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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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502/1941

第500話、プレゼント・チョイス


 俺が商業ギルドからウィリディスに帰ってくると、アーリィーが待っていた。


「どこに行ってたの?」

「商業ギルド」


 買ってきたものはストレージ内にしまってあるので、お買い物内容は悟られない。クリスマス・パーティー用のものは、まだ内緒。

 ただ、アーリィーは少々ご機嫌斜めのご様子。


「ボクも行きたかったな」


 怒っているわけではないが、甘えた感じで抗議してきた。言い訳をするつもりはないので、俺は真面目ぶって答えた。


「面倒な事案があってね。商業ギルドに探りを入れてきたんだ」

「面倒って?」

「他国からのスパイ」


 スパイと聞いて、アーリィーの表情がこわばった。ま、そりゃそうだ。自分の国で敵対存在が潜伏しているなんて聞いて、嬉しいと思う人間はいない。


「大帝国が、この国に攻めてくるって話は知ってるね?」

「うん、ジンがそれに備えて準備しているからね」

「大帝国はスパイをこの国に送り込んでいる。また本国からその増援も派遣されるって、潜入させているシェイプシフター工作員が知らせてきた」

「嫌な話だね」


 アーリィーは露骨に顔をしかめた。


「でも、どうして商業ギルドなの?」

「商人ってのは職業柄、情報収集能力が高い。スパイの隠れ蓑の一つとして好まれる」


 他には傭兵や冒険者、僧侶や巡礼者、旅人などなど。


「ここ最近、この国にやってきた商人で怪しい奴をピックアップしてもらいにね。商業ギルドは、商売に関してよそ者に結構探りを入れている」

「なるほど」


 勉強になった、という顔をするアーリィー。


「ねえ、ジン。ボクに何か手伝えることってある?」

「ん?」


 上目遣いに言ってくる嫁さんに、俺は目を丸くする。


「ジンってさ、働き過ぎだと思うんだ。休んでって言おうと思ったんだけど、今のスパイの話を聞いたら、そうも言ってられないかなって……。だったらせめて、何か手伝いたいんだよ」

「……」


 心配させてしまっていた。ごめん――と言いかけて、思いとどまる。代わりに。


「ありがとう」


 俺はアーリィーの頭をそっと撫でた。健気(けなげ)じゃないか、手伝いたいって言ってくれるってさ。


 あまり心配かけないように、仕事のことは振りたくなかったけど、蚊帳の外にしておくのもよくないな。せっかくだし、クリスマス・パーティーの件で彼女も巻き込んでしまおう。ちょうど今からその準備にかかろうとしていたし。

 今は遠ざけるより、共犯に巻き込んだほうが、彼女も喜ぶのではないか……。


「本当は当日に驚かせようと思っていたんだけど、クリスマスにはプレゼントを贈る、というイベントがあってね……。うちにいる人たちにこっそり用意していたんだけど」

「え!? プレゼントを、渡す……?」


 アーリィーがヒスイ色の目を見開いた。


「それって、ものすごく大事なことじゃない!?」


 そう、だから内緒にしておいて、当日びっくりさせようって魂胆なんだよ。


「で、皆にプレゼントを用意していたんだけど、ちょっと難儀しているんだ……」


 特に、この世界の女の子が、もらって喜ぶプレゼントって何だろうってね。人が聞いたら女の子だけかよ、って言われるかもしれないが、すでに男子連中の分は、もう決めたし準備中だから迷ったりはしていない。


「プレゼント選び、手伝ってくれるか?」

「……え? あ、うん。ボクでよければ手伝うよ!」


 一瞬、アーリィーが心ここにあらず、といった様子だったが、すぐに我に返った。……いま、何考えてた?



  ・  ・  ・



 どうしよう!?

 アーリィーは混乱していた。


 ――クリスマスにプレゼントを渡す習慣がある? どうしてそんな大事なことを黙ってるかなーっ!


