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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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638/1942

第635話、ふところに入れていたのは―― 


 これまでの報酬に何をもらったのか、とジャルジーは聞いてきた。

 それは、ヴェリラルド王国からか? ……何をもらったっけ?

 ジャルジーが指折り数えはじめた。


「まず、ウィリディスだろう? そしてキャスリング領」


 今はトキトモ領である。領地をもらって、貴族の仲間入り。


「侯爵になった」

「王は、俺を公爵にするつもりらしい」


 たぶん、お前が王になったら、だろうけど。


「大出世だな、兄貴。領地と貴族階級を賜ったんだ。それも、半年、いや一年以内にだ。成り上がるにしても、異例の褒賞だろう」


 なお、ウィリディスは欲しいといったが、キャスリング領を欲しいと言ったことはない。サキリスの故郷であるという縁は感じたが。


「アンバンサー戦役での活躍を認められて与えられた領地だ。当然だ」


 ジャルジーは頷いていた。


 王国で成り上がっていく、という視点でいえば、俺は騎士をすっ飛ばし、上級貴族となり領主となった。端からみれば、王国から十分に見返りを得ているわけだ。


「あとは、そうそう……武術大会に優勝し、賞金と……アーリィーを手に入れた」


 諸侯らの前で、王子から姫となった彼女をくれ、と言った。それが彼女を女性として生きることができるようにするための手だったとはいえ、彼女と婚約が認められたのは、報酬のうちに入るだろう。


 まあ、王としても、俺とアーリィーがくっついたほうが、何かと都合がよかっただろうけど。これは受ける側と授ける側の意思が一致したよい見返りだった。

 報酬と言うとアーリィーに失礼かもしれないが、この件に関しては当人を含めて誰も不幸にならず、公認となったのはやはり大きい。 


「それで、フォルミードー騒動」


 隣国から飛竜が飛来した件。一定の周期で現れるという超巨大飛竜の討伐。


「……」

「あれは何と言ったか……元上位冒険者の、シャーハ、いやジャッハだったか……」

「シャッハな」

「そう、シャッハの反乱鎮圧。ダンジョンスタンピードを含んだ災厄を、兄貴とウィリディス軍は主軸となって撃退した」


 王国軍と冒険者たちもいたけどね。


「何をもらったんだ?」


 ダンジョンコアを――というのは内緒でお持ち帰りした。フォルミードー騒動の時は、ワイバーンの遺体と、フォルミードーの、これまた遺体の一部を戦利品として回収した。


「報酬は? 報奨金はもらってるんだろう?」


 ジャルジーの表情が曇った。


「嘘だろう、兄貴? じゃ、じゃあ、アンバンサー戦役の時は?」

「あれはキャスリング領をもらっただろう」

「いやそれだけじゃなくて、報奨金出ただろう?」

「もらった覚えはないな。そもそもクレニエール侯の救援に出たはいいが、アンバンサーは侵略者だから土地も金もないし、せいぜい戦利品をどうにかする以外にないって話だっただろ?」


 俺のところと、王都軍と、ジャルジーのところで三等分。


「いやいやいや、兄貴。それは戦利品分配の話で、それとは別に、アンバンサー撃退の功労で、報奨金が出たじゃないか!」

「え、お前はもらったの、報奨金?」

「ああ!」


 ジャルジーは報酬を受け取っていたらしい。俺には何もなかったはずだが……。


「兄貴は部下たちに報奨金を出さなかったのか? 戦ったのに?」

「いや、部下には出したよ」


 俺のポケットマネーから。シェイプシフターたちはお金いらないし、人間の数が少ないから、少々色をつけたが大した額ではなかった。


 先の戦利品分配は別として、エマン王もジャルジーも、パワードスーツとかウィリディス製部品をそれなりの額で買ってくれているから、お金に困っていないし。報酬あるなしで、どうにかなるような財政状況でもない。


「いや、兄貴、それはさすがにおかしい」


 ジャルジーが珍しくため息をついた。


「親父殿が報奨金を出さないなんてことはあり得ない。兄貴は国の危機を何度も救ってきたんだぞ? だがその兄貴が受け取っていないというのは、間に何かあった可能性もある。突き止めないと!」


