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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第510話、イルミネーションに照らされて


 感動しているジャルジーを連れて、食堂に戻る。そこへ、アーリィーがやってきて、両手で持った小包を俺に差し出した。


「こ、これ! ジンに、クリスマスプレゼント!」

「お、おう……俺に?」


 自分にプレゼントが来ると思っていなかったので面食らった。さんざん人を驚かせていたのに、案外守勢に回ると弱いかもしれない俺。


「開けてもいい?」

「う、うん!」


 赤面しながら頷くアーリィー。俺と彼女の関係を考えると、色々順番があべこべな気がするが、何とも初々しいアーリィーをみて、俺も緊張してきた。


 アーリィーの後ろで橿原(かしはら)がにっこり微笑んでいるのを見て、どうやらプレゼントについて関係しているんだろうな、と当たりを付ける。しかし、いつ準備したのかね……。


 箱の中は、ネックレスだった。

 銀のチェーンに、黒い石を加工したそれ。何気にこれ、ミスリル銀を使ってないかな?買ったとしたら相当高額なものじゃなかろうか。


 さっそく首から下げてみて、丸く加工された石、その表面を撫でてみる。綺麗に研磨されてるね。


「これには何か由来があるかな?」

「癒やし石って言うんだ」


 アーリィーがはにかんだ。


「最近、ジンが疲れているんじゃないかって。身につけていると疲労を和らげてくれるんだって」

「おお、アーリィー」


 俺は思わず、目の前の彼女を抱きしめた。


「ジ、ジン!?」


 いきなりだったので驚かせてしまったかな。軽くハグするように、すぐに離れた。


「ありがとう、アーリィー。嬉しいよ」

「気に入ってくれたようでよかった。……似合ってるよ」

「ありがとう。それでどこで手に入れたんだ? 高かったんじゃないかな?」

「ノークにお願いしてね、作ってもらった」


 オーダーメイドか。エルフのガエアが魔法甲冑やパワードスーツをいじる中、ドワーフのノークは武器を担当している。なるほど、ドワーフの職人ならミスリル銀もお手の物か。


「その癒やし石は、先日のダンジョンで、ですよ」


 橿原が教えてくれた。なるほど、七面鳥狩りに行ったその足で、この石を手に入れたのか。逆かな、これを入手するためにダンジョンに行ったのか。


 まんまとやられたな。責める気はないけどね。しかし、ノーク……。石の加工も含めてたった一日で仕上げたのか? 人間業じゃないなこれ。


 では、俺も、そろそろ渡さないといけないね。


「アーリィー、ちょっと付き合ってくれるか」


 ここで渡すのも、ちょっと恥ずかしいのでね。というわけで、周囲が食事やプレゼントで盛り上がるのを余所に、食堂のすぐ外、テラスへと出る。


 クリスマス・イルミネーションの光が、淡く点滅を繰り返す。その光が、彼女の顔を優しく照らしている。色とりどりの明かりを改めて見つめるヒスイ色の瞳。俺はそっと、ストレージから小箱を出した。


「ジン?」

「包装はいらなかったかな、と思う」


 それとも自分で開けたい? と確認して、アーリィーが開けたいというので彼女に小箱を渡す。


 紙を開けるわくわく感が出ていたアーリィーの表情が変わる。俺が皆に渡してきたプレゼントの中で一番小さな箱。それを開けた彼女の目が大きく開く。


「指輪……」

「そう」


 俺はそっと彼女の手から小箱を取ると、片膝をついた。


「君に受け取ってほしい。改めて俺の口から言わせてくれ。結婚しよう」


 エンゲージリング。つまりは婚約指輪。


「すぐには、とはいかない状況だけど、これが俺の気持ちだ」


 最近、結婚話を聞かされた。俺とアーリィーが将来的に結ばれることは決まっていたが、きちんとプロポーズをしていたか、と言われると、まだしていなかった。

 アーリィーが呪いで女になった、と公式にはそういう扱いになっている。諸侯たちの前で、嫁にもらうと言ったのが、半ば公開プロポーズのようになっていたが、あれは儀式のようなもの。


 だから、いま、ここで渡す。


 改めて箱を受け取ったアーリィーは、大事そうに胸に抱きしめるように持つと、涙ぐむ。


「ボク……わたしでいいの、本当に?」

「受け取ってほしい。君に」

「うん……」


 つけても? と問うアーリィーに俺は黙って頷いた。ほぼ受け取ってもらえるとは思っていたけど、いざその場になると……。俺も泣きそう。


「似合う、かな?」

「もちろん」


 アーリィーの守護宝石と言われている翡翠(ヒスイ)をメインにあしらった指輪である。そのまわりには小さなダイヤをちりばめた。婚約指輪と言うと、普通はダイヤモンドって印象だけど、俺は、彼女の宝石を大事にしたかったんだ。


 そんなテラスで気配を感じた。俺とアーリィーがそちらを見れば、ギャラリーがこちらを見つめていた。


 ベルさんは何か笑いをかみ殺したような顔をしているし、フィレイユ姫は口元に手を当て驚きと好奇の視線を向けている。エリサや橿原(かしはら)たち女性陣が、まじまじと見てくるので、さすがに恥ずかしくなった。


「見世物じゃないぞ」


 俺は立ち上がると、アーリィーを抱き寄せた。


「何か文句があるか?」



  ・  ・  ・


 その後、残りの食事を平らげ、パーティーは終了した。


 参加者たちはクリスマスを楽しみ、後片付けをするメイドや料理人たちも、俺が婚約指輪をアーリィーに渡したと聞いて「おめでとうございます」と祝福の言葉をくれた。


 彼らには、クリスマスを楽しむ許可を与えてあるので、時間は遅めだが盛大に飲み食いすることと思う。同じように近衛たちも、ウィリディス食堂のほうでパーティーをやっているはずである。

 プロポーズの場面に居合わせた人々のコメント。


 フィレイユ姫「とてもロマンチックでしたわ。アーリィー姉様がうらやましい」


 サーレ姫「アーリィーは素敵な殿方と出会えたのですね。……妬けますね」


 橿原「プロポーズなんて初めて見ましたけど……いや、もう言葉がでません」


 リーレ「ああ、うん……なんか、見ててこっぱずかしかった……」


 エリサ「ごちそうさま。ああいうのも悪くないわね」


 ユナ「お師匠のような人と結ばれて、アーリィー様は幸せだと思います」


 リアナ「……」(実は見てなかった)


 サキリス「お二人の幸せのために、わたくしは身を粉にして働きますわ!」


 オリビア隊長「遠目で拝見していましたが……いいものですね」


 マルカス「……おれも、見習わないと、な」


 ジャルジー「さすが兄貴だ。――参考にしよ……」


 エマン王「アーリィーはよきパートナーを得たのだな……」


 ベルさん「まあ、おめでとう。で、子供はいつできるんだ?」

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