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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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633/1942

第630話、侯爵と族長の会談


 族長のルカー氏は三〇〇歳――というのは、後で聞いた話。俺の十倍生きていらっしゃる。


 ニゲルの森周辺のダークエルフ一族は、このルカー氏の血縁者が多く、ラスィアさんも、そうらしい。

 族長との本格的な会談――の前に、俺は揚陸巡洋艦ペガサスと巡洋艦アンバルを合流させ、鹵獲したクルーザーと輸送艦を牽引ワイヤーで繋ぐと、大帝国領空からの退避を命じた。


 他の大帝国空中艦と遭遇して、通報されたら面倒であるからだ。ちなみに曳航(えいこう)させるのは、帝国兵を艦から廃したので、操艦要員がいないためだ。

 シップコアを搭載していないから、テラ・フィデリティア艦のエンジンと純正浮遊石の力を信じて、高高度へと引っ張り上げさせた。


 さて、その指示が終わった後、俺はようやくダークエルフ族長との会談に臨んだ。まあ、俺が部隊に指示したり、そのために艦橋に移動した際に、ラスィアさん共々、ルカー氏もついてきていたのだが。


「改めて、礼を言う、トキトモ侯爵。人間に襲われ、正直我らも感情的に収まらないところはあるが、貴殿らの行動で、人間に対する感情も和らいでいる」

「それは結構。正直、大帝国の連中がしたことについて、我々は何の関係もないので、非難や八つ当たりも、迷惑でしかないが、ひとまず私の友人であるラスィアさんの一族を助け出すことができてよかった」

「……左様。恩人に対しての言葉ではなかったな。すまなかった」


 あっさりと謝罪したので、俺は頷きで応えた。まあ、文句のひとつをどこかにぶつけたい気持ちはわかるけどね。


「我らは助けられた。ゆえにトキトモ侯爵、貴殿にその恩を返したいと思っている。ラスィアから聞いたが、この救出の際の謝礼や報酬の話などなかったらしいが……」


 ルカー氏に顔を向けられ、ラスィアさんが困ったように目を逸らす。

 あー、そういえば、ラスィアさんへ協力を申し出た時、とくにそういう話をしなかったな。困っている女性がいると、つい助けようとしてしまうんだ。

 そんな俺の内心をよそに、ベルさんが口を挟んだ。


「気にするなよ、族長。こいつはいつもこんなんだから」

「見返りを求めない、というのか……?」

「いや、それなりに」


 驚くルカー氏に、ベルさんはニタリと言った。


 ダークエルフの里の危機を聞いた時は、ヴォード氏をはじめ皆、善意で動いていたし、そこで報酬とか謝礼の話をどうこういうのは……。いや、正直に言おう。俺もその時は報酬のことなど、まったく考えていなかった。


 ただ大帝国の行動に心当たりがあったから、それを阻止したかったという思いが強かったというだけで。……そう考えると、敵の行動を潰した上に空中艦2隻を鹵獲したのだから、いずれやろうとした作戦を前倒しにしただけで、まったく損はしていない。


「まあ、お礼を頂けるというなら謹んでお受けしましょう」


 それが礼儀というものだ。


「ただ、あなた方は集落と家族の多くを失った……。余裕がないのでは?」

「確かに、幾ばくかの金品、一族に伝わる武具。後は、我が一族から人員を、貴殿に提供するくらいか」

「人員を提供……?」

「下僕として貴殿に仕えるのだ。戦士が必要なら優秀な者を、女子(おなご)が欲しければ、美しき者を出そう」


 それって奴隷みたいなものか? 女子が欲しければって、いわゆるハーレム上等とも受け取れる。容姿端麗なダークエルフ美女に囲まれる生活……。そそられるものがあるが、まあ、そういうのはしないけどね。


 人を金品代わりに労働力として提供というのは、割とある話なんだよな、この世界だと。


 ラスィアさんが手を上げた。


「族長、その役目、私が志願いたします」


 え……? なに、いきなり志願ですか? 冒険者ギルドのほうはどうするんだ……と、思ったが、そう言えば後任が定まったら退職するとか言っていたっけ。 


「トキトモ侯爵の力に頼ったのは私です。であるなら、私が真っ先にその役割を担うのが道理」

「……」

「……」


 何とも言えない雰囲気なのは、俺だけでなく、ルカー氏も同じだった。というより、彼のラスィアさんを見る目。この件とは別に何か言いたげなものを感じる。


 ヴォード氏は目をパチクリさせているし、ベルさんでさえ苦笑している。まあ、俺としては美人のラスィアさんがきてくれるのは歓迎ではあるのだが。……俺はルカー氏に向けた。


「謝礼などについては、おいおい詰めていくとして、これからの話をしませんか?」

「うむ」


 ルカー氏も同意した。


「これから、我々はどうなるのか?」

「一応、ニゲルの森……アコニトでしたか、そちらに向かっています」


 俺はしかし腕を組んだ。


「大帝国は今のところ撤退したので現地にはいません。ですが――」

「連中が戻ってくる可能性はある、と」

「その通りです。今回、あなた方を取り返されましたから、再び戻ってくることも考えられます」


 あのあたりは人間の支配者のいないダークエルフのテリトリーである。大帝国としては、他の国に遠慮する必要のない土地だから、やってくるのも自由だ。


「彼らの鉄の魔獣どもが攻めてきても、我々では対抗できない」


 ルカー氏も深刻そうに眉をひそめる。魔獣とは戦車とかのことだろうな。


「しかも里に戻っても、復興させねばならず、いつやってくるかもわからない敵に備えるのは難しい……」

「そうなると、どこかに移住するとか?」


 ヴォード氏が口を開いた。一時避難か、それとも難民となるかは意見のわかれるところではある。


「他のダークエルフの集落へ身を寄せる……?」

「どうかな。我々は一族の結びつきは強いが、他部族に対してはそれほど付き合いが深いわけでもない。よそ者を避けることはあっても、好意的に歓迎する部族は少ないだろう」


 ただ――とルカー氏は言った。


「婚姻となれば、話は別だ。若い者が少数なら歓迎もされよう。しかし我が部族全員は無理であろうな」


 ちら、とダークエルフの族長は、ラスィアさんを見たが、何故か彼女は視線を逸らした。ラスィアさんは婚約云々で里を逃げたって話だったから、多分それ絡みだろう。


「なら、思いつく案はひとつですね」


 俺は小さく肩をすくめた。


「避難先として、我がトキトモ領が受け入れましょう」

「おぉ……いや、しかし、よろしいのか、トキトモ侯爵?」

「ええ、その侯爵ですから、私がいいといえば、土地くらいはお貸しできますよ」


 ヴェリラルド王国に他種族の入国を拒む法はないはずだ。亜人にも寛容という評判があるくらいだし。一応、確認はしておくけどね。


「ニゲルの森近辺でのほとぼりが冷めるまでの一時的避難です。生まれ育ったアコニトがいいと言う人も多いでしょうし」


 故郷が一番。戻れるなら戻りたいという本音もあるだろう。 


「あぁ、もしこちらに定住を望むのであれば、領民として私が保護もしましょう。もちろん、その時は一定の税を納めてはもらいますけど」


 一時的でも永住でもご自由にどうぞ、だ。トキトモ領は広さの割に人口が全然だからね。


「それは願ってもない申し出。寛大な提案に、一族の長として深く感謝の意を表する! ありがとう、トキトモ侯爵殿」


 ルカー氏は、深々と頭を下げるのだった。

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