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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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763/2031

第759話、シャドウ・フリート、壊滅


 速度が低下した『キアルヴァル』に従うように、シャドウ・フリート艦が付き従う。コルベットが12.7センチ単装プラズマカノンを撃ち、敵アンバル級の接近を阻もうとする。だがお返しとばかりにアンバル級の主砲が光の束を放つ。爆発する艦艇。


『ウヅキ、艦尾脱落、墜落!』

『敵艦、接近!』


 シェイプシフター見張り員たちが立て続けに叫ぶ。全長八十メートルのコルベットが爆炎に包まれながら大地に激突し、荒野を黒から赤に染め上げる。


 次に犠牲になったのは、軽空母『アヴェンジャー』だった。四基のプラズマカノンの光が、箱形の艦体、そして格納庫を貫き、焼き払った。

 元帝国輸送艦改装空母は、後付けされた防御シールドもあっさり突破され爆沈した。

 ……こっちへ来る!


「ベルさん、シールドを張るぞ!」


 艦の防御シールドは消失し、回復待ち。そこを狙われてはひとたまりもない! 人力! 人力の障壁展開だ!

 俺も魔力障壁で『キアルヴァル』を防御する。敵アンバル級の主砲が瞬く。だが俺とベルさんの張った障壁が、かろうじてプラズマカノンを防いだ。……あぶねぇ、ドラゴンブレスを防いだ時みたいだ。


「というか、一枚抜かれたな!」

「二枚張ってよかったな、障壁」


 ベルさんも唸った。


「で、オイラとお前、どっちのシールドが駄目だった?」

「知るか!」


 敵アンバル級が、艦隊を追い越し離脱。『キアルヴァル』の15.2センチプラズマカノンが追い掛けるように火を噴いたが、射撃装置にエラーが出ているのか全弾が外れた。

 しかし敵艦はまた戻って、三度(みたび)、仕掛けてくる。

 残存するは旗艦の他、軽空母1、Ⅱ型改航空巡1、コルベット4の七隻。……もう四隻食われた。


『航空隊、敵艦に接近!』


 アーリィーの第二航空戦隊か? それにしては早すぎる気が……。


 そうではなかった。こちらの艦隊がオルドーグ研究所の攻撃に放った航空隊だった。艦艇以上に高速のゴーストやタロンが敵アンバル級に牙を剥く。


 航空機は軍艦より強い――そう無条件に信じられればよかったのだが。


 あいにくと俺は、高性能な対空装備の前では、航空機が絶対的優位でないことを知っている。

 実際、敵アンバル級の備えた光線対空砲が弾幕を展開すると、接近する航空機が網に絡め取られるように撃破されていった。……航空隊は対地攻撃装備で、対艦用兵装がプラズマカノンしかなかったのだ。必然的に、敵艦の防空圏に飛び込んでしまう。


「時間稼ぎにしかならないな」


 ベルさんが呟く。


「いや、時間稼ぎにもならねえか」


 対空砲で航空機の接近を阻みつつ、敵艦はシャドウ・フリートに迫る。くそ、せめて『キアルヴァル』が全速を出せれば!


 自慢の高速クルーザーも、三基あるインフィニーエンジンのうち、一基を喪失し速度が落ちている。ポータルのある空域までたどり着けるか?


