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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第696話、拠点増強


 ギガントホルン山脈、トキトモ領側にあるズィート山、ヴェダ山に挟まれた部分は、比較的部隊の移動が可能な道が存在した。……もちろん、ここでいう道は、別に舗装されているわけではない。


 そのひとつ北にあるヴェール山付近が山を越えないと抜けられない以上、こちらのルートに入ったら、トキトモ領東へと出るしかない。

 ある程度の規模の軍勢が通れる道となると、ズィートとヴェダの間しかなく、他は細々とした山岳ルートを抜けるとなる。ぶっちゃけ、それらは擬装した機関銃陣地をひとつ置けば、それで通行止めにできそうなくらいだ。


「と、いうわけで、我の出番だな!」


 ディーシーが、俺の傍らで堂々の仁王立ち。ダンジョンコアの擬人化美少女形態の彼女は、本業ともいうべき地下ダンジョン開拓に心弾ませているようだった。

 戦闘では出番は少ないが、艦艇改装や拠点製作と、ディーシーはここ最近、大活躍だと思う。


 いつものテリトリー化からの内部改変。空洞を作り、補強。進撃ルートになりうる地点周辺を砲撃できるよう山頂に近い高台に砲台を設置する。


 砲は実弾を撃ち出す88ミリ砲と、対空中艦迎撃にも使用できるプラズマカノン砲を混成で配置。敵地上軍への攻撃をメインにしつつも、対空戦も可能なようにしておく。


 さらに地下基地として司令部、兵員待機所、魔力発電施設、プラズマカノン用ジェネレーター、野砲用の弾薬庫、さらに地上部隊、航空隊用の格納庫や運用設備も備える。地下施設なので空調管理はより慎重かつ厳重に。


 これをズィート山、ヴェダ山双方に行う。山の形に沿って掘り進めるので、地下施設の構造はそれぞれ異なる。

 何故、片方の山ではなく両方に拠点を作るのかと言えば、相互に支援ができるような体制にするためだ。相互支援により、敵が片方の死角をついて攻撃しにくくなる効果を見込む。

 また、敵の予想進路上に十字砲火を浴びせて大きな被害を与えることが可能になる。一方向からの攻撃なら防ぐことができても、同時に二方向から攻撃されれば為す術がない。


 必要に応じて、地上部隊――シェイプシフター歩兵やパワードスーツ部隊による反撃、機動戦闘を行い、拠点をカバー。航空機部隊による迎撃も可能な万能拠点である。


 特に航空隊の存在は、敵地上軍がこなかったとしても、周辺の制空権確保や偵察などに役立つ。それもこれも、ウィリディスの航空機が滑走路を必要としていないおかげで配備できるんだけどね。


「……さすがに手慣れてきたなぁ」


 設計図を元に、拠点作成をしていた俺の呟きにディーシーは反応した。


「主よ、最近はこの手の作業が増えていたからな。ノルテ海……フルーフ島だったかな? あそこの地下もやったのだ。そりゃ慣れるものさ」


 フフン、と鼻が高いディーシーさん。広々とした格納庫。洞窟じみた外壁と金属の壁の両立という空間だが、ディーシーが機械も扱えるようになったので、ひとりで双方こなせるのは頼もしい。

 キャスリング基地、フルーフ島地下軍港……要領はよくなっているのは間違いない。


 山の中腹に作った航空機用の発進ゲートの開閉を確認。ポイニクス輸送機のような大型機は無理だが、トロヴァオンやゴーストといった比較的サイズの大きめの航空機でも楽々離発着が可能な高さがある。


「主、この要塞の名前は決まっているのか?」

「うーん……。そのままでよくないかな。ズィート要塞、ヴェダ要塞。ふたつまとめて言う時は、ズィートヴェダ要塞」

「そのままだな」

「他に案があれば聞くぞ?」

「いいや。わかりやすくていい」


 ディーシーは、自身の黒髪をかき上げ、薄く笑った。


 最後にズィート、ヴェダの双方を繋ぐ地下トンネルを三本作り、後はアグアマリナ型人工コアの下位コピーコアに要塞を管理させる。同格コアは希少なので、節約できるところは節約だ。守備隊として、SS兵やゴーレムコア搭載の各種自動砲台に任せる。

