表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/1926

第49話、レクリエーション


 真新しい制服。魔法騎士学校の制服を見やる俺。青と白を基調とした、どことなく貴族服じみた優雅さを感じさせるそれ。……三十にもなって学校の制服かよ。

 この見た目にして唯一の失敗だったと言わざるを得ない。


 人生やり直しをかねて、十代後半の姿だが、例えば若作りせず元と同じ年齢の外見にしておけば、王子様も騎士学校の生徒にしようなんて馬鹿なことは思いつかなかったはずだ。


「まあ、いまさら言っても遅いが」


 今姿を変えたら、それこそ説明がつかない。まあ、それもアリと言えばありかもしれないが、仮にも知り合いが命を狙われているってのを放置するのも寝覚めが悪い。


「アーリィーは可愛いしな……」

「キザくせぇ」


 ベルさんに速攻突っ込まれた。


 さて、宿を引き払い、魔法騎士学校の青獅子寮へ引っ越した俺とベルさん。長く泊まっていたので宿の人たちから惜しまれたが、魔法騎士学校に転入といったら『おめでとう』と言われた。……別にめでたくないが世間ではそう見るのだろう。


 アーリィーの部屋の隣の、来客用の客間だったところが俺の部屋になった。……王子様の私室の隣かよ。

 ちなみに彼女の部屋とは反対側にあたる俺の部屋の隣は、俺が個人的に使用していい事務室、というか魔法工房となった。


 この処置で、王子専属の執事長であるビトレー氏以外からは、だいぶ好奇の視線にさらされる結果になったが。


 無理もない。王子が護衛を雇った、というだけでも驚きなのに、自分のすぐ隣の部屋を使わせ、さらにかなりの部分で優遇している。まさに王子様の『お友だち』と呼ぶにふさわしいほどの歓待ぶり。おまけに下々の者とは一緒にご飯を食べない身分の王子様が、俺とベルさんと同じテーブルで食事をする。……普通では考えられないことだ。


 王子様の手配や配慮は、ランクの低い冒険者で、どこの馬の骨とも知れない俺には不相応ではないか、と近衛も含めて思う者も少なくないようだった。


 その筆頭は近衛騎士にして、アーリィーを警護する隊を率いる、オリビア・スタッバーンである。


 赤毛の、凛とした女騎士は、俺に警戒の目を向けていた。素性の知れない者を王子の傍に置くことなど言語道断。王子自身が言わなければ決して納得はしなかっただろうな。……いや、たぶん、口には出さないが納得はしてないと思う。


 先の反乱軍騒動において、アーリィーを助けた冒険者であると説明はされた。アーリィーは自分にとって命の恩人であるとも。恩人ならこの歓待もあり得るか……と、早々鵜呑みにする者ばかりではないということだ。


「ジン・トキトモ、少し私に付き合ってくれ」


 近衛騎士のオリビア殿は、硬い表情で俺を誘った。

 デートか? などと軽口を叩ける雰囲気はなかったが、何となく予想はついていたので断らなかった。


 つれていかれたのは、寮一階の奥を抜けた訓練場。芝の植えられた庭のようなそこには、近衛の騎士と魔術師たちが数名。……おいおい、校舎裏に呼び出して闇討ちかこりゃ――などと安直な想像が脳裏をよぎった。


「いちおう、貴殿は王子殿下の命の恩人で、これから学友となる。……が、同時に殿下をお守りする護衛でもある」


 オリビアの言葉には、温かみの欠片も感じられなかった。敵意にも似た冷たさ。


「本来、護衛は我ら近衛の役割であるが、殿下が望まれている以上、貴殿にも働いてもらわねばならない。だが懸念もある。貴殿の実力のほどを我々が把握していないことだ」


 だろうね。俺もアンタ方の実力ってのがわからない。


「そこでだ、ジン・トキトモ。不躾ではあるが、貴殿の力を試させてほしい」


 要するにテストであろう。何故俺がそんな面倒なことを……とは思わなかった。オリビアら王子の身辺を守る者の立場からすれば、この流れは当然である。王子を守る立場上、その護衛に参加する者の能力把握は必須だ。


「承知した。それで、何をすればいい?」

「理解が早くて助かる。いくつか試したいが、その前に貴殿は魔術師(マジシャン)らしいが、得意属性は?」

「得意不得意というのは特にない。よほどのマイナーなものではない限りは一通りは」


 ざわ、と近衛の魔術師たちが顔を見合わせる。オリビアは眉をひそめた。


「それは火、土、風、水の四大属性を扱える、ということか?」

「光と闇も。攻撃、補助、回復もある程度は」


 おいおい、と周囲の魔術師たちが言葉を失う。


「六大属性に、三系統すべて、か。なるほど、その発言が本当なら、殿下のおっしゃるとおり優秀な魔術師だろう」


 オリビアは、発言だけでは信じないといわんばかりの口ぶりだった。


「では早速、見せてもらおう。なに、簡単な的当てだ」


 20メートル離れた先にある的めがけて、魔法をぶつける簡単なゲーム。魔法は何を使ってもいいが、ちゃんと当てたことがわかるものという条件だ。つまり、何を当てたか目に見える魔法にしてくれ、ということだ。


