確保を優先する。雑魚には目もくれるな!』
『了解!』
飛行ユニットから、黄色い光を放射しながらセア・フルトゥナは薄暗い巨大遺跡へと侵入を果たす。
表には敵のロボット兵器がいたが、中にはそれらが見当たらない。船らしきものが幾つか通り過ぎたが、攻撃してこなかったから無視した。照明が点灯している部分が、敵の探索済みの場所なのだろう。
それを辿った先に、魔神機特有のコアの反応が検知された。
同時に敵人型兵器がいて、魔弾を放つ銃を向けてきたので接近して撃破。
いた。
魔神機サイズの半壊した扉を蹴破ると、中には、漆黒の騎士リダラ・ドゥブが立ち、白騎士リダラ・バーンが横たわっていた。
青肌エルフパイロットは、白騎士のコクピット近くに人間――若い女がいるのを見逃さなかった。
――機体を動かそうというのか!?
そのパイロットは激昂した。
『下等な地上人どもが、神聖なる機体に触れるなァー!!』
リダラ・バーンの元まで接近し、魔人機の手で握りつぶしてやる――そう思った女パイロットだったが、その瞬間、警告アラートと共に漆黒の騎士――リダラ・ドゥブが腕のバックラーからブレードを抜いて斬りかかってきた。
・ ・ ・
「そう簡単にやらせなくってよ!」
サキリスはリダラ・ドゥブ――黒騎士型魔神機を操っていた。
まだ動かして十分も経っていなくてわからないことも多いのだが、ASを操縦した経験、そして魔神機のほうがサキリスの思考に合わせて応じてくれているような感覚があった。
返事はしないが、上質のゴーレムコアがサポートしてくれている感じだ。
黒騎士のブレードは、いとも容易く女性型魔人機――セア・フルトゥナの胸を切り裂いた。おそらくコクピットがあるだろう部位が綺麗に切れて、糸の切れた操り人形のようにその機体は倒れた。
『よくも!』
敵僚機が、騎兵槍をサキリスのほうへ向け、突進してきた。――女の声!?
しかしサキリスは黒騎士の姿勢を低くしながら前に出て、槍をバックラー付きの腕で払い、敵機の懐に飛び込むと、背部武装を選択。
「サンダーランスですわ!」
電撃の槍が発生。セア・フルトゥナの胴体に風穴を開けた。
サキリスが敵魔人機と戦っている隙に、アーリィーは白騎士――リダラ・バーンのコクピットに乗り込んだ。
本当は敵が来る前に運び出したかったのだけれど――アーリィーは、操縦桿と思われる球体に手を置く。
先に動かしたサキリスによれば、ここで『動け』と念じながら魔力を注ぐイメージと言われた。――動け!
その瞬間、コクピットに火が灯った。稼働音と共に、シートから何か伸びてきて背中を無数に刺されたような感覚に囚われる。
ビクリとして振り返るが、とくにコードが体にめり込んだとかそういうのはなかった。イメージなのだろうか。ただ機体と接続されたような不思議な感覚に支配される。
――ボクは、リダラ・バーン。リダラ・バーンがボク……?
思考に流れ込んでくる一体感。何故か、この魔神機のことがわかる。魔神機が語りかけてくるとかはないが、まるで自分の体になったようだ。
立ち上がるイメージ。フットペダルを踏み込むが、イメージに合わせて機体が動いているようだった。その挙動が滑らかすぎて、機械であることを忘れる。
視線を向ければ、サキリスのリダラ・ドゥブが、セア・フルトゥナの腕を切り落としていた。二機撃破に、さらに一機損傷。この狭い空間では上等か。
「加勢するよ!」
武器――と思った時には、左腕のバックラーに剣が収納されているのがわかった。他にも肩に射撃武器があるのが脳裏に浮かんだのだが、何故か剣のほうが強く伝わってきた。この狭い空間で射撃武器は使いづらいというアーリィーの思考がダイレクトに影響したのかもしれない。
リダラ・バーンは剣――ブレードを抜いた。その剣に青い光が走り、文字が浮かび上がる。
魔法文字の類。そう思った時、ブレードが緑の光剣となった。
――いける……!
敵魔人機には防御障壁がある。が、それすら関係なく斬れると、アーリィーは何故か確信した。
一歩を踏み出す。片腕を失い、下がるセア・フルトゥナに一気に飛び込み、光剣を横に切り払う。
その腰を何の抵抗も感じないまま両断。凄い切れ味だ――感心しつつ、残る一機が素早く身を翻した。
『逃げますわ!』
サキリスの声。アーリィーはリダラ・バーンを駆けさせる。
「逃がさない!」
敵機は廃墟街へ出ると、飛行ユニットで飛び上がり、世界樹の穴へと上がっていく。
アーリィーのリダラ・バーン、サキリスのリダラ・ドゥブも背部の飛行ユニットで追撃にかかった。
そんなアーリィーの耳に魔力通信機からのラスィアの慌てた声が響いた。
『アーリィー様、深追いは危険です!』
「でも、出口はあそこしかないんだよ!」
追う追わない以前に、折れた世界樹の穴の外の戦況がどうなっているか確認しないといけない。
「ラスィア、脱出の準備を。……もうアドヴェンチャー号についた?」
『はい、こちらはヴィオレッタとヴェルデが迎えにきてくれました。ユナは少し安静が必要みたいですが……。その、アーリィー様、お体は問題ございませんか?』
「今のところ大丈夫。サキリス、そっちは?」
『問題ありませんわ!』
適性があるのだろう、とアーリィーは思った。機体のほうは問題ないのが、特に操作しなくてもわかる。この魔神機は、アーリィーの魔力を欲して吸っているようだが、その量は疲労を感じない程度、つまり許容範囲内に収まっていた。
おそらく、サキリスもそうなのだと思う。
セア・フルトゥナを追って穴の外へ出る。だがアーリィーはそこに広がっていた光景に絶句した。
第二護衛戦隊の艦艇群が、ほぼ壊滅していたからだ。
○リダラ・バーン:S級魔神機。通称「白騎士」。リダラ・シリーズのベース機。万能型の機体であり、特化したものはないが高い次元でバランスのとれた性能を持つ。背部に飛行ユニットを持ち、単独での飛行が可能。
全高:5.7メートル
武装:ホーリーブレード×1
マジックバックラー(盾)×1
肩部魔法砲×2
アームキューブ(魔弾放射器)×1
○リダラ・ドゥブ:S級魔神機。リダラ・バーンの兄弟機。基本的な性能はバーンと同じだが、かつてのパイロットによる武装が強化されている。
全高:5.7メートル
武装:ホーリーブレード×1
マジックバックラー(盾)×2
肩部魔法砲×2
レッグキューブ(魔弾放射器)×2
サンダーランス×2