 コルベットの砲が敵アンバル級の防御シールドに弾かれる。もっと火力を集めれば、敵のシールドも消失させられるだろう。

 だが残存艦の全火力を叩きつけても、おそらくシールドを破る前に、こっちが先にやられる。八方ふさがり、か。


『「ヴァンジャンス」被弾! 飛行甲板大破、艦隊より脱落……!』


 Ⅱ型改航空クルーザーが、速度を落とした。被弾で機関にダメージを受けたか、随伴(ずいはん)できずに取り残されていく。

 その傍らを、敵アンバル級が通過した。後部の主砲が発砲し、『ヴァンジャンス』に新たな爆炎が起きるのが見えた。

 敵艦は、なおも艦隊を猟犬のごとく追い立てる。


『「デバステーター」回頭!』

「!?」


 旗艦の後方についていた軽空母が、突如向きを変えた。箱形の艦が、『キアルヴァル』から見えていた敵艦の姿を遮る。


「まさか……!」


『デバステーター』は退却を中止。対空兼用の12.7センチプラズマカノンを猛烈な勢いで撃ち始めた。


「エスメラルダ! スレーブサーキットは!?」

「いえ、修理しなくては復旧できません!」


 つまり、『デバステーター』搭載コアが、独自に彼我の状況を判断、行動しているのだ。逃げ切れないから、せめて他艦を逃がす生け贄になるべく……!


 高速で追い上げていた敵アンバル級は、突然、遮るように速度を落とした軽空母と衝突を回避する機動を取った。百四十メートルもの巨体ともなれば、いかにアンバル級ともいえぶつかればただでは済まない。上昇、右舷への転舵。だが艦体下部の砲二基四門による反撃を忘れない。

 光弾は『デバステーター』のシールドを貫通、機関部を破壊し大火球を生み出した。


『「デバステーター」、爆沈!』


 見張り員の声が、俺の耳朶を打った。くそ……。


『「キサラギ」、「サツキ」が転舵。敵艦へ突撃を敢行!』


 こいつらゴーレムなのに。シェイプシフターなのに。


 人は乗っていない。命令に忠実なゴーレムコアやシェイプシフター乗員が、退避命令の中、敵わないまでも時間を稼ごうとしている。


 双方の距離は近い。敵アンバル級は、さらに回避機動をとらされ、離脱する艦隊より離れされる。

 二隻のコルベットの砲が敵艦のシールドを削る。だが敵軽巡の主砲の砲口が光を放つたびに、真っ赤な火の玉が夜空に輝いた。


『キサラギ」がプラズマ弾に艦体を串刺しの如く貫かれ、轟沈。『サツキ』も機関部を一撃で撃ち抜かれ四散した。


 迫る敵アンバル級。一隻も逃さないとばかりに追いすがるは、さながら漆黒の死神だ。


『敵艦、発砲!』


 すっと、『キアルヴァル』を遮るようにコルベットが機動し、光弾がその艦に吸い込まれた。


『「ヤヨイ」沈没!』

「盾になりやがった!」


 ベルさんが呻く。これで残るは『キアルヴァル』とコルベット『ムツキ』のみ。

 エスメラルダが振り返った。


「閣下、二航戦から航空隊が接近。さらに艦隊旗艦が、ポータルより出現!」


 艦隊旗艦――巡洋戦艦『ディアマンテ』が、帝国本国の空へと現れた。



  ・  ・  ・



 巡洋戦艦『ディアマンテ』艦橋。

 旗艦コア、ディアマンテは、シャドウ・フリートの残存艦を確認し、旗艦『キアルヴァル』が残存していたことに安堵した。……機械なのに安堵した。この一種不思議な感覚を、しかし彼女が意識することはなかった。


 駆けつけはしたが、まだ戦場ではない。到着寸前に、一歩及ばずという可能性もあるのだ。

『ディアマンテ』のセンサーが、敵艦を捉える。ウィリディスの識別コードには反応しないが、テラ・フィデリティアの敵味方識別装置は生きていて、かつ当時の識別コードで情報を読み取る


 ――アンバル第66番艦。所属、第二艦隊……。


 かつて自分の艦隊に所属し、アンバンサーと戦った友軍艦。それが敵国によって甦り、使われているとは。


 人間であれば、運命の皮肉を呪ったり、あるいは笑ったかもしれない。だがディアマンテは合理的に次の行動を選択した。


「発、第二艦隊旗艦。従属回路(スレーブサーキット)、発動!」


 彼女こそ、テラ・フィデリティア第二艦隊を統べる旗艦。その艦隊に所属した艦艇は、全て従属するのだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ディアマンテ(指令艦)の存在が露見しましたね 発掘艦だと上位命令で敵に奪われるってことを 大帝国側に知られたかどうか(情報封鎖できているかな)
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