第509話、豪華なプレゼント
「さて、マルカス君」
俺はストレージから出したプレゼント箱を手渡した。
「正式な魔法騎士になったのだから、そのお祝いも兼ねているんだが、受け取ってくれ」
「いいんですか、おれがもらってしまって?」
何だか恐縮しているマルカス。俺に仕えているので、まあ主からの賜り物ということになる。
「ウィリディスの騎士には、それにふさわしいモノが必要だろう」
中身を確認しろと促す。包みを開け、中から出てきたのは長さ二〇センチほどの筒状の物体。何かわからず、マルカスは首をかしげる。
「これは……?」
「光剣だ。そこのスイッチを押してみろ」
その瞬間、一メートルほどの光刃が出現した。隣で興味深げに見ていたジャルジーが「おおっ!」と声をあげる。
「光の剣だと!?」
「これが剣……」
「斬れるから、ここではあまり振り回すなよ」
マルカスは、周囲を気にして軽く振る程度に留める。
「ものすごく軽いですね……。怖いくらいです」
ふだん重い武器を振り回している彼からしたら、光剣は軽すぎるだろうな。
「お前は戦闘機にも乗るだろう? コクピットに持ち込める武器としてうってつけだ」
「あっ! なるほど!」
戦闘機などの乗り物に乗る時、携帯用武器の持ち込みはスペースを考えると難しいものがある。騎士であるからには剣を常に持ち歩きたいだろうからね。
「ちなみにそれ、実体型の剣にもなる」
モードスイッチで、魔力で生成した剣を具現化できる。儀礼的に剣を使う場合はもちろん、普通にミスリル剣並みに斬れる。
「実体型は、それなりに重量がありますね」
「見た目だけじゃなく実際に刃があるからな」
「素晴らしい……。団長、ありがとうございます! この剣、常に身につけ、貴方様のために振るう所存!」
うん、期待している。俺が頷くと、我慢ならなくなったかジャルジーが口を挟んだ。
「兄貴! お、オレにもマルカスと同じ剣をくれ!」
そう言うかもと思っていた。
「同じ剣でいいのか?」
「ああっ!」
反射的に、頷いたジャルジーだったが、すぐに眉をひそめた。
「ひょっとして、もっといい剣を作ってくれるとか?」
「剣については、またいずれな。それより、君には別のものを用意している。だが少し待て」
はやる公爵殿を抑え、俺は、エマン王とベルさんのもとへ。
「お義父さんとベルさんには、こちらを」
エマン王には、大蜘蛛の糸とミスリル銀を混ぜたマント。ヴェリラルド王家の紋章入りの赤いマントは、対物理、対魔法防御の加護が施され、毒を無効化し、炎にも燃えない。王の身を守る防具でもある。
「何という孝行息子よ」
嬉しそうに顔をほころばせるエマン王。そしてベルさんには、シックな赤色のマフラー。
「ほほう、マフラーね」
さっそく首に巻くベルさん。
「しかしこれは、この姿でしか着けられないか?」
「猫の姿の時は縮むようにできている」
エマン王にプレゼントしたマントと同じように魔法繊維で作られている。しかも――
「面倒くさがりのベルさん用に、洗濯しなくても常時クリーンな状態を保つ保護魔法をかけてある」
「お、そいつはいいな! ありがとよ、ジン」
いいってことよ。俺は、お待ちかねの様子のジャルジーに視線を戻した。
「さて、我が弟には兄さんのお下がりをくれてやろう」
「お下がり?」
「冗談だ。ちゃんと新品だよ」
パンパンと手を叩いて合図すれば、SSメイドたちが台車を運び込んだ。乗せられているのは――
「新開発のライトスーツ。まあ、魔法の鎧みたいなものだ。ウィリディスで最近作ったやつでね。俺も、先のシャッハの反乱の時にこれのプロトタイプを着て戦った」
「お、おおっ……!」
ジャルジーは広げられたライトスーツに目が釘付けだ。
「近衛にも似たようなインナースーツを配備しているんだが、使っている魔法繊維は特別製だ。防御力はもちろん、動きやすさも重視して跳躍力や筋力を底上げする」
「……見た目はシンプルだな」
全身を覆うインナー。装甲の部分は限定的だから軽鎧のように見える。まあ、そういうと思っていたから仕掛けをしてある。
「未来の王様だからな。多少見栄えをよろしくしておかないといけないとは思っていた」
腕のバンド部分のスイッチを押せば、軽鎧から一転、金の縁取りがされた金属鎧が魔力生成によって具現化した。マルカスの光剣、その実体型の応用だ。
「お気に召してくれたかな?」
「ああ、完璧だ、兄貴……」
憑かれたようにライトスーツに手を伸ばすジャルジー。
「これがオレの鎧か。い、いま着てもいいか?」
「ご婦人方の前で脱ぐなよ。後でな」
気持ちはわかるけどな。お前に脱ぎ芸なんて誰も期待していないぞ。
そこへベルさんが首をひねった。
「しかし、ジンよ。なんで鎧を形態変化させる必要があるんだ? 最初からそう作っておけばいいのに」
「よく気づいてくれた」
ベルさんに頷いた後、俺はジャルジーの肩を叩いた。
「お前には、もうひとつプレゼントを用意した。ここには運べないから、少し外に行こうか」
・ ・ ・
それを目にしたジャルジーは絶句した。
ジャルジー専用新型パワードスーツ。先日、ユナに派手だとコメントされた、ヒーローロボットチックな機体がそこにある。
「対大帝国戦に向けて、備えておくのは必要だろう」
「……」
「いざ戦場に出るときのための鎧だ。だが、あまり無茶なことはしてくれるなよ。未来の王様」
「兄貴……」
ジャルジーは泣きそうな顔だった。
「今日は、人生最良の日だ。オレは、今日のことを生涯忘れることはないだろう」
ありがとう――頭を下げる公爵。やめろよ、そんな風にされる俺まで何か目頭が熱くなってくるじゃないか。
「頭を上げろよ、未来の王様だろう」
「ちなみに、この魔法甲冑の名前は?」
「決めてない。自分で命名したいんじゃないかって思ってね」
「そうか……」
ジャルジーはパワードスーツを見上げ、ぽつりと呟いた。
「ケーニヒス・ティーゲル」
え? 今度は俺が絶句する。王の虎、キングタイガー。……えぇ、俺の世界で存在したかつての重戦車の名前じゃんそれ。




