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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第669話、廃品回収とその使い道


 ジャルジーら王国軍の陣地から離れた俺は、そこで追撃部隊のベルさんからの魔力通信による報告を受けた。


『帝国野郎で、シェーヴィルまで逃げられたのは、ほとんどいないよ』


 投降した者を除けば、そのほとんどが戦死したと言う。航空隊の地上掃討、部隊として集結した連中には、航空から『ディアマンテ』、『アンバル』などが艦砲射撃を加え、まとめて吹き飛ばした。

 天から降り注ぐ神の光、などと言っている王国兵がいたとかどうとか。


「ベルさん、ご苦労様。部隊は引き上げてくれ。ゆっくり休んで」

『おうよ。うまい酒が飲みたいな』

「準備させるよ」


 ベルさんとの魔力通信を切り、次にアーリィーへ通信。航空隊の帰投と、母港であるアリエス浮遊島へ艦隊を戻すように指示を出す。


『ジンは? 一緒に戻らないの?』

「その前に、ひとつ用件を済ませておきたい。なに、夕食の時間までには戻るよ」

『了解。待ってるよ、ジン。それと、お疲れ様』

「ありがとう」


 彼女の労いが心地よい。さて、俺も用件を済ませておこう。


 ウィリディス軍各隊に撤収準備を命じる一方、俺は浮遊バイク(ウルペース)で移動。ディーシーがついてきた他、護衛と称してサキリスとラスィアがASで随伴した。

 もう気軽に一人では出歩けないな。俺に何かあったら、ウィリディス軍も王国も困るだろうから。


 行った先は、昨夜のズィーゲン航空戦で地上に落着した帝国艦艇のもとだ。

 空から落ちてきた空中艦の成れの果て。十数メートルから百メートルをも超える船体やその残骸が、一定の範囲内に密集している。


 おそらく後から不時着を余儀なくされた艦が、極力、味方艦のそばに降りようと集まったのだろう。もっともコントロールできずに地面に突き刺さってしまった艦や、明後日の方向に墜落している艦もある。


 付近には、シェイプシフター兵の部隊が展開していて、警戒していた。

 フェルス浮遊輸送車のほか、魔法装甲車(デゼルト)が、横たわる敵艦のそばにあるのが見え、俺は浮遊バイクをそちらに向けた。


「あ、閣下! こちらです!」


 こちらに気づいて、手を振る人の姿。アルトゥル・クレニエール子爵――俺のもとに修行にきたクレニエール侯爵家の跡取り少年だ。


「どうだい、状況は?」

「はい、シェイプシフター兵が抵抗する帝国兵を一掃しました。投降した捕虜は、すでに移送済みです」


 はきはきと、エクリーンさんに似た美形の少年は答える。


「不時着した艦艇と認められる残骸は十九隻。ざっと見たところ、比較的原型を留めているクルーザークラスが三隻、コルベットが五、六隻でしょうか。もちろんエンジンや浮遊石に異常があって、修理や換装をしないといけませんが」


 ここ一ヶ月、ノイ・アーベントの管理補佐や、浮遊島やキャスリング基地で俺の雑務を手伝ったりしてくれているアルトゥル君。非常に真面目な少年で、字が書け、算術ができる賢さがあるので、俺をよく補佐してくれている。


「残りは、船体が真っ二つだったり、落下の衝撃で潰れたりで、再生させようとするとかなりの魔力資材を消費すると思われます」

「そのあたりは破棄するもののほうが多そうだね。船体が真っ二つと言ったが、艦首を含めた前部で比較的綺麗なやつはある?」

「はい。……四、五隻ぶんはあるようです」


 残骸のリストを作ったのだろう、アルトゥル君が確認しながら言った。


「でも浮遊石とかない部分なんて、何に使うんです?」

「なに、補給艦を鹵獲しただろ? あれを空母に改装しようと思っているんだが、もう少し船体を伸ばして、艦の容量を増やしたいんだよ」

「あ、なるほど。アウローラ改ですね」


 アルトゥル君は、それに気づいた。

 ウィリディスのオリジナル空母『アウローラ』は、艦艇として小さく、またエンジンもテラ・フィディリティア式に劣る低速艦だった。ディアマンテなどは「輸送艦にしよう」などと提案し、一線の戦力から除外しようとした。


