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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第764話、アンバル級の出所


 リーレ、橿原(かしはら)組を支援する護衛艦隊には、軽空母『ビンディケーター』、ゴーレムエスコートを三隻、シャドウ・フリート所属だった強襲揚陸艦『グローリアス』をつけることにした。


 『グローリアス』は先のシャドウ・フリート壊滅の際に、唯一参加していなかった艦だ。新しくシャドウ・フリートを再建するが、揚陸艦は三隻用意するので、規格の違う『グローリアス』を、遺跡探索チームの護衛部隊に配属する。


 というわけで、『ビンディケーター』に全部隊共通のストームダガー戦闘機を搭載。『グローリアス』には簡易AS『ファイター』を数機乗せて、リーレたちのワンダラー号を追わせた。

 まあ、人員だけなら、ワンダラー号にポータルを繋いであるので、移動はできるんだけどね。


 艦載機については、今回は適当に積み込んだが、輸送ヘリとか必要な場面もあるだろうし、どう割り振るかは考えるとしよう。


 さて、アリエス浮遊島に戻った俺は、鹵獲したアンバル級軽巡洋艦の様子を見に行く。搭載されているシップコアもアンバル型。標準的だな。……艦名、どうしようかな。アンバルってのは、確か琥珀(こはく)って意味で、宝石名だった。テラ・フィデリティア時代では、ナンバーで呼ばれていて、固有の艦名はなかったと聞く。


 二番艦扱いのグラナテも、本来人工コアであり、アンバル級の正式名ではないが、ウィリディス軍ではそう呼んでるし……素直に、宝石名をつけよう。


「……え、何? オパルス?」

「はい、大帝国では『オパルス』と命名されていたようです」


 ディアマンテの言葉に、俺は少し考える。まあ、大帝国だって艦に名前をつけるよな。


「しかし、オパルスって確か――」

「ええ、オパールのことですね。宝石名です」

「……じゃあ、それでいいや」


 宝石名だし。命名基準に合致しているなら、変えることもあるまい。では次の案件。


「それで、捕虜たちから、何か情報は?」


 取り調べを担当したエリサと九頭谷から、お話を聞く。


「乗組員は、皇帝の親衛隊の所属だった」


 エリサは机の上に肘を置いて、世間話をするように言った。


「大帝国本国の北海にある孤島に秘密基地があって、そこでアンバル級の訓練をしていたそうよ。ひと目に触れないように夜間を選んでね」

「なるほどね……。夜間での行動は慣れていたわけだ」


 オルドーグ研究所襲撃は、夜中だったが、敵さんにとってはいつもの環境だったわけだ。

エリサは皮肉げに唇を吊り上げた。


「もっとも、基地のある孤島は無人島らしいけれど」

「その基地は叩かないといけないな」


 シャドウ・フリートを再建したら、お礼参りと行こう。ところで……。


「九頭谷、お前は何かあるか?」


 先ほどから、エリサの豊かな胸に視線がいっている後輩に発言を促す。


「え? あぁ、その秘密基地の話は乗員から聞けたんですけどね。気になることがあるんですよ」

「というと?」

「誰もその……アンバル級ですか? どこから来たか知らないんですよ」

「詳しく」

「つまりですね、その空飛ぶ巡洋艦をどこから基地に持ってきたか、誰も知らないんです」

「補足すると」


 エリサが口を挟んだ。


「その基地の近くに、遺跡とか発掘場はないそうよ。彼が言いたいのは、アンバル級はその基地以外のどこからか運ばれてきたということ」

「その秘密基地以外に、アンバル級を発掘し、使えるようにした拠点があるってことか」

「そういうことです」


 九頭谷は首肯した。


「でも、その場所を乗員の誰も知らない。つまり、帝国にとってもこの艦に関する情報はトップシークレット。重要度が高いから乗員にも詳細を知らせていないってことなんです」

「徹底しているな」


 俺は腕を組んだ。


「ひとつずつ、情報を手繰っていくしかない、ということだな」


 皇帝陛下の秘密の玩具箱――その場所は、未開拓情報ルートの中に潜んでいる。しかも味方にすら情報を統制するほど機密度が高い何かを持って。


 気に入らないな。どんな危険な代物を他にも隠しているのか。

『オパルス』が母港としていた北海の秘密基地は叩き潰す。が、SS諜報部に言って情報収集をさせてからだな。尋問の間にSS兵がまとめた調書の束を眺め、二人に向き直る。


「エリサ、九頭谷。二人ともありがとう。ゆっくり休んでくれ」

「そうそう休んでもいられないけれどね」


 エリサは立ちながら、自身の肩をポンポンと叩く。


「ノイ・アーベントの診療所もあるし、今はクレニエール東領にも出張しているから」

「休みがほしい? 侯爵命令で君に休日をあげられるよ」

「まあ、様子見くらいはさせてもらうわ。休みはそれからね」


 手をヒラヒラさせて、退出するエリサ。その後ろ姿を眺め、九頭谷は呟く。


「マジ、いい女っすね」

「いいだろ? 彼女はハーフ・サキュバスだ」

「おれもハーフ悪魔です」


 ハーフ悪魔って、変な響きだな。


「それで、お前さんの家の件だが、決まったか?」

「はい、リバティ村の近くの森の中に屋敷を建てるつもりです」

「屋敷、ね」

「あ、いけなかったですか?」

「いいや」


 異世界くんだりまで召喚されてしまった身だ。多少は大目に見るよ。せっかくだし、元の世界でできなかった上流暮らしというのをやりたいならやってもいいと思う。


「融資は必要か?」

「土地くらいですかね。それ以外は、自前で何とかしてみようと思います。何から何まで先輩に頼るのも悪いですし」

「こっちの仕事を手伝ってくれたら、その分、報酬は出すよ」

「ありがとうございます。……あ、報酬で思い出しました。ノイ・アーベントで冒険者ギルドがありますよね? 当面の生活費の足しに冒険者をやってみようと思うんですが」

「構わないよ。ただ、お前の連れの悪魔ちゃんたちには、くれぐれも正体がバレるような言動は避けるように徹底させてくれ。亜人までなら何とかなるが、悪魔だと俺でも庇いきれない」

「わかりました。……いっそ、獣人って扱いなら、ある程度誤魔化しがきくかも」

「そうだな。まあ、うちの領では他種族を差別しないように働きかけてはいるが、差別もあるから、その時は気をつけろ」

「肝に銘じておきます」


 九頭谷は相好を崩した。俺はニヤリと笑う。


「ちなみに、今、このあたりで冒険者をやるなら、クレニエール東領の開拓系の依頼がお勧めだ」


 そっち系の依頼は何かしらあるから、仕事がないってことは当面ない。

1巻、好評発売中。どうぞよろしくです。

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