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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第477話、学校行事を疎かにするべからず


 BVS――ブロックヴィークルシステムによる陸上戦闘車両プランは動き出した。


 まずは試作モデルを作り、それを運用してみて決める。さすがにテストもなしに、本格量産は失敗したときが怖いからな。


 AやC、メイン推進ブロックであるDパーツに搭載する浮遊推進装置は、パワードスーツやバトルゴーレムで使っているものを流用しつつ、車両用にサイズなどを調整していく。


 各種操縦系の部品や指令を各部に伝達する魔力伝達線、装甲材などは魔力生成で作る。貯蔵魔石をどんどん使って、製作スピードを上げる。


 主力戦車用の主砲は、大帝国の装甲車両を遠距離から簡単に撃ち抜ける威力を持たせつつ、携帯する砲弾の兼ね合いから、76ミリ砲に決まった。実質3インチ。


 仮想敵である大帝国の戦車の主力が40ミリ砲程度で、装甲も同レベルに対応しているので、76ミリ砲では余裕過ぎるのだが、一応、大型魔獣と交戦することも考えて、この砲となった。

 自軍が敵より数の上で劣勢である場合が大半だと思うので、砲弾の搭載数を重視した格好だ。


 そんなわけで、戦車のキモである76ミリ砲を、さっそく製作。パワードスーツ用実弾系ライフルや航空機用搭載機関砲は作ったが、このサイズの実弾系の砲は初めてとなる。いきなり100ミリ以上の砲にしなかった理由のひとつでもある。


 主砲発砲時の反動を軽減する駐退機を作って取り付ける。いわゆる発砲時の衝撃を砲身のみを後退させることで軽減させる装備である。魔法系の砲だと反動がほぼないから不要なのだが、実弾系の戦車搭載砲となると駐退機がないと衝撃で自滅する羽目になる。


 とあれこれ製作していくわけだが、その間にも色々やらなくてはならないこともあるわけで。


 本日は、アーリィーとマルカスと共に、魔法騎士学校へ。いよいよ最上級学年の卒業が近いのだが、その最後のイベントとして、校内武術大会が開かれるらしい。


 最上級学年の成績上位者16名によるトーナメント。ただし、魔法騎士学校の校内大会なのに、魔法は使用禁止。使用するのは模擬剣だと言う。


 アクティス学校の伝統、といえば聞こえはいいが、要するに卒業を控えて、生徒に大きな怪我をさせるわけにはいかないという配慮だろう。


 で、その武術大会だが、ばっちり俺がその上位者枠に入っていた。生徒たちも、俺が出るなら優勝は決まりだな、というどこか諦めているのか白けているのかわからない微妙なムードだったので、学校側に辞退を申し入れた。……まあ、それがなくても参加したいとも思わないけど。


 生徒として一年もいなかった俺が、三年間努力してきた生徒たちの真剣勝負の場に出るわけにはいかない、とかそれっぽい理由を重ねることしばし、俺の辞退は認められた。


 なお、アーリィーも王族権限を利用して参加を辞退し認められた。王子様だったなら、卒業後の立場もあるから是が非でも出て優勝を目指すところなのだが、もうお姫様確定である彼女に、そういう名誉ポジは不要だった。お姫様が健闘したら、参加した男性生徒たちの面目が――とか理由を重ねて。


 そうなると、うちのマルカス君が俄然(がぜん)、優勝候補として注目される。最上級学年成績上位者トップ3に入る彼だ。……残り二人が誰かは言わずもがな。ちなみにサキリスが在籍していたなら、マルカスはトップ5に入る、という訂正が入るが。


 彼には大会を辞退する理由がないし、貴族生であるから、俺やアーリィーが出ないのなら優勝してもらいたいと思っている生徒も多かった。参加資格のない貴族生たちからは、庶民出の生徒に優勝をかっさらわれることが不名誉であるから特にである。


「油断はしてはいけないが、マルカスが優勝で決まりだな」


 参加しないことをいいことに、俺は他人事のように言うのである。マルカスが優勝するだろうことについて、アーリィーの見解は。


「油断しなければ、優勝だね」


 俺と同じ意見だった。油断しなければ――というのは、実際戦ったら何が起こるかわからないからだ。


 ただ最上級学年上位16名って、違うクラスの奴もいるとはいえ、だいたい実力がわかってるんだよなぁ。学業優秀で、腕の方はそこそこという生徒もいるが、そのあたりで順位変動はあるかもだが、優勝候補が変わるほどではない。


