表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

514/1941

第512話、シズネ艇と、新たな問題


 マジックペンを複数もらえないかと、ラスィアさんに言われた。

 普段から事務業務に関わっている人だけあって、その書き心地と便利さへの理解が凄まじく早い。


 しかし残念。手作りだから、まだ数はないんですよ、と言っておいた。実はウィリディスでは、一人一本という感じで支給できるように生産体制を構築している最中である。


 なにぶん魔力をインクに変換する魔法文字を刻むのは、細かい作業ゆえに一日のうちに作れる数には限界がある。

 ラスィアさんに渡したマジックペンなんか、俺が解析眼鏡をかけて拡大しながら細々と文字を刻むという目に優しくない作業の末に完成させたものである。

 大事に使ってほしいね。


 さて、ヴェリラルド王国の年末が近づいている。このあたり、俺がいた世界と同様、一年は十二ヶ月で数えられる。

 そんなわけで、ウィリディス住人や勤務者たちにとって、帰省ラッシュが始まる。


 ……はずなのだが、俺を含め、別世界から来ている人間たちには、この世界に故郷があるはずもなく、王族の方々にとっても本来の家が王都の城であるが、わざわざ日にちをかけて戻る必要もない。


 ウィリディス勤務の兵や料理人、雑用係で王都出身者は家に帰ることができるが、それ以外の場所が故郷の者は道中の危険もあり、残留者も多かった。日本で帰省するのとは、わけが違うというわけだ。殺伐とした世界である。

 もっとも、帰る故郷がない者もいるわけで。


 うちでもサキリスやクロハ、ヴィンデとメイド組は故郷がないので残留。ダスカ氏は、「もう身内も残っていませんから」とさばさばしていた。


 ユナは家族がいるらしいが、帰省を拒んだ。本人は理由は語ろうとしなかったが、かつての師であるダスカ氏いわく、家族と仲がよろしくなく、家出同然で飛び出し、弟子入りしてきた過去があるという。

 ちなみに、ユナの両親は、ダスカ氏の初期の弟子でもあったらしい。……そういう繋がりがあるのか。


「たまには、連絡くらいしてあげなさい」


 ダスカ氏はやんわりとユナに告げたが、彼女の様子からするとその気はなさそうだった。やれやれ。

 そして、うちで数少ない帰省組であるマルカス君。ヴァリエーレ伯爵家の次男は王国西部地方の出身である。


 年が明ける前に一度、実家に帰るという彼だが、出発予定日前に、ヴェリラルド王国を大雪が襲い、身動きがとれなくなってしまった。


「ま、年末までに晴れれば、タンクなりポイニクスなりで、送ってやるよ」


 俺は、足止めを余儀なくされたマルカスにそう言っておいた。当人は、ギリギリまで快適なウィリディスで過ごせるならと悪い顔はしなかった。


 その俺は、第三格納庫にいた。外は大雪なので外へのゲートは閉められている。

 大型偵察機(ポイニクス)は出払っており、代わりにあるのがエルフよりいただいた古代機械文明時代の艦艇――シズネ級ミサイル艇だ。


 全長38メートル。長方形の船体と、後部で左右に張り出しているエンジンブロックが二つ。全体の印象は、SF映画に出てくる宇宙船のようでもある。


 艦首左右に単裝砲を1門ずつ、艦体中央の上部に旋回式の連装砲を1基。同じく中央左右に四連装のミサイルランチャー。艦底部に大型ミサイルを三発懸架――というのがシズネ級の武装であるが、シップコアがはずされていた艦体は長年の劣化が激しく、ミサイル類は空。砲も使用不能状態であった。


 さて、エルフが捨てたものを拾ったわけで、手に入れたからには修理する。が、機械文明時代の技術の知識などほとんどない俺たちである。

 本来なら修理なんてできないのだが、この件についてはユナやガエアほか、俺のサポートをしてくれる人材から質問はなかった。


 何故なら、古代機械文明時代の進んだ科学力を利用するのがわかっていたからだ。


 つまり、シップコアにエネルギーを注いで艦体の自動修復機能に任せたのである。ここでいうエネルギーとは、すなわち魔力である。


「かつての機械文明技術が、現代の魔法や魔力の流れに名残を留めたというなら、何ともロマンチックな話じゃないか」

「そうですね」


 俺の言葉に、ユナは頷いた。


 スカイベースの軽巡アンバルほか艦艇群の再生と同じである。

 エルフの宝物庫に眠っていたシップコアをミサイル艇の台座に戻し、あとは魔力を投入すれば、勝手に再生処理を行う。……逆に言えば、シップコアがなければ、こうもスムーズにはいかなかった。

