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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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777/1941

第770話、デファンサ航空戦


 ファントム・アンガー艦隊は、ウーラムゴリサ王国の領空内を飛行していた。


 主力は空母機動部隊。高度5000メートルの位置に、レントゥス級空母四、リヴェンジ級軽空母四、ゴーレムエスコート十がいた。青の艦隊の二隻の空母を回して、合計八隻を揃えたのだ。


 アーリィー指揮の空母群から、魔獣群に向けて攻撃隊が発進。艦戦、艦爆による戦爆連合は、MMB-5の生み出した魔獣にエクスブロード爆弾を次々に叩き込み、火球に包み込んだ。

 旗艦『レントゥス』で、アーリィーは、戦隊を統率するシップコア『エメラルド』に確認した。


「敵空母から、艦載機は出ていない?」

「はい、アーリィー様。偵察機からは、敵主力艦隊後方の空母部隊に動きなし、とのこと」


 ファントム・アンガー艦隊は、すでにドラゴンフライ偵察機を戦域全体に飛ばし、索敵活動を行っていた。敵艦隊は第一、第二艦隊ほか、空母部隊が存在し、その位置も掴んでいる。


「うーん、航空ポッド母艦を連れているから、戦闘機を飛ばしてくると思ったんだけどなぁ……」


 アーリィーはヒスイ色の瞳を細めた。航空ポッドに防空させて、戦闘機を自由に使う可能性を考えていたが……。


「あくまで艦隊防空を重視する、ということだね」


 それだけ、ファントム・アンガー航空隊を警戒しているということか。


「あるいは、魔獣を捨て駒として見ているのかもしれません」


 エメラルドが冷静な口調で言った。なるほど、一理あるとアーリィーは頷いた。


「では、こちらはそれにお答えしないとね。第二次攻撃隊は予定通り、敵艦隊へ攻撃をかける。戦果拡大を狙うよ。その後、第三次攻撃隊を出撃。こちらは魔獣群への追加攻撃で、ウーラムゴリサ軍の負担を軽くする」

「承知しました。――旗艦『レントゥス』より、全空母へ。計画Aのまま、第二次攻撃隊発艦――」


 さてさて――アーリィーは戦域全体を表示するモニターマップに目をやる。


「突撃隊、がんばって」



  ・  ・  ・



 ディグラートル大帝国第空中一艦隊旗艦『コヴァルク』。


「そうだ、戦闘機隊は待機せよ。ファントム・アンガーは必ずこちらに来る!」


 スラヅィ大将は断言した。


「貴重な戦闘機を誘いだそうというのだろうが、そうはいかん」


 人工的に生まれた魔獣どもがいくらやられようが、陸軍の主力部隊が存在している限り、デファンサは落とせるし、王都への進撃も可能だ。傭兵軍には、貴重な弾薬を魔獣如きに浪費してもらう。


「航空戦隊には、敵襲に備えていつでも戦闘機、航空ポッドを出せるようにさせておけ」


 司令長官の命令に、通信参謀は敬礼して答え、すぐに部下に伝令を走らせた。

 参謀長は艦橋の外に目を向け、表情を険しくさせた。


「雲が多いですな……。航空機の大きさを考えると、発見が難しくなるかもしれません」

「見張りの対空監視を厳に。見落としは許されんぞ、艦長」


 艦に関することは艦長の仕事である。彼は伝声管を通じて、見張り部署へ司令長官の命令を伝えた。

 と、その見張り員から『未確認飛行体、発見!』の報が飛び込む。


「二時の方向、距離およそ6500、高度3000より接近する物体……いや空中艦を視認。雲を抜けて複数……」

「空中艦? 航空機ではないのか?」


 スラヅィ大将は艦長と顔を見合わせた。すぐに続報が入る。


『飛行体、Ⅰ型クルーザーとコルベットが複数……ですが、あれは!』


 味方? 艦橋の手隙の者が望遠鏡を覗き込み、正体を確かめようとする。


『赤い艦体色……! おそらくファントム・アンガーの艦隊!』

「何だと!?」


 ファントム・アンガーが艦艇で主力艦隊に急接近してくる。航空隊ではなく、船で!


「対艦戦闘! 全砲門、開けぇ!」


 艦長がとっさに怒鳴った。見ればファントム・アンガー艦隊はクルーザーとコルベットを中心にしながら、第一艦隊へ高速で向かってきていた。


 帝国艦なのに、何故あんなに速いのか? ギリギリと胸が締め付けられる思いにとらわれるスラヅィ。参謀長は真顔で言った。


「空中艦隊と並び立つ存在などなく、艦隊同士の砲撃戦など未経験なのですが、やれましょうか?」

「敵が地上ばかりだったからな。だがまったく想定していないわけではない」


 これまで暇をしていた上甲板の主砲、その砲手たちも意気込んでいるのではないか。


「しかし、連中、転舵しませんな……まさか、このまま突っ込んでくるつもりでは……!?」

『敵艦より、高速飛翔物体、多数!』


 見張り員の絶叫が伝声管より響き渡った。



  ・  ・  ・



 ファントム・アンガー艦隊突撃隊は、大帝国第一艦隊へ文字通り突撃を敢行した。


 その兵力はⅠ型クルーザーを大改装して別物になった巡洋艦『デファンス』に、ファントム・アンガー所属クルーザー『ドミナシオン』『コンケット』、シャドウ・フリートの補充用に作られていたⅠ型クルーザー三隻の計六隻のクルーザー。


