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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第594話、浮遊島アリエス


 マルカス小隊は、無事、謎飛行物の防空攻撃圏を離脱した。


 キャスリング基地司令部で、彼らの機体から送られてきた映像記録を見ていた俺たちだが、相手の正体は人工コア『アグアマリナ』によって判明した。


 テラ・フィデリティア航空軍の軍事浮遊拠点『アリエス』。それが、我がトキトモ領へ接近して超巨大飛行物体の正体だった。


 中央の浮遊島と、それを囲む五つの小島からなる、航空浮遊基地である。


「アンバンサーではなかったわけですが」


 ダスカ氏は腕を組んだ。


「テラ・フィデリティアの浮遊拠点ということは、我々の味方側、のはずですよね?」

「ご先祖様、かもしれないな」


 俺はこの世界の人間ではないから、何の関係もないけど。


「伝説の浮遊島かもしれないと思ったのに……」


 アーリィーはとても残念そうだった。


「子供の頃から、浮遊島の伝説はとても好きだったんだけどな」

「現実は非情だったな」


 まったくだよ、とお姫様は首を横に振った。


「おとぎ話が軍事基地だったとは、ロマンの欠片もないな」


 ベルさんが皮肉げに言うのである。


「で、どうする? 近づこうとしたら攻撃してくるんだろう? だけど、放っておいても、向こうがこっちへ来てしまうと」

「ただ通過するだけなら問題ないんだが、そうでなかったら面倒なんだよな」


 俺が眉間にしわをよせれば、ユナが発言する。


「ここはアンバンサーが拠点として使っていた場所。もしそこに攻撃の意思をもって接近していたとしたら……」

「可能性は低いけど、ゼロじゃないんだよな、それ」


 俺は、アグアマリナ筐体に手をついた。


「アリエスと交信できるか、アグアマリナ?」

『承知しました。テラ・フィデリティアの専用コードを使い、コンタクトを試みます』


 人工ダンジョンコアは、早速行動を開始した。俺たちはその結果が出るまで、ホログラフの浮遊島を睨みながら待つ。


『報告。アリエス、応答なし』


 いくつかのため息がこぼれた。ダスカ氏が首をかしげた


「交信不能。これが意味するところは……?」

「浮遊島がテラ・フィデリティア以外の何かによってコントロールされている。もしくは、識別や通信装置が故障している。……果ては、暴走状態か」


 他にも理由はあるかもしれないが、少なくとも話が通じる状態ではないのは確かだ。


「まあ、ウン万年とかそれ以前の代物だもんな。壊れてても無理はない」


 サキリスとアーリィーは頷いた。高高度浮遊群でアンバルを拾った時も、機能停止寸前のスクラップだった……。


 とか、呑気に構えている余裕もない。


「アリエスの航行目的がわからない以上、最悪のケースは、地上への攻撃。ないという保証もないので、我々はアリエスに乗り込み、島のコントロールを手に入れなければならない。……喜べ、アーリィー、浮遊島の探索だぞ」

「わーい、うれしい」


 アーリィーが棒読みっぽく応え、ベルさんが笑った。


「しかし、ジンよ。何で行くんだ? こっちには戦闘機も(ふね)もあるが、あちらさんは撃ってくるぞ?」

「そう、島に上陸するには、その防空圏を突破しなくてはならない。アグアマリナ。アリエスの武装データを出せるか?」

『承知しました』


 ホログラフの浮遊島、アリエスを取り囲む五つの小島のいたるところに赤い光点が表示された。


 同時に武装の一覧も端に並ぶ。8インチ(20.3センチ)、6インチ(15.2センチ)、5インチ(12.7センチ)各種プラズマ砲にミサイルランチャー群。

 それが分散配置されているが、まるでハリネズミのようだ。


「どこか一カ所から突っ込んでも……ヤバそう」


 いくら防御シールドがあるとはいえ、この無数の対空砲が設置された場所へ向かうのは自殺行為と言えそうだ。マルカスたちを引き上げさせてよかった。


「アグアマリナ、シミュレートできるか? ウィリディス軍の保有兵器で、アリエスへの上陸が可能かどうか?」

『計算します』


 アグアマリナは応え、さっそく双方の性能、装備、配置をデータに、仮想シミュレーションを開始する。

 それを見守る俺たち。結果は――あまりよろしくなかった。


「戦闘機中隊は半数以上が撃破、喪失。侵入角度によっては全滅もあり」

「巡洋艦でも駄目ですね」


 ダスカ氏は肩をすくめた。


「近づくまでにシールドが消滅し、蜂の巣です。……いやはや鉄壁の要塞ですな」

「一万メートルより上からの高高度からの空挺降下も、降下地点にたどりつくまでに母機が撃墜される……」


 俺は髪をかいた。


「複数なら何とか抜けるんだから、そっち方面でいくしかないだろう」


 とはいえ、有人機で突っ込んで犠牲者を増やすのも面白くない。大帝国戦を前に揃えた戦闘機を無駄に失いたくないものだ。


「たとえば、巡洋艦を二隻、単縦陣で突っ込ませ、先頭の艦がある程度盾となって距離を稼いだところで、二隻目が前に出て、シールドが消滅する前に突っ込む」


 あるいは――


「シールド付きのポータルポッドを多数射出して、敵防空圏に突入。ポッドの大半は途中で撃墜されるだろうが、ひとつでも上陸に成功すれば、そこからポータル経由で上陸部隊を送れる」

「凄い! 二つも案がある!」


 アーリィーが目を輝かせる。さすがご主人様、とサキリスも頷いた。ユナが考え深げにダスカ氏を見た。


「どちらの案がいいでしょうか?」

「アンバル級は貴重な戦力。万が一の喪失を考えるなら、ポッド作戦のほうが被害は少なくて済みますが……」


 ジン君――ダスカ氏は提案した。


「その二つ、同時にやりませんか? どちらかを囮と考えれば、敵の対空砲も分散させられると思います。そうなれば、より突入成功率をあげられます」

「……よし、それでいこう」


 そうとなれば、急がなくてならない。今こうしている間にも、浮遊拠点アリエスは、ゆっくりとはいえこちらに近づきあるのだから。


「おい、ジン」


 ベルさんが口を開いた。


「ポータルポッドを飛ばすってどうやるんだ? そもそも、あれは基本は落下するのみだから、アリエスの上にいかにゃならんのだろう? さっき空挺はできないって言ってなかったか?」


 ポイニクスなどで運べば、落とす前に迎撃されてしまう。先ほどのシミュレーションではそうなった。


「オペレーション・スティールの副産物がある」


 俺はしれっと答えた。


「航行中の敵艦へ乗り込む手段として作っていた強襲突撃ポッドがある。それを使う」

オペレーション・スティール:大帝国兵器分捕り作戦

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