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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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655/1961

第652話、装甲兵


 水上艦に潜水艦――ノルト・ハーウェンに配備される戦力について検討すべく、キャスリング基地へ行ったら傭兵のマッドハンターが来ていた。

 久しぶり、と俺は彼に声をかける。


「どうしたんだ、今日は?」

「新型ができたと、ガエアから聞いた」


 黒髪の傭兵は淡々と答えた。何が、と思ったがガエアと聞いて、新型パワードスーツのことだと気づく。

 大帝国製のパワードスーツとも言うべきアラムールが、ウィリディスのパワードスーツより一回りサイズが大きいのを受けて、パワー負けしない機体を、と開発を進めていたものだ。


「君の世界じゃ、普通にあったらしいからね。専門家の意見は聞きたいものだ」

「そのことも含めて、あんたに相談があるんだ」


 ほう、相談ね。TPS-02バーバリアンの改造? それとも新型が欲しい、とか? 世界は違えど、同じ異世界人である彼だ。話は聞くぞ。


「大帝国がいよいよ攻めてくると聞いた」

「ああ、予定が早まらなければほぼ来月。確実にな」

「戦争になれば、傭兵は大忙しだ」

「稼ぎ時だな」


 地方領主に兵代わりに雇われるとか、金持ちに護衛として雇われるとか。とかく戦争になれば需要は激増するだろう。

 ただ、戦場に出たとして、近代化されている大帝国が相手では、たぶんあっという間に逃げ出すだろうと思う。彼らは命あっての物種を地で行く連中であり、大帝国の火力を見れば早々に身を引くに違いない。


「そこが問題だ」


 マッドは顔をしかめた。


「他の傭兵連中は当てにできない。ボンクラ領主に雇われるのも己の寿命を縮めるだけだ。だから雇用主を選んでおきたい」


 彼は、俺に向き直った。


「ジン、俺をウィリディス軍に入隊させてくれないか?」

「入隊?」


 つまり、軍に志願する、と? 傭兵として雇うのではなく?


「パワードスーツのメンテができるのは、ここしかない。あんたなら、機動歩兵の使い方がわかっている。どの道、戦場に出ることになるなら、俺を理解し、使いこなせるところで戦いたい」

「……実にもっともらしい話だな」


 リアナに次ぐ軍事顧問として、すでに実績はある彼だ。こちらの技術をいくら知ったところで、異世界人である彼なら都合の悪いこともない。

 熟練の人型兵器操縦者であり、元軍人。その経験と知識は頼りになる。


「わかった。君を我がウィリディス軍に迎えよう」

「感謝する」


 マッドは短く頭を下げた。こちらこそ、志願してくれてありがとう。


「で、早速だが、新型を見せてもらっていいか?」

「……ひょっとして志願の理由って新型が目当て?」

「それもある」


 俺の問いに、マッドは肩をすくめる。


「新型に乗らせてくれるなら、タダでもやるぞ」


 タダ……? 思わず呟けば、彼は「冗談だよ」と笑った。



  ・  ・  ・



 キャスリング基地内工房にて、それは立っていた。


 高さ5.6メートル。ほっそりとした人型。二本の腕、同じく二本の足を持つそれは、パワードスーツをそのまま大きくしたような姿をしている。

 新型機――しかし、期待に反してマッドの表情は険しかった。


「これは……人形か、案山子か?」


 言葉としては辛辣である。たとえ、その気がなかったとしても。

 それもそのはず、その大型パワードスーツ――大帝国のアラムールに近い全高にありながら、胴回りはともかく、手足が人型骨格に最低限の装甲カバーを付けただけのシンプルな印象を与える。

