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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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648/2021

第645話、下僕とか来客とか


 遺跡探索隊の編成。前々から古代文明の遺産探しはやりたいとは思っていた。大帝国にばかりそれらを回収されても面白くない。


 せっかくの機会なので、ささっと準備しよう。


 乗り物は、様々な場所へと素早く向かうということを考えたら、空を飛ぶ航空機か飛行型の小型艇しかないだろう。

 あまり大きすぎると、着陸する場所が限定されるだろうから、ポイニクス長距離偵察機やシズネ艇より小さいほうがいい。浮遊石を搭載して、垂直離着陸が可能なようにする。


 武装は自衛装備程度。光線機銃くらいでいいだろう。機体サイズを小さくすれば、武装は積むスペースはそれほどない。そもそも探索任務に、そんなに武器はいらない。


 ある程度の貨物ブロックと……まあ、ポータルで繋げてしまえば、大きくとる必要はないか。浮遊石と魔力回復機能付きのエンジンで、巡航速度でいる限りは航続距離無制限。トイレとか簡易ベッドも装備させて――


 あれこれ盛り込みつつも、これまでウィリディスで作ってきたものの図面やパーツを流用して、図に起こしていく。……昔、SF映画とかでみた、主翼やメインローターのない大型ヘリのシルエットっぽい輸送艇があったが、それっぽいデザインになった。


 旗艦コアのディアマンテに、一応確認してもらい、問題ないと太鼓判を押されたので、ウィリディス工房のサフィロに早速、建造するよう頼んだ。



  ・  ・  ・



「お疲れさまでした、ジン様」

「ラスィアさん?」


 ノイ・アーベントの屋敷、執務室に行けば、ダークエルフの美女にして王都冒険者ギルドの副ギルド長が、俺を出迎えた。都市管理コアのガーネットと共に。


「えーと、どうしてここに?」

「つれないですね、ジン様」


 にこやかに微笑むラスィアさん。妖艶ダークエルフのそれに、ゾクリと胸が躍った。


「貴方様の下僕として、加えていただける約束をしておりましたから、それを果たしに参りました」


 そういえば、ダークエルフたちを大帝国から救い出した時、報酬の話で、下僕、というか人員の提供って話があったな。で、その下僕候補に真っ先に志願したのが、ラスィアさんだったと。


「本気なんですか?」

「私を疑うのですか?」


 心外とばかりに、ダークエルフの美女はその豊かな胸もとに手を当てた。


「ジン様にお仕えする以上、我が身体は、すべて貴方様のもの。いかようにお使いください。何でもいたします」

「何でも……?」

「はい、何でもです」


 意味深。本当に言ったら何でもしてくれそうな表情である。……俺に婚約者がいなかったら、ぜひ夜の供に誘いたいところではあるがね。

 読み書きはもちろん、事務仕事もできて、Aランクの冒険者にしてユナに匹敵する魔術師の加入は、人手不足のウィリディスとしてはありがたい。


「それで、早速ですが、ジン様は少々お疲れのご様子」


 ラスィアさんはすっと目を細めた。


「よろしければ、癒やしのご奉仕を――」


 一体何ですかそれは? 自然に距離を詰めてきたぞラスィアさん。この人、いやに積極的過ぎやしませんかね? あれー、こういう人だったのかな。

 確かに最初にお見かけした頃はそういうのも、と思ったことはあるが……あれほどの美人さんだからね。

 彼女も好意的ではあったけど……あ、そういえばデートに誘ったら、案外すんなり受けてもらえたことがあったような。あの時は、ケーニギン領に迫るアリ退治で、冗談のつもりだったんだけどね。


 そういえばいつも副ギルド長、としか見ていなかったから、プライベートなラスィアさんって、あまり知らないんだよな。実は脈があったのかもしれない。だとすれば、彼女にはラノベ主人公並の鈍感力を発揮してしまったかもな。


 その時、ドアが叩かれた。それまでずっと黙っていたガーネットが「どうぞ」と答える。……そういえばいたな、彼女。


 とか思っている間に、ラスィアさんは椅子に座る俺の後ろに回り込んで、何やら首まわりのマッサージをはじめた。手が早い。


「失礼します」


 入ってきたのはメイド服姿のサキリスだった。彼女は、俺とそのすぐそばにいるラスィアさんをみて、心持ち眉をひそめた。


「マッサージでしたら、わたくしが致しましたのに……」

「ああ、うん。そうだね。サキリス、今日からうちで働くラスィアさんだ」


 お互い顔見知りなので、大して説明はいらない。


「ラスィア、と呼び捨てで結構ですよ、ジン様」


 ささやくような甘い声でラスィアさん。サキリスが目を伏せた。


「ご主人様、ではラスィアさんも、夜のお相手に加わるということでしょうか?」


 何いきなりなことぶっこんでくるんだ、サキリスさん!


「もちろん。私は、ジン様の下僕。この体もご随意に……」


 いや、あんたも何さらりと言ってるのラスィアさん!


「下僕……。あ、では、わたくしと同じですね」


 自称、奴隷であるサキリスはにっこりとラスィアさんに微笑んだ。


「では、以後よろしくお願いします。わからないことはわたくしがお答えいたしますわ」

「よろしく、サキリスさん」


 ……もう好きにしてくれ。俺は適当に手を振った。あとはアーリィーが許可すれば、本当にそういうお世話もできてしまうシステムである。


「それで、サキリス。何か用件があって来たんじゃないか?」

「はい、失礼しました、ご主人様。……実は、ご主人様にお客様が見えられておりまして」

「俺に? 誰だい?」


 ノイ・アーベントで、俺を訪ねてくる人ね。住民かな?


「アルトゥル・クレニエール子爵閣下でございます」

「は!? アルトゥル子爵が?」


 エクリーンさんの弟くんじゃないか。てか、貴族様がノイ・アーベントに来ていたの? まったく出迎えもしていなかった。さすがにちとマズイだろこれ……。


「すぐにお通ししろ」

「はい、ご主人様」


 サキリスはメイドドレスの裾をつまんで一礼した。

 入れ替わるように、ベルさんが黒猫姿でやってきた。


「おう、何かあったのか?」

「アルトゥル君が、来てる」


 俺が答えると、トコトコと歩くベルさんが、ひょいと机に飛び乗った。


「へえ、何しに?」

「それは俺も知りたいね」


 まあ、それをこれから話すんだろうけどさ。フレッサー領がうまくいってなくて、支援の要請かな。それとも、逆に復興支援のお礼をいいにきたのか。


 しかし急な来訪と言える。普通は、これこれこうだから、この頃にお話できませんかと前もって連絡してくるものではないか?


 急な用件か、それとも何か外部に漏れたらマズイ内容か。……ああ、そういえば、アルトゥル君とは別に、ヴェルガー伯爵と会ってお話するってことになっていたな。

 こっちも日取り決めておかないといけないな。

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