 一応、人間用の宿舎や居住区もあるので、人や亜人らの軍が駐留することになっても生活できるようになっている。


「とはいえ、その人の部分で、ウィリディス軍は人材不足だな」


 普通は拠点には指揮官を置く。この世界だと上級の騎士とか貴族だったりする。コアに任せるというのは、人材不足の最たるものだ。俺の呟きに、ディーシーは皮肉げに口元を笑みに歪めた。


「いいではないか。コアやシェイプシフターどもはお利口さんだぞ」

「君と違って素直ってか?」

「我は、主には素直だぞ? それにこやつらは素直ではない、従順と言うのだ」


 そう言うと、ディーシーは俺に腕を絡ませ抱きついてきた。美少女が恋人チックに抱きついてくるのは嬉しいものだが、その正体がダンジョンコアとは……見えないよな。


「そうかい? 人件費とか、面倒な対人関係が存在しない点は助かっているよ」


 では気を取り直して、次に行こう。

 とりあえず東の守りに目処がついた。後は北と南の砦だな。さっさと終わらせよう。



  ・  ・  ・



 TF-3トロヴァオンのコクピットに乗り、戦闘機の操縦。操縦桿を握り、俺は空からトキトモ領を見下ろす。

 たまには乗らないといざ必要になった時に困る。本当は、もうちょっと飛行時間を伸ばしたい。とはいえ、俺が実際に戦闘機を操って戦う機会は、あまりないだろうな、と思う。学生の頃は、ゲームで毎日飛ばしていた頃を思い出して、ちょっぴり寂寥(せきりょう)感。


 まずは領内、北の砦へ向かう。お隣のフレッサー領側を見張る位置に存在するこぢんまりとした拠点だ。昔は何度か武力衝突もあったらしいが、今ではお隣から流入してくる賊とか不法侵入者、魔獣などの監視が主な役目となっていた。


 サキリス曰く、以前は騎兵部隊を置き、砦周辺の広大な高原をパトロールしていた。いざ敵性の集団が侵入すれば、砦から騎兵を出して襲撃したとも。

 アンバンサー戦役で無人になったが、トキトモ領になってからは、最低限の修理の後、浮遊バイク――バイカースカウト部隊が、騎兵の代わりとして活動していた。


「前も思っていたけど、ここ街道から外れているんだよなぁ……」


 高原地帯にポツンと立っている砦である。かつては近くに集落もあったらしいが、いまじゃそっちは廃墟。街道の位置が変わったせいで、場違い感が半端ない。

 しかし、遠くに見える草原は見晴らしがよくて、牧畜に向いてそうではある。……春の草花が咲いている一角があって、何だかピクニックしたくなってきた。


「あまり景観を崩したくないな……」


 適当な場所にトロヴァオンを降ろし、あらためて景色を眺めて、つくづく思う。せいぜい古城までは許せても、現代的な軍事基地はあまり置きたくないという心境。後部座席に乗っていたディーシーが身を乗り出した。


「では、地下か? 地下に作るのか!?」

「君、やたら地下って楽しそうに言うのな」


 外側にもう一枚城壁を築いて、収容できる兵員や兵器の数を増やすか。街道から外れているから、進撃してくる敵の側面を強襲する遊撃部隊の拠点として存在する形か。

 あとは格納式の砲と銃座を設置して、攻めてくる敵を迎撃できるようにする。高原地帯を敵が突っ切ってくる可能性もあるからな。


 ただ、ここより中央寄りには、キャスリング基地もあるわけで、航空戦力の増援も見込めるから、北の砦の拡張は小規模で済むだろう。


「では、ディーシー。城壁作りといこう」


 数ヶ月単位の大工事も、早々に終わってしまうのがダンジョンコア工法の利点。引き換えの魔力さえあればね。

※今後、登場する鹵獲コルベット、ゴーレムエスコートに、日本の気象名(時雨とか浜風とか朝霜とか)をつける予定です。

そこでご相談ですが、旧海軍で実際に使われた気象名を使うか、あるいは予定されていたけど使われなかった名前を使うかで、作者(私)が迷っております。

どちらがよいか、皆様にご相談したく、ご意見をいただけますと幸いです(同様の相談を、本日の活動報告『ちょっと相談 ほか英雄魔術師696話、更新』でもやっております)


※受け付け終了しました。貴重なご意見ありがとうございました!

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