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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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674/1885

第671話、シャドウ・フリート、戦闘開始


 今回の攻撃目標は、魔法軍特殊開発団ベアル研究所。


 大帝国本国の北東部、北海にほど近い山間部にある古城とその地下に施設がある。

 ここは、キメラウェポン計画――人と他の生物を掛け合わせる研究を行っている施設のひとつ。


 なお、ウィリディスの一員で、元大帝国貴族令嬢のエリサが、キメラウェポンの犠牲になった際の研究所ではない。そちらの施設は、数年前に起きた事故ですでに閉鎖されている。


 ともあれ、大帝国の悪魔の研究所は、見つけ出し次第、破壊しなくてはならない。スール研究所のようなことはご免である。


「敵さんも、シャドウ・フリートを警戒している」


 俺はアリエス浮遊島のブリーフィングルームで、攻撃参加の面々を見渡した。


「研究所を攻撃すれば、近辺を警戒中の敵哨戒部隊がやってくる。……まあ、こいつらのおかげで、施設の場所が掴めたんだけど」


 SS諜報部の報告を口にすれば、聞いていた一同から、さざ波のような笑いが起きた。


「というわけで、シャドウ・フリートは地上の古城と、哨戒部隊を叩いて周囲の注意を引いている間に、施設攻略部隊が地下施設に突入」


 ディアマンテが、部屋の中央にホログラフで、研究施設を表示する。青い光のマップが空中に現れ、皆の視線が集まる。


「敵がこれ以上、キメラウェポンの研究ができないように、施設を徹底的に破壊する。……エリサ」


 挙手した緑髪の魔女に、発言を許可する。


「施設で研究材料にされている被検体はどうしますか?」


 難しい質問がきた。皆の目が俺に集まる。


「抵抗する場合は排除。敵対の意思が見られない場合は保護――それでいいかな?」

「結構です」


 エリサは頷いた。彼女自身、サキュバスと合成された身だ。実験材料にされたから、と言うだけで問答無用で殺す、というわけにもいかないと俺は思っている。そうでなければ、彼女も、とっくに王国によって処刑されていただろう。


「施設を制圧後、魔法軍関連の資料を回収――これは他の施設に関する情報がないかの確認だ。保護した被検者がいれば連れ出した後、施設を爆破して、我々は撤収する」


 一通り説明が済んだら、恒例の質問タイム。……特になし? さすがに研究所襲撃は、通算五回目だから、こなれてきたんだろう。くれぐれも油断はしないでくれよ。


 というわけで、参加戦力。

 シャドウ・フリートは旗艦『キアルヴァル』に、Ⅱ型クルーザー改1、コルベット改3、改装軽空母2。


 クルーザーとコルベットは、地上爆撃用の爆弾倉回りを、アーマードソルジャーないし甲鎧用の格納庫に改装しているので、4隻で20機を運ぶことができる。


 空母の艦載機はTF-4ゴースト12機、新型の小型戦闘機TF-5が16機である。


 施設の突入兵力は、シャドウ・フリート仕様のシェイプシフター兵を主力に、俺、ベルさん、アーリィー、サキリス、マルカス、ユナ、エリサ、オリビア近衛隊長と近衛兵数名。そしてリアナが率いるリーパー中隊の特務小隊がパワードスーツと共に加わる。


 なお、ラスィアは『キアルヴァル』艦上にて、俺たち突入部隊のサポート。マッドハンターは、AS部隊の指揮を執る。


 かくて、俺たち施設突入部隊はポータルを使って、大帝国本国上空を遊弋しているシャドウ・フリートへ飛んだ。



  ・  ・  ・



 シャドウ・フリート旗艦『キアルヴァル』に行けば、シップコア『エスメラルダ』が姿勢を正し、俺に敬礼した。


 アグアマリナ型シップコアのコピーをもとに、ディアマンテが『本来のエスメラルダ・コア』の機能を加えて制作したものである。

 なお、本来の、と言われるものの、具体的に何が違うのかと聞いたら、アンバル型の上位で、アグアマリナ型より艦の運用能力に向いているのだそうだ。例えるなら、陸軍と海軍くらい違うらしい。よくわからないが、かなり違うだろうことは察した。