 そして最上級学年対象の校内武術大会が開催された。


 アクティス魔法騎士学校の校庭に特設会場が作られる。試合を行う試合場は縦横10メートルの正方形。その周囲に観客席が設けられ、ギャラリーはそこに入る。


 実際に試合するのは16人だが、最上級学年生徒は全員参加ということで、客席で観戦することになっている。

 ちなみに客席を用意するのは下級生たちの仕事で、観戦するのは生徒だけでなく外部――参加騎士生の身内や内定が決まっている職場の人間、その他貴族や商人ら野次馬もいたりする。


 はい、会場に行ったら、参加者そっちのけで、俺とアーリィーに挨拶(あいさつ)に来る人ばかりなんですけどー。


「貴殿がジン・トキトモか。先の武術大会の活躍、見ておったぞ!」

「たいした腕前だ。どうかね? 卒業後は我が――」

「今回は試合に出ないのですか? あなたの活躍を楽しみにしていたのですが――」


 苦笑いしかできん。


「アーリィー殿下、本日はとてもお美しく――」

「最近では女性用衣装を好んでお召しになられておられるとか。よろしければ王都の最新ファッションを――」


 特に野次馬の範疇(はんちゅう)に入る方々の、俺やアーリィーと何かしらの関係を持ちたい人たちの挨拶が相次いだ。


 俺は国の武術大会や、先日のシャッハの反乱騒動の解決に尽力した功労者として。アーリィーはお姫様とはいえ王族として。


 元王子様にして現お姫様の制服&スカート姿に、少々ぶしつけな視線をよこす者もいた。この寒空だからスカートの下には黒タイツ。艶めかしい。 


 試合が始まるということで、ようやく客席に着くことができた俺とアーリィー。俺は思わずため息をつく。


「有名になんかなるものじゃない……」

「こういうのはいつもだよ」


 さすが王族だけあって、アーリィーは慣れているようだった。俺は「やだねぇ」と呟いた。英雄時代のちやほやされたのを思い出す。


 にしても、12月。それも野外で一時間から二時間。なんでこの時期にやるんだよ。――とか言いつつ、エリサに作ってもらった魔法薬(ヒーター)をちゃっかり飲んでいる。


 マルカスが参加している校内武術大会は、かくて開催された。

 外野から見れば、魔法騎士学校の卒業間近な生徒同士の試合なのだから、それなりに見物だろう。だがすでにその実力を把握している在校生にとっては、大して面白いものでもない。


 学校側は非公認ではあるが、生徒の間では誰が優勝するか賭けが行われている。

 だが、今年はあまり盛り上がっていないらしい。……重ねて言うが、サキリスが生徒として残っていていたら、たぶんマルカスと賭けが二分して、同期生たちもより熱のこもった観戦ができただろう。


 ちなみに優勝候補筆頭はマルカスで、賭け参加者の9割。残り1割を三人ほどが分け合っている形だ。その中には、午後のお茶会部長のエクリーンさんや、かつていじめを受けていた平民出のテディオがいる。


 貴族の令嬢を絵に描いたようなエクリーンさんは、最上級学年の順位では6位。貴族生たちにいじめられていたテディオは15位だったりする。


 テディオは平民出だが、成績がいいから貴族生から目の敵にされていたのだろう。だがそうしたいじめ連中がいなくなった影響で、今では本来の実力を発揮できるようになったようだ。……あの時、手を出さなかったら、彼はこの場に立てたんだろうかね。


 さて、肝心の試合であるが、マルカスの初戦のお相手は、ランキング8位の男子生徒。マルカス同様、堅実さが売りの、どちらかと言えば地味な相手だった。


 長い試合になるかな、という周囲の予想に反して、マルカスは開始早々に相手の防御を崩し、一本を取った。

 あっさりと決着である。まあ、そうでなくてはね。


 マルカスは、ベルさんやリーレに鍛えられている。それに実戦経験は、おそらく他の生徒たちの比ではない。

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