 何だか、おかしな方向へ話が進んでいるなぁ。


 でもまあ、本来もらえていたはずのものがないというのは、問題である。それを見かねたジャルジーが俺のために動こうというのなら、その好意を無下にもできない。


 ということで、俺とジャルジーは、ポータルを使ってエマン王のもとへと行くのである。



  ・  ・  ・



 エマン王は、ウィリディスの白亜屋敷でベルさんと午後のティータイムならぬ、酒を飲んでいた。

 俺とジャルジーが来ると、二人は杯を掲げて迎えた。


「ちょうど、ダークエルフたちのことを話していたんだ」


 と言うベルさん。


「お前、どうせ報告しないだろうって思って、オレのほうから話したぞ」

「……ああ、そう」


 確かに報告するほど重大事はないだろうって思ったけどもさ。エマン王は口を開いた。


「まあ、百人規模のダークエルフなら、問題はあるまい。トキトモ領で管理できるならなおのことだ。ただ、千を超える規模になるようなら、事前に知らせてくれ。それがもとで、国に広がり、問題が起きても困るからな」

「承知しました」


 一応、釘を刺されてしまった。まあ、王の言うとおり、のべつ幕なしに手を差し伸べるわけにもいかない。


「それで、二人揃って何か話があるのかな?」

「それともお前らも飲みにきたのか?」


 ベルさんが、からからと笑った。俺がジャルジーを見ると、彼は本題を切り出した。


「兄貴への報奨金の話なんだが――」


 公爵は、俺が、これまでの王国を救った数々の働きについて、報酬を受け取っていないことを伝えた。

 話を聞いていたエマン王は、目の前のベルさんを見た。


「渡してなかった?」

「ジンの奴が、ちっともその話をしないからな……」


 ちびっ、と酒を口にするベルさん。あれ何このやりとり。……これはひょっとして。


「報奨金は出ていた。ベルさんが預かってた、と」

「話してなかったっけか?」


 ベルさんはそんなことを言った。


「聞いてない」

「そうかー、聞いてなかったかー。いや、オレも言わなかったかな……?」


 うーん、と唸る相棒。彼的には、話したつもりでいたようだった。そんなベルさんに、ジャルジーは眉をひそめた。


「まさか、ベルさんが報奨金をひとり懐にしまい込んでいたということか!?」

「預かってるのは事実だが、何だか盗んだみたいな言い草だな」

「違うのか?」

「違う。預かってるだけさ。何なら数えてもいい。オレは硬貨一枚使ってないからな」


 そういうと、ベルさんは自身の収納魔法で、預かっている金の入った袋を出し始めた。何やらくそ重たそうな革袋が、床にどんどん置かれていく。


「あー、ベルさん?」

「何だ、ジャル公?」

「もういい。いやこれ以上はさすがに置けなくなりそうだ……」


 積み上がっていく報奨金の袋で部屋の半分の床が埋まり、さらにその上に積み上がっていく。俺は思わず感嘆の声をあげた。


「へぇ。ずいぶんともらってたんだな、俺」

「お前さん、ちっとも金に困ってなさそうだからな。……必要ならすぐ出せるようにしていたんだが、お金の話、お前ぜんぜんしないし」

「そういうベルさんも、これだけあって使おうとは思わなかった? これ俺もそうだけど、ベルさんの分の報奨もあるだろう?」


 フォルミードー騒動やジャッハの反乱、アンバンサー戦役でもベルさんは一線で大活躍だった。


「オレの分は、オレがちゃんともらってる。といっても、高そうな酒を買うくらいしか使い道がないけどな!」


 がはは、と笑うベルさん。ウィリディスにいると大体自前で揃ってしまうから、あまり買い物しないと言うのもある。


「これで解決かな?」


 エマン王が鷹揚に言えば、俺とジャルジーは顔を見合わせた後、頷いた。


「解決です。お騒がせしました」

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