 そしてコルベットは、ファントム・アンガー所属の『水無月(ミナヅキ)』『文月(フミヅキ)』『葉月(ハヅキ)』の三隻に、シャドウ・フリートコルベットの唯一の生き残り『睦月(ムツキ)』、さらにシャドウ・フリート補充用コルベットから『長月(ナガツキ)』含む四隻を加えた計八隻。


 合計十四隻が、遮二無二に四十隻の帝国主力艦隊の列に艦首を向ける。軽巡と駆逐艦クラスの艦隊で、戦艦を含む敵艦隊に挑むのだ。

 突撃隊旗艦『デファンス』の艦橋、ダスカは艦長席から突撃隊に命令を発した。


「各艦、ミサイル発射。そののち、敵艦隊に近接、反航戦を仕掛ける!」


 普段はアンバル級で指揮を執ることが多いダスカ。だがこの改造クルーザー『デファンス』は帝国鹵獲艦をベースにしながら、一番ウィリディス艦に近い大改装が施されている。


 ズイーゲン会戦で大破したⅠ型クルーザーを使ったのだが、船体は元の艦より二十メートルほど短くなっている。しかし初めからミサイル発射管を搭載。青の艦隊唯一のクルーザーだけあって、シールドと共に装甲も強化プレートで補強、エンジンもアンバル級とほぼ同速が出せる強化型を載せていた。


 その『デファンス』、そしてシャドウ・フリート補充艦はミサイル兵装を装備した型だ。八隻から放たれた対艦ミサイルが、帝国艦隊の戦艦、クルーザーに直撃、爆発の火の玉を具現化させた。


 戦艦六隻の先頭を行く旗艦『コヴァルク』にはミサイルが二発命中。その巨艦を大きく震わせ、接近するファントム・アンガー艦に向けようとしていた30センチ連装主砲への射線がズレる。


 ファントム・アンガー艦の15.2センチ、または12.7センチプラズマカノンが次々に光を放った。ミサイルを受けて爆沈した艦を避け、まだ健在の帝国艦に光線は突き刺さり、吹き飛ばす。


 そのまますれ違うように帝国主力艦隊に飛び込むファントム・アンガー艦隊。プラズマカノンと、帝国艦の砲弾が行き交う。

 デファンスのプラズマカノンは強化前の通常砲だが、それでも戦艦『コヴァルク』の艦橋を吹き飛ばし、司令部要員をまとめて吹き飛ばした。


 だが主砲では追従できなかった帝国艦も、艦側面に並ぶ飛竜用の8センチ速射砲や戦艦の15センチ副砲で応戦した。

 防御シールドを備えるファントム・アンガー艦だが、無傷とはいかなかった。クルーザー、コルベットともに数隻が、シールドを貫通した砲弾によって被弾した。目と鼻の距離での超至近距離砲戦である。シールドとて防ぎきれないこともある。


 ただ損傷した艦も『戦闘航行に支障なし』との報告が、旗艦『デファンス』に入った。ダスカ艦長は安堵しつつ、艦隊を一航過で全速離脱させた。


 次の目標に向かわねばならない。デファンサ領空会戦は始まったばかりだ。

●ファントム・アンガー空母機動部隊

中型空母:レントゥス、フォルトゥス、リーベルタース、ノードゥス

軽空母:リヴェンジ、マローダー、イントゥルーダー、レベリオン

ゴーレム護衛艦:

(Ⅰ型:海霧、山霧、谷霧、川霧

(Ⅱ型:氷雨、秋雨、夏雨、早雨、白雨、霧雨


●突撃隊

クルーザー:デファンス、ドミナシオン、コンケット、ペルセ、エヴァシオン、アリアンス

コルベット:睦月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、雪月



裏話:ファントム・アンガー隊艦参加艦は、カラーリングで所属艦隊が識別できる。メインカラーは赤としながら、サブカラーが所属によって異なる。


●赤・灰色=ファントム・アンガー艦

(空母:リヴェンジ、マローダー、イントゥルーダー

(クルーザー:ドミナシオン、コンケット

(コルベット:水無月、文月、葉月


●赤・黒色=シャドウ・フリート艦

(クルーザー:ペルセ、エヴァシオン、アリアンス

(コルベット:睦月、長月、神無月、霜月、雪月


●赤・青色=青の艦隊

(空母:ノードゥス、レベリオン

(クルーザー:デファンス

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