 緑髪の短髪、怜悧な女性軍人のシップコアは、ウィリディス軍服とは異なるシャドウ・フリート用の黒の軍服姿である。


「閣下、シャドウ・フリート全艦艇、異常なし。いつでも作戦行動が可能です」

「結構」


 艦橋の内部は、ディーシーが再生した時より、さらにアンバル級の艦橋に似た内装に作り替えられていた。

 窓から外を見れば、あいにくの曇り空。大帝国北部に面する北海は4の月半ばであっても寒々しくあった。まだ若干の積雪が残っていて、大地が白く見える。


「それでは作戦を開始しよう」

「ハッ。……旗艦より発令。各艦、戦闘態勢。従属回路(スレーブサーキット)接続」


 艦に接続されているコアのほうのエスメラルダが淡く輝く。所属艦艇、全艦のコントロールが旗艦である彼女に収束する。数名のシェイプシフタークルーを除けば、シャドウ・フリート艦艇は、コア制御の無人艦なのだ。


「全艦艇、接続を確認。空母『アヴェンジャー』、対艦・対空兵装にて艦載機発艦。同空母『デバステーター』、対地攻撃装備にて艦載機を発艦」


 エスメラルダの命令が伝えられた2隻の改装軽空母から、搭載する航空機が発進する。


 空母アヴェンジャーは、新型小型戦闘機TF-5ストームダガーが、格納庫の両側面のサイドゲートから浮遊発艦を行う。


 TF-1ファルケに似たクナイの刃型の機体は、格納庫を飛び出した後、機首から水平方向に部位が展開し、翼を形作る。収納されていた二門のプラズマ砲がその銃口を覗かせ戦闘形態となる。


 一方の空母デバステーターは、TF-4ゴースト戦闘攻撃機を出撃させる。機首のプラズマ砲も含めるとトロヴァオンより大きな機体となるゴーストは、格納庫だけでなく、発着甲板に積むことで何とか12機を搭載、運用が可能となっていた。


 それら艦載機隊が、シャドウ・フリートの前方に展開すると、ベアル研究所のある古城へと一直線に向かっていった。


「では、閣下」


 エスメラルダが振り返る。


「航空隊が地上を掃射します。あとのことはお任せを」

「わかった。揚陸艇に行く。――ラスィア、艦からのサポートを任せるぞ」

「承知しました」


 ダークエルフの副官と、エスメラルダ・コアに後を託して、俺は突入部隊のほうへ。キアルヴァルの艦内に新たに作られた格納庫には、飛行揚陸艇が積まれているのだ。


 さて、この飛行揚陸艇は、大帝国製だがかなりのレアものだったりする。浮遊石を搭載し、艦隊司令官が地上や他の艦艇へ移動したり、艦隊を巡視したりする際に用いられる。実質、連絡艇だが、ウィリディス側で、エンジンをレシプロ機関から航空機用の魔力ジェットに交換。装甲と、魔法障壁によるさらなる防御性能を強化した。


 格納庫に着くと、揚陸艇の周りにはアーリィーやベルさんら仲間たちが揃っていた。全員がシャドウ・フリートの黒のライトスーツやアーマーをまとっている。さすがにウィリディス軍の格好で乗り込めないからな。


 リアナとパワードスーツ部隊も準備を整えているが、全部は揚陸艇に載せられない。SSパイロットが揚陸艇を地上に降ろした後、艇内に設置したポータルを使って、俺たちが現地に乗り込むというやつだ。

 いくら装甲を強化しているとはいえ、降下中に何らかの攻撃を受けて全滅とか、シャレにならないからな。叩ける石橋は叩く主義だ。

リヴェンジ級改装軽空母:

全長:140メートル

機関:インフィニーエンジンMk-18、同Mk-22

武装:5インチ連装プラズマカノン×2

   4インチ連装広角光線砲×18

艦載機:格納庫18機~24機(+駐機甲板約20機)


 大帝国標準型輸送艦を、ウィリディス工廠にて改装した軽空母。輸送区画を艦載機格納庫に改装。エンジンを帝国製レシプロ機関から、テラ・フィディリティア製インフィニーエンジンに換装し、速力、航続力が向上している。

 現在ウィリディス艦隊では、同改装軽空母を4隻保有する。


同型艦:『アヴェンジャー』『デバステーター』『マローダー』


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