 頭部も真四角の外部カメラカバーが、非常にのっぺりした感じで、全体のシルエットと相まって、人形を連想させた。


「俺はこいつに、ソルジャーと名付けた」


 兵士、を意味する言葉。士官でもなく、ただの前線で戦う兵士である。


「ちなみに、これ素体だからな。前線で戦う時は、ちゃんと外装パーツを装着する」

「素体? 外装?」


 マッドが首を傾げる。俺が『ソルジャー』に手を振ると、その頭部の目に当たる四角いガラス部分が光った。次の瞬間、一歩を踏み出し、ソルジャーは広い工房内を歩き出す。


「オリビア隊長が乗っている。……彼女は知っているな? 近衛隊長の」


 さすがに六メートル近い高さの機体ともなると、これまでのパワードスーツとは歩く速度も全然違う。細いのに、大きさのせいでそれなりに迫力がある。


「このソルジャーはベースなんだよ。そもそも人型兵器って、人と同じように色々な武器を携帯して使えるのが利点だけど、ぶっちゃけさ、その武器を使いこなせるなら、機体は何だっていいと思うわけよ」


 ロボットアニメでよくある試作型とか量産型とか、色々あるけど、その攻撃力の大半って使ってる武器に左右される。もちろん物語の演出上、主人公しか使えない武器とか能力はあるが、そうでない武器はどれを使っても同じというのが俺の持論だ。


 軍艦は大砲を使うためのプラットフォーム。人型兵器もまた、携帯武装を使いこなすプラットフォーム。そう考えるなら、外見の差異はさほど重要ではない。


 まあ、敵対者に与える心理的効果というものは、それなりに考慮すべきではあるのだが。大帝国が人型兵器を使っている理由というのもそれだったりする。

 人型は兵器としてデメリットが多いと言われるが、その見た目だけで敵の戦意を挫けるなら十分にありだ。普通に巨人が現れたらビビるもんだし。


 このソルジャー、その素体は要するに装甲付きのフレームだ。見た目は貧相だが頑丈にできていて、拡張性を持たせている。装備する外装、武器を不足なく扱いこなす性能を持ち、仮に特定の武器を扱うに性能が及ばないことがあれば、装着する外装にその性能を補わせる。


 一方で、手足は部位ごとに即時取り外し、交換ができるように設計してある。昔から創作世界で、足をやられて動けなくなる人型兵器を見て、プラモデルのように交換修理がその場でできたらいいのに、と思っていた口だからだ。


「結局、俺は、プラモデルとブロックの影響から抜けられないんだなぁ……」


 改造工作の技術がなかったから、パーツを組み替えて、色だけ塗り替えたり……。そういう外装の組み替えや、部位交換なんて思想が、このソルジャーという機体に入ってしまうわけだ。


「まあ、それはともかく、外装は見た目も考慮するから案があったら出していいよ」


 大帝国がやっているように、人型の巨人で敵を威圧する、というのは人型兵器の利点のひとつでもあるわけだから。

 俺は、手近な机の上に置かれた、外装装着時の図の参考資料をマッドに見せる。

 ゴーグル状の頭部ガラス、角張った装甲をまとうウィリディス製パワードスーツを思わすシルエット。素体の細さは外装を着込んだ時に、標準型に見えるためだったりする。


「別モノだな、これは」


 マッドはじっと外装図を眺める。


「こっちはウィリディス機らしいが、こっちのは装甲が丸みを帯びている」

「そっちは大帝国で使うシャドウ・フリート用だ」


 外装装着型の機体にしたのも、ヴェリラルド王国配備機とディグラートル大帝国で使用する機で外観を変えるためだ。中身は同じ素体メカなんだけどね。


「戦闘機もそうだけど、ソルジャーも向こうとこっちで違う機体のように見せないといけないからね」


 外装――装甲の付け替えによる仕様や形の変化。装甲を着る兵士……。さしずめ、アーマード・ソルジャー(AS)と言ったところか。


 かくて、マッドを迎えたウィリディス軍。

 アーマードソルジャーの量産も開始され、またヴェリラルド王国北西部ノルテ海に配備予定の艦艇群の設計、建造が行われた。


 俺たちは、細かな作戦行動をいくつか展開しつつ、大帝国との開戦の日が来るのを待った。


 そして4の月、9日。

 ディグラートル大帝国による連合国への侵攻が再開された。

次話より、いよいよ戦争編(?)のスタート。まずは圧倒的な帝国軍が連合国へ侵攻を開始!

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