 が、ここで俺は、アウローラを大改装した。どうせエンジンを換装しないといけないのなら、と帝国から拿捕して空母に改装する輸送艦と船体を繋ぎ合わせてやったのだ。


 結果、アウローラは元より百メートルほど船体が長くなり、繋げた輸送艦のエンジンをインフィニーエンジンに換装したことで、高速力を獲得。艦載機数も倍増と、大幅な強化がなされた。


 この別の艦の船体を繋ぎ合わせるというやり方は、『グラナテ』と名付けたアンバル級巡洋艦の再生や、『ペガサス』のように輸送船と軽巡をくっつけたことですでにやっている。


 帝国輸送艦を改装で空母にしても、もとの艦は全長が一二〇メートルしかないので、艦載機用の格納庫のスペースも限られる。実際、TF-4ゴーストなどは、格納庫に詰め込んでも最大九機ほどしか積めない。

 ポータル運用で艦載機数は誤魔化せるのだが、やはり自力で運用できるほうがいい。


 それならば艦の長さを延長して運用に必要な設備を置きつつ、格納庫を大きくして艦載機搭載可能数を増やす。アウローラは、そのテストとして実によく役立ってくれた。


「使えそうな艦首が四か五つか……」

「うまく繋げるようなら、アウローラクラスの中型空母が増えることになりますね」


 そこでアルトゥル君が首をかしげた。


「そんなに空母、必要ですか? いや、今回の大会戦で航空隊が活躍した話は聞きましたけど……」

「大帝国本国近辺にひとつ、連合国にひとつか二つ、艦隊を展開させようと思ったら必要だよ」


 これらはシップコアやコピーコアの無人艦隊ではあるけどね。連合国だって、情報では三つの国で大帝国の侵攻を受けている。そこで戦うなら、それなりの数は必要になるだろう。


「空母もですが、艦載機の数も必要ですね」

「まあね。そこはTF-5、TA-2、TH-2などを揃えて何とかするさ」

「新型の小型艦載機シリーズですね」


 皮肉げに口もとに笑みを浮かべるアルトゥル君に、俺も苦笑を返す。


「箱が小さいなら飛行機も小さくすればいい。……まあ空母艦載機につきまとう問題ではあるけどね」


 ただ、ウィリディス機はレプリカも含めて浮遊石による浮遊離発着ができるから、滑走路の長さを気にしなくていいというのは幸いだけど。


 鹵獲艦改装の軽空母の格納庫が狭いから、艦載機も小さくしてしまえ。先ほどTF-4が一桁しか格納庫に収まらないと言ったが、これが小型戦闘機であるTF-1ファルケと同じサイズになると、24から30機ほども積めたりする。

 もちろん、機体が小さいと、性能面で妥協が必要な部分も出てくるのだけど。


「空母って、飛行機を載せる船って聞いてましたけど、使うには結構、制限があるんですね」

「艦載機のことだけでこれだからね。突き詰めれば、他にも色々あるんだけど」


 そこはシップコアやシェイプシフター兵様々だ。まともな方法で動かしたら、艦があっても乗組員がとても足りない。


「了解です。昨日の戦いで鹵獲した輸送艦が八隻。それで四、五隻は船体を延長して中型空母にする方向で検討しますが、残りの艦はどうします?」

「いっそ空母じゃなくて、強襲揚陸艦にしようかなって考えている。ほら、俺たち、帝国のカリッグを保有しているから、これもシャドウ・フリートとかで本格的に運用するなら、専用の母艦があったほうがいいと思うんだ」

「確かに。うまく運用できれば、いずれ王国軍のAS輸送艦として使えるでしょうし」


 そういうことだ。ほんと、この子は頭がいいな。


 というわけで、帝国空中艦の残骸を回収。大きいものには浮遊石を外付けして浮上。巨大ポータルを使ってキャスリング基地の工廠へと転移させる。


 そんなわけで人工コア群とダンジョンコアであるディーシーさんには、使える船体の再生と改造。そしてディアマンテには、改装部品の製造をやってもらい、改装作業に移ってもらう。

回収・鹵獲艦の再利用(計画)

・空母(鹵獲輸送艦)5

・揚陸艦(鹵獲輸送艦)3

・クルーザー2(Ⅱ型1、Ⅰ型1)

・コルベット5

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