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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第723話、馬東との対面


 馬東を発見。アーリィーたちが敵異形と交戦、苦戦中――俺のもとにシェイプシフター兵からの通報。


 くそっ。悪態がこぼれ、俺は瞬時に研究フロアへと戻った。スカーを相手にしなければいけなかったとはいえ、よもやアーリィーたちが苦戦しているとは!


 最近のアーリィーは、実に頼もしい。その実力は、近衛たちではまったく歯がたたず、不死身ではないが、リーレに迫るくらいだ。

 つまり、俺たちウィリディス軍の中でもトップ5以内に入る強者だ。脇を固めるサキリスやエリサも能力は高い。スカーを倒せないにしろ、足止めは充分に果たせる彼女たち。だがそれでも苦戦させるような敵とは……。忌々しい!


 と、フロアの先――実験場への通路が塞がっていた。


「おい、ふざけんなよ!」


 アーリィーたちは中で戦っている! なのにその道中が通行止めとか洒落にもならない!



  ・  ・  ・



「いやはや、シュメルツ相手にここまで奮戦してくれるとは、あなた方はぜひ研究素材として欲しいですね」


 実験場に響くように、馬東サイエンの声が木霊した。


「シュメルツは、スカーの研究データを元に、その再生能力を人体に取り入れて作ったんですよ。これまでの異形研究で培った技術も投入した、現時点での最高傑作、それが彼なのです」


 アーリィーのディフェンダーブレードが、シュメルツの棍棒に耐えられず弾き飛ばされた。そのまま畳み掛ける一撃が、アーリィーの腹部に命中、彼女の身体を地面に倒した。


 ――ジンの防御魔法具がなければやられていた!


 アーリィーは地面に転がりながら思った。起き上がらなきゃ――そう思っても、身体が重い。防御魔法具があってこのザマだ。疲労の度合いが大きすぎる。相手のハイペースに無理矢理付き合わされて、息切れしているような感じだ。


 サキリスはすでに意識を失い、エリサも壁に寄りかかり動くことができない状態だった。SS兵も片付けられてしまい、今動けるのはアーリィーだけだった。


「……ふむ、普通なら死んでいてもおかしくないのですがねぇ。何か仕掛けがあるのか。いいですねぇ、少し興味がわいてきました」


 馬東は薄く笑った。


「シュメルツ。その娘たちは殺さず生け捕りにします。一通り調べたら……」


 シュメルツがアーリィーの元へ足を向けたその時、塞がっていた実験場入り口が吹き飛んだ。

 馬東サイエンは目を凝らす。現れたのは漆黒のフルフェイス型兜で顔を隠し、魔術師風のマントをまとった男。


「シュメルツ」


 馬東の声に反応し、シュメルツは棍棒を手に、新手へと突進した。



  ・  ・  ・



 俺の元に駆けてくるのは灰色の肌の屈強なる戦士。亜人か、はたまたキメラウェポンか。


 まあ、どうでもいい。


 視界の中で、倒れているアーリィーやサキリスの姿が見えてしまったからな。機関車の如く突進してくる戦士。目はギラつき、歯を剥き出す姿はさながら肉食の獣。その身体を魔力の腕で包み、放り投げる!


 グンっ、と戦士の巨体が弾かれたように天井へと跳ね飛んだ。そのまま天井に叩きつけてやるつもりだったが、その前に戦士の身体は落下をはじめ、地面に着地した。


 魔力で押し切れなかった。なるほど、そこそこ魔力に対する耐性があるようだな。俺は、右手を相手に向けて、ライトニングを撃ち込む。

 戦士は棍棒を振るい、電撃弾を弾いた。……ほう、銃弾に近い弾速の魔法を迎撃できるのか。


 再びこちらへ向かってくる戦士にライトニングを連射。戦士もまた棍棒を振り回し、魔弾を避けながら、距離を縮めようとする。……棍棒が邪魔だな。


 グラビティアップ。重力増大――向かってくる戦士の身体に重量負荷一〇倍。その足が止まりかけるが、しかし前進はやめない。亀のように遅いが、一歩ずつ踏み出してくる。


「氷極」


 戦士の周囲の気温が急激に低下。足の先からバリバリと凍り付き、やがてその身体を飲み込むように氷が全身を覆っていく。数秒と絶たず、氷の塊に戦士は包まれ動けなくなる。


「……なんとまあ」


 声が降りかかる。客席で見物決め込んでいるのは五十代ほどの魔術師――馬東サイエンか。


「シュメルツをあっという間に凍らせてしまうとは……いやはや恐ろしい魔術師だ」

「貴様が馬東サイエンだな」

「はい、私が馬東サイエンです。……私をご存じのあなたは、どちらさまでしょうか?」

「大帝国が反乱者と呼んでいる者のリーダー、とだけ名乗っておこう」

「お名前は教えていただけない、と」

「貴様が投降し、今後大帝国に手を貸さないというのであれば、教えてやる」

「ほう……、つまりあなたに降伏すれば、私は身の安全が保証されるということでしょうか」


 興味深い、と馬東は顎髭に手を当てた。


「するとあなたは、私の専門をご存じのようだ」

「異世界人で、異形の研究をしている、くらいはな」

「なるほど。かなりの情報通のようだ。……ああ、失礼。何せ帝国内でも、私をただの魔術師だと思っている方が多いものでね」


 すっと、席を立つ馬東。


「あなたに降伏した後、私は何をさせられるのですか? もし、これまで通り異形の研究をさせていただけるなら、鞍替えするのも(やぶさ)かではありません」

「……」


 異形の研究、か。この期に及んで、俺がそんな化け物研究を認めるとでも? ふざけるな、と口にしかけ、ふと俺は思いとどまる。


 異形の研究とは、そもそも何なのか。これまで戦ってきたような化け物を生み出す、それ自体、認めがたいところはある。


 が、たとえばキメラウェポンの被害者から、他生物の要素を分離できるようなことがあれば、話が変わってくる。

 そう、俺は異形が何なのか知らない。俺が見ているものは、真実の一面に過ぎず、別の見方によっては考え方も変わる。


 ああ、そうか。俺が思いとどまった理由がわかった。こいつは、俺と同類なのかもしれないと。


 平和のため、安穏とした生活のために、敵を倒す。そのための兵器を作りまくっている俺。機械か、異形か――どちらも戦いに使っている点、それを生み出してる点で、俺と馬東に違いはない。


 正直、アーリィーや仲間たちが傷つけられたことは腹立たしくてしょうがない。だが同時に、戦争の中であるという冷めた認識もあって、それはお互い様だ、という思いもある。……繰り返すが、本当はぶん殴るか倒してしまいたい!


「……あなたの研究が、どのようなものか俺はすべてを把握していない」


 静かに俺は告げた。


「認められないこともあるだろうし、逆に認められることもあるかもしれない。現状、解答はできない」

「……素晴らしい。お若いのに、あなたは理性的だ。味方を傷つけられて、まして戦闘の中にあって、それだけ理性を保っていられるのは敬意を表します」


 馬東は、自身の胸に手を当てた。


「ですが、研究を無条件で認めてもらえる保証がないのであれば、大帝国にいたほうが自由でやらせてもらえますね――」

「では――」


 俺は、馬東の足元に攻撃魔法を送り込んだ。


「交渉決裂かな?」

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