「ただ当てるだけでは投射系攻撃魔法が使える魔法使いなら誰でもできる。当てる精度のない奴など論外だから、この際当たるものとしてみるが、魔法の早撃ち能力も見せてもらおう」


 短詠唱も見るということか。王子を守る仕事柄、瞬時の対応を求められる事態も想定しているということだ。


 そう思っていたら、隣の的を、近衛の魔術師が撃つらしい。二十代半ばの細身の男である。なるほど、この魔術師より早く、強く、正確に的を吹き飛ばせばいいんだな。


 さて、実力のわからない魔術師相手に余裕ぶっこくほど、俺もなめプはしない主義だ。本気出しすぎない程度にやらせてもらおう。


『そういうのをなめプ言うんじゃねえの?』


 ベルさんの念話での突っ込み。俺は微笑した。


『本気出したら、的が消えちまうだろう。それじゃ当たったことがわからん』

『ぶはっ、ちげぇねえ!』

「それでは両人とも。私の合図で魔法を撃て」


 オリビアは、俺と、近衛魔術師の男に言った。


「よーい……はじめ!」


 風。


「炎極の――」


 その瞬間、俺の前の的が根元から吹っ飛んだ。


「はし、ら……」


 隣で魔術師の詠唱が途切れる。オリビアや騎士、そして魔術師たちが目の前の光景に目を見開き驚愕した。


 言葉はなかった。


 俺の的は俺の放った風に吹き飛び、詠唱途中だった魔術師は的を撃つのを忘れてしまう。


『おいおい、ジンさん。的が消えちまったぞ?』


 ベルさんの皮肉を他所に、ギャラリーだった魔術師が声を上げる。


「無詠唱魔法だとー!!?」


「というか、何が起きた? 風の魔法か!?」

「た、たぶん。火とか氷とか、そういうのは見えなかったような……」

「で、でも風の魔法で、的があんな折れ方するのか?」


 魔術師たちが驚く中、オリビアは眉をひそめ、騎士の一人に的を探してくるように言った。


「的を当てろと言ったが、根元を吹き飛ばしたのでは、的に当たっていないのではないか?」


 本職の魔術師たちが騒ぐ中、オリビアは最初こそ驚いたがすぐに冷静さを取り戻した。だが吹っ飛んだ的を探しにいった騎士が戻ってくると、一同はさらに驚くことになる。


「的に当たっています。……えっと、切り傷のような痕が五つ」

「無詠唱魔法で、的に切り傷を五箇所ーっ!?」

「いや、的の支えの棒も切ってるから六箇所だ!」

「どうやったら、あんな一瞬でこんな……」


 想像力が欠如しているよ君たち――俺は、驚く魔術師たちを興味なく見やる。


 頭の中で、魔法を思い描く。風という一言に、どのように風を描くか。その気になれば的を八つに裂くことだってできる。想像する魔法、想像魔法とはそういうものだ。 


 なるほど、とオリビアは頷いた。


「無詠唱で、この威力と技。確かに魔法に関しては認めざるを得ないな、貴殿の実力は。だが、果たして魔法以外ではどうなのか」

「……というと?」

「市街地などで、周囲に人がいる中、魔法で応戦できないような状況での襲撃の場合、どう対応するのか、私は興味がある」


 オリビアは俺の前に立つと、真顔で告げた。


「君は魔術師だが、近接戦や武器を使った腕前のほうはどうだろうか? いやなに、もし近接戦に自信がないというなら、それでもいい。貴殿は魔術師だから騎士のように戦えというのは無理があるからな」


 遠まわしだが、魔術師への皮肉だろうか。いや、単に俺のことが気に入らないだけだろう。いいさ、その挑発、乗ってやるよ。


「オリビア殿、あなたの指摘はもっともなところではある。どうだろうか? 近接戦のイメージを掴むのを兼ねて、私と騎士殿で模擬戦をやるというのは? ああ、もちろん、魔法については怪我をしないように攻撃魔法は使わない。……どうかな?」

「……ほう」


 オリビアの表情に初めて笑みらしきものが浮かんだ。もちろん、好意的なものではなく、攻撃的なものだったか。


「なかなか面白い申し出だな。よろしい、お受けしよう。相手は私が務めさせてもらう」


 模擬剣と私の盾を持ってこい――部下の騎士に言うと、オリビアは俺に挑戦的な視線を向けた。

レクリエーション(意味深)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リメイク版英雄魔術師、カクヨムにて連載中!カクヨム版英雄魔術師はのんびり暮らせない

ジンとベルさんの英雄時代の物語 私はこうして英雄になりました ―召喚された凡人は契約で最強魔術師になる―  こちらもブクマお願いいたします!

小説家になろう 勝手にランキング

『英雄魔術師はのんびり暮らしたい 活躍しすぎて命を狙われたので、やり直します』
 TOブックス様から一、二巻発売!  どうぞよろしくお願いいたします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