 そもそもクリスマス・パーティーなるものだって突然ジンが言い出したことであり、そんな異国の風習など知るはずもない。だから愕然(がくぜん)となる。


『ボクは、ジンにプレゼントを用意していないっ!』


 これはよくない。ジンが皆を驚かせようというのは、彼らしくはあるのだが、だからと言って、こちらがもらうばかりというのもよくない。


 事前に知ったのは幸か不幸か。しかしパーティーは二日後。といっても、自由に時間が使えるのは実質、明日一日ということになる。


 ジンが秘密にしているということは、こちらも秘密裏にプレゼントを用意して、彼をビックリさせなくてはならない。


 ――でも、ジンがもらって喜ぶものって何?


 彼には感謝してもしきれない。性別を隠し生きていた呪縛を解いて、自由に生きる道を与えてくれた。何度も命を救われたし、彼と過ごす時間は、アーリィーにとっては宝物だ。


 だからこそ、感謝のお礼をしたい。自分がどれだけジンを愛しているか、その気持ちを全身全霊で伝えたい。

 プレゼントも、そのひとつの形でなければならない。


 だがここで、アーリィーは大きな障害にぶつかる。実は……アーリィーはこれまでの人生において、誰かにプレゼントを渡したことがない!


 王子として、貴族の付き合いで贈り物をしたことはある。姉や妹のプレゼントもあるにはあるのだが、すべてアーリィーに仕える人間に贈るものについて任せていた。

 だから、自分自身で選んだことがない!


 困った。時間がないのもさらに焦りに拍車を掛ける。


 ジンが、ウィリディスにいる人間に渡すプレゼントについて、アーリィーにあれこれ相談してきた。彼はなんと言っていたか……。そう。


『その人がもらって嬉しいものがいいよな』


 彼がアーリィーと相談した選定基準は、もらう人が『欲しそう』か『いらなさそうか』の二択だった。

 その考え方を応用して、プレゼントを選んでみれば何とか……。


 光明が見えた気がした。が、同時にジンの事を考えて、またも障害にぶつかる。


 ジンが欲しそうなものって何だろう?


 高価な武器? 防具? でもそれはジンが自分で作れる。戦車とか戦闘機とか、アーリィーのおよびのつかないものを考えだし作り出してしまう。

 たとえば魔法具だって、大枚はたいて手に入れたとしても、きっとジンが自作したもののほうが性能が上だ。


 悩んだまま、ウィリディス地下屋敷のキッチンへ行く。

 夕食の準備の時間だ。お姫様であるが、ここでは自分のやりたいことがやれる。料理が趣味になっているアーリィーもメイドたちに混ざる。

 だがプレゼントのことで悶々としていたから、メイドのネルケが声をかけてきた。


「アーリィー様? 如何なさいました?」


 彼女は最近ウィリディスに来たが、付き合いでは一番長いメイドだ。些細(ささい)なアーリィーの表情の変化も見逃さない。


 クリスマス・パーティーのプレゼントで悩んでいる、と言いかける。だがジンがプレゼントの件を秘密にしていることを思い出し、ここで言うのはまずいと思い自重する。

 だが「何でもない」と言って、ネルケが納得するはずがないのは経験上わかっていた。


 キッチンには、他にサキリスにクロハ、そして橿原(かしはら)トモミがいる。だから、クリスマスの件は伏せたまま、思っていることを言ってみる。


「ボクは殿方にプレゼントしたことがないんだけど、もしあげるとしたら、何を贈ったら喜んでもらえるかなって思って」

「プレゼントですか……?」


 ネルケが思いがけない言葉に怪訝(けげん)な表情になる。クロハとサキリスも同様だ。

 だが橿原トモミは「あ」と口を開いた。


「それって、クリスマス・プレゼントのことですか?」


 え――まさか看破されるとは思わず、アーリィーは絶句した。――何で知っているの!?


「何ですか? クリスマスプレゼントって?」


 サキリスが当然の疑問を口にした。


 やっちゃった――アーリィーは頭を抱えた。

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