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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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685/1943

第682話、東方戦線


 四の月の九日に始まった、大帝国による連合国侵攻。


 この五日間で、大帝国軍は連合国の国境線を突破し、その勢力地を広げつつあった。

 ニーヴァランカ、ウーラムゴリサ、ネーヴォアドリス三国の首都や王都を目指して、各地の要衝を力で潰して進軍をしていた。


 ウィリディスから送り込んだSS諜報員や偵察機からの報告で、大体の戦況は、俺たちのもとに伝わっている。

 というわけで、俺はディアマンテと、アリエス浮遊島の作戦室で連合国に展開する大帝国軍への攻撃計画を練る。


「大帝国軍は連戦連勝。まさに向かうところ敵なしだ」


 空中艦隊や、戦車、ゴーレム、甲鎧など、連合国にはない兵器を前面に押し立てた『力』による進撃。

 連中は、まるでRPGで、道順どおりに各地に立ち寄り、ボスを目指すような戦い方をしていた。


「守りの固い拠点を迂回して、首都を陥落させるとかしていたら、とっくにケリがついていたんじゃないかな」

「電撃戦ですね」


 ディアマンテは言った。テラ・フィディリティアにも電撃戦という概念はあるようだ。


 戦線の一点を突破し、機動力を以って迅速にその戦区の司令部ほか重要拠点へ攻め込み撃破。頭を失ったその戦区の敵は、孤立の上、戦意を喪失、無力化する。


 乱暴なまとめ方をすれば、電撃戦とは、雑魚には目もくれず、素早く相手のボスのもとに行き、やっつける戦術である。

 だが帝国軍は、電撃戦をすることなく、地道に歩を進めている。


「じっくりと連合国の拠点を潰して、その強大さを見せつけているのでしょうか?」

「もったいぶった戦い方……いや堅実に足場を固めながら進んでいるというべきかな」

「何故、彼らはそのような戦い方を?」

「どうしてだろうな。あ、いや――」


 言いかけて止めた俺に、銀髪の女軍人姿の旗艦コアは首をかしげた。


「何か?」

「もしかしたら、後方や側面からの奇襲や、少数の遊撃隊の攻撃を防ごうと思っているのかも、と思ってね」


 俺が連合国にいた頃、そんな遊撃部隊を率いて、神出鬼没の戦いをやっていたからな……。あちらさんも、その時の(てつ)を踏まないようにしているかもしれない。


「何にせよ、連合国が完全降伏するまでに猶予があるのは、こちらとしてはありがたい。その戦力が全部潰される前に、早々に敵を叩くぞ」


 戦況と主要な敵部隊の位置を確認して、攻撃目標を選定。作戦を考えていたら、呼んでもいないのにいつの間にか主な面々が集まってきた。


 なので、おやつを摘まみながらの話し合い会のようになってしまった。サキリスやシェイプシフターメイドがお茶を煎れてくれる中、俺は言った。


「まず、第一にやることは敵軍の戦力を減らすことだ」


 帝国軍の進撃速度を落とす。


「敵地となった場所を解放するとか、地上戦を展開する必要はない。敵空中艦、車両、兵器を重点的に叩き、連合国軍より優位な点を削る。……悪いな、マッド、AS部隊の出番はもう少し先だ」


 アーマードソルジャー部隊を率いるマッドが、気にするなと小さく手を振った。トロヴァオン中隊のマルカスが口を開いた。


「航空隊の出番ですね」

「そうだ。……だが、残念ながらトロヴァオンは使えないぞ。参加したければ、赤の艦隊用に改造したドラケンに乗ってくれ」


 ヴェリラルド王国が関与していると思われたくないからね。ドラケンやファルケについては、廉価版を傭兵用という触れ込みで表に出す予定である。なお、売るとは言っていない。

 アルトゥル君が手元の資料をめくる。


「今のところ、連合国戦線向けの航空機は、ドラケンの他はTF-1ファルケ、TF-5ストームダガー、TA-2タロン、TH-2イールの五機種ですね」

「質問」


 緑髪の魔女さんことエリサが、ダークエルフのラスィアと何やら話し込んでいたのを中断して俺を見た。


「あたしは、戦闘機のことは素人だけど、たしか、ストームダガーってシャドウ・フリートでも使っていたわよね? いいの? 赤の艦隊でも使って」

「いいよ。要はウィリディスと関係ないように見せればいいわけだから、影と赤で装備が同じものがあっても」


 ぶっちゃけ、軽空母とかコルベットとか、大帝国のもので共通しているし。ラスィアがエリサに言った。


「むしろ、影と赤に結びつきがある、と思われたほうがいいのよ。王国のアリバイ作りのためにもね」

「アリバイ?」

「いくら、ヴェリラルド王国が関係ないように振る舞っても、航空艦や戦闘機を保有している国なんて限られる。私たちが、反乱勢力を後ろで支援しているって、帝国は疑うわ」


 そう、それが問題だ。

 王からせしめたワインを手に、ベルさんが口を開いた。


「だから、架空の人物をでっち上げて、連中の目を引きつけようってこったな。航空機を開発した天才武器商人――こいつが帝国への反抗勢力に、武器をばらまく」

「それがアリバイ?」


 エリサが再度、俺を見たので頷く。


「ああ、ジョン・バニッシュ・クロワドゥって人物をでっち上げるつもりだ。こいつが世界に戦闘機や戦車をばらまき、実はヴェリラルド王国の兵器も、彼から買ったという情報を流す」


 ヴェリラルド王国への疑いを逸らすアリバイである。ウィリディスやヴェリラルド王国の兵器も、クロワドゥから購入したのだから、ドラケンやファルケが連合国で飛んでも問題はあるまい。シャドウ・フリートと赤の艦隊の両方でストームダガーが存在してもね。

 マッドが首をかしげた。


「その、クロワドゥなる人物は何者だ? 架空の人物って話だが、誰かモデルがいるのか?」

「いや、完全にオリジナル」


 正直、俺の身代わりに追われる存在になるなら何でもいいのだ。


 始まったばかりで戦後の話をするのも何だが、戦闘機や戦車などの兵器は、この大陸中の人間が目の当たりにすることになる。大帝国が勝利して大陸を制覇すれば別だが、そうでなければ戦後の軍事開発は、そうした機械兵器にシフトする。


 そうなると、だ。兵器の開発者は各国から狙われることになる。自分の国で兵器を作りたいから、どんな手を使ってでも手に入れようとするし、手に入らないのであれば抹殺しようとするだろう。


 その時、兵器開発者として俺が注目されると、のんびり生活はますます遠のく。架空の人物でも何でもでっち上げて、保険を作っておかねば、俺だけでなく、アーリィーや未来の家族、友人たちも危ない。


「まあ、それはそれとして、今は連合国戦線の話に戻ろう」


 俺は本題を進める。


「まずは、敵空中艦隊を叩く。現在、大帝国の主な空中艦隊は、本国艦隊を除けば、ほぼ東方戦線にいる。最初にこいつらを叩くわけだが、何か特別な方法を考えない限り、ディアマンテやアンバルなどのテラ・フィディリティア艦は使えない」


 ――え……?

 周囲が一瞬、静かになった。マルカスは確かめるように言った。


「つまり、軽空母2隻の航空隊とわずかな艦艇だけで、帝国の主力艦隊を叩け、と……?」

「然り!」


 俺がニヤリとすると、ベルさんも相好を崩した。


「たかだが四、五十機の航空機で、二百数十隻を超える帝国艦を始末していくわけだ。……どうだ、面白いだろ?」

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