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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第867話、魔神機


 アドヴェンチャー号の乗り心地は実に快適だった。


 戦闘機ではないし、それらに比べると船体は大きいが、俺の操る操縦桿に従い、機敏に動いた。旋回、ロールに宙返り――


「ジン、少しはしゃぎ過ぎじゃない?」


 アーリィーが指摘したが……やっぱり、はしゃいでるかな、俺。


「テストは必要だろ?」


 一通り飛ばした後、俺はポータルを使って、折れた世界樹のある遺跡へ飛ぶ。……青い転移リングをくぐる直前、ふと思う。


 転移だけなら、俺が目的地を想像すればできるのだが、その際、乗っている船も一緒に転移できないかと考えた。


 もしできるなら、ポータルを使わずに転移できる。昔は、一人転移をやっていたが、複数人で移動する機会が増えて、ポータルを使うようになった。


 ディグラートル皇帝が一人転移をやるのを見て、それを思い出したわけだが……。乗り物ごと転移は、まず一人で試そう。俺だけ転移して機体が転移しなかったら、大事故だからね。


 いや、アーリィーや他に操縦者がいれば、やってもいいか。俺だけ転移したとしても、操縦者がいるから墜落したりはしないし。


 ……などと考えながらポータルを通過。遺跡警戒隊――大帝国の遺跡制圧部隊を迎撃する部隊の間を抜け、折れた世界樹に到着。その開口部より、地下構造体へと下りる。


 遺跡内部は、シェイプシフター調査隊が、引き続き調査を行っている。調査隊が持ち込んだ照明機材のおかげで、以前、ワンダラー号で来た時より、移動しやすかった。


「さて、それじゃ魔神機とやらを拝みに行くとするか」


 俺たちは、ヴィオレッタ、ヴェルデに船を任せて、さっそく現場へと移動する。カーゴスペースに載せてきた浮遊バイクを使う。都市のように広い地下構造体である。こうした乗り物は必要だ。


「ねえ、ジン」


 ちゃっかり、俺の浮遊バイクの後ろに乗っているアーリィーが聞いてきた。


「魔神機のコクピットってどうなっているのかな?」

「どう、とは?」

「操縦者の魔力が必要って聞いたんだけど、これって持っていると持ち主の魔力を使う魔法具とか魔法武器と同じじゃない? 操縦者の魔力が枯渇したら、動けなくなるのかな、やっぱり」

「……あー、どうなんだろう」


 魔力を使うっていうなら、なるほど長時間乗っていたら、魔力切れで意識を失ったりするのだろうか。一定基準の魔力があれば、それだけで動いたりはしないのかな?


 もし前者だったら、実は短時間しか戦闘できない代物ってことになるか。


 しかしどれくらい魔力を持っていかれるかわからないが、アーリィーみたいに魔力の泉持ちの体質だったら、魔力切れは起きないか。


「そのあたり、試してみないとわからないな」


 一応、そのために、ウィリディスでも魔力に秀でた面々を連れてきた。シェイプシフターズでは動かせないから、しょうがないね。


 現地の調査隊のシェイプシフターが俺たちを出迎えた。調査隊は依然として構造体を調査しているが、すでに魔神機二機の周辺を確保し、回収準備にかかっているという。


『あちらです、閣下』


 シェイプシフター兵は、やや斜めに傾いている大部屋、その奥にあるモノを指し示した。


 白と黒。人型ロボット兵器が二機。あれが魔神機なのだろう。


 白いほうは足が床に埋まって、座っているような格好。黒いほうは、すでにシェイプシフター搭乗の簡易AS『ファイター』に支えられて、壁を背に直立していた。


 高さは六メートルくらい。大帝国の甲鎧(アラムール)、リダラに似たフォルムをしている。帝国のリダラ型がモデルにした魔神機なんだろうな。


 甲鎧やうちのASと、基本的なところは変わらないようだ。魔力適性者でないと動かせないのと、魔法式の装備を除けば。


「これが、魔法文明時代の……」


 ダークエルフのラスィアが、その黒い魔神機を見上げれば、妹分であるユナが、その無感動な目を機体に向ける。


「魔力で動く、というのが興味深い」

「騎士みたいですわね」


 SSメイド服のサキリスが、ポツリとコメント。アーリィーも頷いた。


「うん、騎士をそのまま大きくしたような印象だね。特にASと違いなさそうだけど」


 それぞれが感想を言い合っている女子たち。俺はベルさんを見た。


「どう思う?」

「見た目だけなら、オレのブラックナイトのほうが格好いい」

「……変なところで張り合ってんな」

「純然たる事実ってやつだよ」


 ベルさんはニヤリとした。


「こいつ、勝手に自己再生してるんだろう? 悪魔にでも作らせたのかねぇ、これ」

「悪魔……」


 そういえば、九頭谷のところの赤毛悪魔ちゃんが、デーモンドールとやらからASみたいなものを作っていたな。偵察機の記憶映像を見たが、なるほど魔神機ってあんな感じなのかもしれないな。


「あの子らは正規のマシンを作ったわけじゃないが、あのレベルかそれ以上の性能があるとしたら、ヤバイな……」


 改めて、白と黒の魔神機を眺める。


 そこへ、魔力通信機がガリガリと音を立てた。……俺への呼び出しだ。


『閣下、連合国戦線より通報。帝国の魔神機が出現、現在、交戦中です』


 シェイプシフター通信士からの報告。――現れたか。


「どうだい、ベルさん。動いている魔神機を相手に勝てると思うかい?」

「さあな、やってみなくちゃわからんだろう」


 ベルさんが意地の悪い笑みを浮かべた。


「ひとつ、試してやろうじゃないか」



  ・  ・  ・



 アーリィーたちにこの場を任せ、俺とベルさんは連合国戦線にいるファントムアンガー部隊に転移して合流。


 そこで俺専用のアヴァルク・カスタムを用意。ベルさんもブラックナイトを召喚し、戦地へ飛んだ。


 魔神機の襲撃に備え、待機していたファントムアンガー艦隊から、すでにマッドハンターの第一中隊が出撃している。


 異世界で人型兵器を扱い、プロ中のプロであるマッドハンターだが……大丈夫かな?


 俺は不安をおぼえる。何せ、魔神機がどんなものか未知数だからね。


 そして到着までの間、空中観測機からの情報がリアルタイムで中継されたが――


「……何だ、こいつは」


 敵機――紅いその機体は、SS諜報部の報告でドゥエル・ファウストと分かっているが、そいつの動きがとても速かった。


 中身がグラディエーターであるアヴァルクが、ドゥエルに瞬時に飛び込まれる、刹那、爪付きの拳がたたき込まれ、アヴァルクは四肢を残して胴体だけ後ろへ吹っ飛ばされた。


 あまりの早業。アヴァルクは二本の足だけ残して、胴体、遅れて手、頭が地面に落ちた。


『こいつは強そうだ』


 ベルさんの声が魔力通信機から聞こえた。


 いや、強すぎだろうよ。何だこの動き! 瞬きの間に、距離を詰め、パンチやキックを繰り出す。ロボットというより鍛えられた格闘家のように滑らかだ。


 たちまちアヴァルクは数をすり減らし、俺たちが駆けつけた時には、マッドハンターのアヴァルクHMカスタムのみになっていた。

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リメイク版英雄魔術師、カクヨムにて連載中!カクヨム版英雄魔術師はのんびり暮らせない

ジンとベルさんの英雄時代の物語 私はこうして英雄になりました ―召喚された凡人は契約で最強魔術師になる―  こちらもブクマお願いいたします!

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