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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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630/1943

第627話、アンバル VS クナーヴ


 巡洋艦『アンバル』――


 艦隊司令であるジンからの命令は、アンバル艦橋にも届いた。


 琥珀色の髪をショートカットにした女軍人――シップコア『アンバル』が、ディアマンテによって擬人化機能を与えられた姿だ。

 彼女は、艦長席のダスカにそれを伝えた。ダスカは軍帽の位置を整えた。


「では、こちらも始めましょう。機関、最大戦速。左砲戦、用意!」

「アイサー。機関、最大戦速。左砲戦」


 アンバルが復唱し、テラ・フィデリティアの軽巡はその速度を上げた。

 高高度から矢のように降下しつつ、敵クルーザーと輸送艦の右側面へと近づく。雲量は9。ほぼ地上が見えないほどの曇り空の上を、二隻の帝国艦が行く。


 鈍足の大帝国艦と比べたら、『アンバル』の速度は航空機並みと言える。変わらずのんびりと航行を続ける敵艦に、ダスカは首を捻る。


「……敵はこちらをまだ発見していない?」


 アンバルは人形めいた表情を崩さず速答した。


「魔力ならびにレーダーなどの反応はなし。敵は目視による原始的な索敵方法のみと思われます」

「ふむ。……ではこちらが先制できそうですね」

「はい、艦長。仮に敵が当艦を発見したとしても、彼我の主砲射程から、問題はありません。――高度3300に到達。艦を敵艦と水平に保ちます」

「ご苦労。速度を敵艦に合わせてください。こちらが速過ぎて動き回っては、突入隊の邪魔になりますからね」

「敵艦との距離3万。主砲の有効射程内にあります」

「では、敵クルーザーに牽制射撃。彼らの注意をこちらに引いてください。……当てないでくださいよ!」

「アイアイサー。全主砲塔、敵1番艦に指向! ……出力については弱弾でよろしいでしょうか?」

「任せます」


 15.2センチ連装プラズマカノン砲塔、4基8門が艦左舷へと向く。アンバル艦橋の測距装置が敵クルーザーの速度、距離、周辺大気状況を解析、その照準をつける。


「各砲塔、射撃用意よし」

「撃てー!」


 8つの砲身から青い光弾が(ほとばし)った。どうせ当てないのだから威力を落としたプラズマ弾は、ほぼまっすぐに3万メートルの距離を数秒で飛翔。標的となった大帝国クルーザーを取り囲むように通過した。

 ……いくら間抜けでも、さすがにこれは気づくだろう。



  ・  ・  ・



 ディグラートル大帝国空中巡洋艦『クナーヴ』は、就役から二ヶ月ほどしか経っていない新鋭艦である。


 艦長を務めるのは、ルライザー中佐。三十三歳。

 昨年の大帝国軍階級制度の変更により、二等空中艦艦長から『中佐』に変更となった。実戦投入されて日が浅い空中艦にあって、初期からその運用に当たっていた古参である。


 連合国との戦いにおいても、数度の実戦を経験し、この度、クルーザーⅡ型『クナーヴ』号の艦長となった。


 ――退屈な任務であった。


 ルライザー中佐は、キャプテンシートに座り、ぼんやりと艦橋から見える空を眺めていた。


 正直気が抜けているのだが、元より厳めしい顔つきのせいか、それに気づく部下もいない。


 魔法軍特殊開発団による亜人種捕獲作戦――今回はダークエルフの集落を襲ったが、何とも面白みのない任務だった。


 捕獲実行部隊の護衛がクナーヴ号の仕事だったが、いったい何者が作戦の妨害をしてくるというのか。


 未だ大帝国以外に、空を飛ぶ軍艦を有している国など存在していない。空の脅威といえば飛竜がいるが、それが高度1000メートル以上を飛ぶことなどほとんどない。

 空中艦隊司令部は、よい実戦経験稼ぎができるだろう、などと言っていたが……。


 ――経験の足しには、なったんだろうな、一応は。


 ともあれ、この任務が終われば、クナーヴ号は魔法軍から解放され、対連合国戦の主力となる第一空中艦隊への配備が決まっていた。


 連中の頭の上に無数の爆弾や砲弾をお見舞いしてやることを考えれば、この退屈な任務の終了が刻一刻と近づいていることに思わずニヤリとしてしまうのだ。

 その時だった。


『右舷見張りより、三時の方向より発光!』 


 伝声管から見張り員の鋭い声が響いた。

 直後、艦橋の遮風ガラスの向こうに青白い光が通り抜けていくのが見えた。ルライザー中佐も、艦橋にいた人間も、それが敵襲であると判断できたものは皆無だった。


「……何だ、いまのは?」


 雷、いやそれなら雷雲があることが前もって報告されているはずだ。しかしそう言った雷雲の報告はない。


『こちら右舷見張り、三時の方向に艦影らしきもの!』


 クナーヴ号から右、およそ90度方向に当たる。早速、艦橋の見張り員が双眼鏡を覗き込み、ルライザーも席を離れて右舷側の窓へ移動、艦長用の望遠鏡を手に持った。


「……艦影、だと……?」


 友軍か? しかし、さっきの光は何だ? わけがわからない。


『艦影らしきものから再び発光!』


 見えた。青白い光が複数、だが今度はクナーヴ号ではなく、後方を行く輸送艦『クイグ・シェ』号の至近を通過した。

 ルライザー中佐は、カッと表情が険しくなった。


「クソが、あれは攻撃だ! 輸送艦を攻撃しやがった! 戦闘配置だ、急げ!」


 艦長の怒号に、たちまち艦内に戦闘配置を告げる鐘の音が響き渡った。



  ・  ・  ・



 巡洋艦『アンバル』――


 第一射は、大帝国クルーザーを狙った。だが攻撃されたにも関わらず、その動きはまったく変化がなく、見守っていたダスカは、シップコアのアンバルと顔を見合わせた。


「攻撃とわからなかったのかもしれません」


 アンバルの言葉に、なるほどとダスカは思った。敵は、古代機械文明の巡洋艦のプラズマ弾で撃たれたことがないのだろう。


「では、狙いを輸送艦に向けましょう」


 クルーザーは輸送艦の護衛についているのだから、その対象が攻撃されているとなれば、否が応でもでも反応せざるを得ない。かくて、アンバルの主砲は、今度は後続の輸送艦を狙い、その至近に光弾を叩き込んだ。


 そこでようやく、敵クルーザーが針路を変えて、こちらへと艦首を向けてきた。


「敵クルーザー、速度を上げました。時速100キロ……なお増速中」

「……可哀想なくらい鈍足ですね」


 ダスカは首を傾げた。アンバル級巡洋艦の巡航速度は、ヴェリラルド王国の主力プロペラ機VF-1よりも速い。


「まあ、時間は稼がねばなりませんね。こちらも増速。同じ速度で逃げ回っていれば、追いつかれることもないでしょう」

「アイサー。三番、四番砲で牽制は続行します」


 よろしく、とシップコアに任せて、ダスカは戦況図を眺めた。

大帝国軍クルーザー級Ⅱ型:空中艦。クルーザー級の改良型。快速の巡洋艦であり、元となったⅠ型に比べて細身の艦体を持つ。基本となる武装に変化はないが、運用面に関して向上しており、クルーの評価は高い。


全長:165メートル

武装:50口径15センチ連装砲×4(上1、下3)

   8インチ単装速射砲×12(側面)

   対地攻撃用爆弾倉×4



※7月27日に、第607話の後に、ウィリディス軍の兵器一覧(設定)を追加投稿しました。

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