 もっとも、今回は、ミサイル艇としては再生しない。


「どういうことです、お師匠?」

「このシズネ級っていうのは、汎用の小型艇がベースになっているんだ」


 シップコア『アンバル』に解析してもらったが、その時、このミサイル艇のバリエーションも拝見した。パトロール艇、高速救助艇、小型武装輸送艇というのが主だ。


「今回、このシズネ級に小改造を施すことにした」


 具体的には船体後部の居住区の一部を潰し、そこに機材を積む格納庫を設置する。


「何せ、こっちは人がいないからな。動かすときは、メインはシップコアになる」


 仮に、人員が必要な時はシェイプシフター兵が担うことになるだろうから、居住区画は最小でいい。ただ俺たちが乗り込んで使うかもしれないから、全面撤去はしない。


「それで、お師匠は、このシズネをどう使うつもりなのですか?」

「うん、小型の揚陸艇とか、多用途に使える汎用船にしようと思う」

「揚陸……スカイベースで、強襲揚陸艦というのを作っていました」


 ユナが自身の銀色の髪に手を当てた。


「それではダメなのですか?」

「ダメと言うか、あれはデカ過ぎるからな」


 空中浮遊群を漂っていた輸送船と、アンバル級巡洋艦の艦体後部をつなぎ合わせたキメラを現在建造中だが、全長は200メートル近い。部隊規模の戦車や航空機を運ぶには適しているが、もっと小規模な部隊移動をする時には、少々オーバーとも言える。


「秘密裏に部隊を運ぶ必要があるとき、あの艦は目立ち過ぎる」

「ワスプの兵員輸送コンテナシステムなら、少人数を運べると思いますが?」

「あれは人を運べても、乗り物には対応していないからな」


 大は小を兼ねるというが、物事には適切な大きさというものがある。牛刀割鶏(かっけい)。小に対応するのに大を使うは大げさというもの。

 幸い、シズネ艇は、スカイベースの大型艦に比べれば、再生も速く済むだろう。


 だが、ひとつ問題があるとすれば、それはシズネ艇に使う浮遊石の在庫がないということ。


 エルフの里にあったこの小型艇の使われていた浮遊石は、ヴィルヤの大エレベーターに用いられたものだと思われる。転移魔法陣が完成した後、世界樹のほうで保管されていたのを青肌エルフ騒動の後、俺たちがもらった。

 ……つまり、その浮遊石は、いまポイニクスが使っている。高高度浮遊群で回収した浮遊石は、主に戦闘機や一部のパワードスーツにすでに割り当てが済んでいる。


 これ、TPS-3シルフィードの1機から、シズネ艇へ回すか?


 まだまだ作りたいネタはあるのだが、浮遊石の予備がないのが痛い。どこかから手に入れないと、案はあっても作れないな。


 はてさて、どうしたものか。……新たな旧文明の遺跡を探すか、あるいはどこからか奪ってくるしかないか。たとえば、大帝国からとか……。


 ディグラートル大帝国。あそこは空中艦隊を整備している。すでに一〇〇を超える空中艦艇を就役させていて、なお、その数を増やしている。つまり、それに対応する浮遊石を保有しているということだ。


 確か、シェイプシフター諜報部から送られてきた資料があったはずだ。大帝国は古代文明遺跡の発掘調査も盛んに行っているから、そのルートでいくつか遺産を確保している。浮遊石もそうだと思う。


 本格的な交戦は春以降。だが諜報戦に限れば、すでに始まっている。

 表立っては言えない戦いというやつを、始めてもいい頃合いかも知れない。まあ、もちろん、こちらの正体を明かさず、敵が本格的に軍を進めるような事態にならないように、だが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リメイク版英雄魔術師、カクヨムにて連載中!カクヨム版英雄魔術師はのんびり暮らせない

ジンとベルさんの英雄時代の物語 私はこうして英雄になりました ―召喚された凡人は契約で最強魔術師になる―  こちらもブクマお願いいたします!

小説家になろう 勝手にランキング

『英雄魔術師はのんびり暮らしたい 活躍しすぎて命を狙われたので、やり直します』
 TOブックス様から一、二巻発売!  どうぞよろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