第476話、BVシステム
足回りを浮遊推進装置にした陸上戦闘車両群の計画プランを俺は考えた。
必要とするのは、まず一つに、敵陸上集団や初歩的な戦車群を攻撃するMBT――メイン・バトル・タンク。すなわち主力戦車。
二つ、戦車群と行動を共にする歩兵を数名搭乗させる歩兵戦闘車。
三つ、浮遊推進装置を備えた高速輸送車両。武器弾薬、人員を輸送するもので、これの派生で、パワードスーツ用のフライングボードも作ろうと思った。
四つ、偵察用車両。戦車型より小型かつ高速性能を持つ。
また、それとは別に鉄馬のようなバイク型も欲しい。
と、あれこれピックアップしつつ、イメージを固めるためにイラストにしてみる。……戦車の画なんて子供の頃に描いて以来じゃないかな?
ミリタリーは人並みに関心のあった男の子だったから、本とか色々見てきたけど……うーん。
ああでもないこうでもない何枚も描いてみるが、どれも同じように見えるんだよなぁ。戦車ってさ。
いっそ、パーツを共有化するか。色々作るより、部品を絞って生産の効率化を上げるとか。
たとえば車体を同じにして、砲塔を換えて主力戦車と歩兵戦闘車に分けるとか、フライングボードを輸送車として使い、荷物は別コンテナを牽引するとか――
……。
同じ……組み替え……ブロック。
そのとき、俺の中で一つのアイデアが浮かんだ。
車両の部位をブロックごとに分け、その組み合わせで、必要な車両を形成する。
戦車にも歩兵戦闘車にも、輸送車にも偵察車両にもなる――俺は、分けたブロックを組み立てるように、それぞれの車両に当てはめていった。
かくて、BVS――ブロック・ヴィークル・システムと名付けた、各種戦闘車両のプランがまとまった。
ブロックは、A、B、C、D、Eの五つに分けられる。
Aはゴーレムコア制御の無人浮遊ユニット。パワードスーツ用のフライングボードの本体となったり、無人車両の本体となる。
Bは、砲塔ブロック。主力戦車用の実弾系主砲をB1、魔法砲=魔砲や重機関銃を搭載した歩兵戦闘車用はB2とナンバーが付く。
Cは有人用の操縦ブロック。ドライバーと車長、それをサポートするゴーレムコアが搭載されている。基本は人が操縦できるようになっているが、ゴーレムコアの無人操縦も可能だ。
本来、戦車といえばドライバー、車長に加え、照準と発射担当の砲手、砲弾をこめる装填手など、四人や五人で扱うものだ。
だが自動化を進めたウィリディス製戦車の定員は二名である。砲手は車長かゴーレムコアが担い、砲の装填作業はBブロックの砲塔が自動で行う。
Dは、浮遊ユニット。Cブロックを中心とする戦車ユニットの脚となる。AかCの左右に取り付けられ、高速推進のためのブースターであり、砲の発砲による反動を抑える制動補助を担う。
2個で1セットであり、車体側面に1基ずつ取り付けられるが、Dブロック同士で接続することで、輸送用の移動テーブルにすることも可能だ。
Eは輸送ブロック。Cブロックの後ろに接続される。歩兵戦闘車における兵員輸送室。戦車型の継続戦闘能力を重視した予備砲弾庫、あるいは物資輸送車用の輸送コンテナなど。
この五つのブロックの組み合わせは、以下の通り。
主力戦車:B1砲塔、C、D。
歩兵戦闘車:B2砲塔、C、D、E(兵員輸送室)
軽戦車:A、B1ないしB2、C。
輸送車:A、C、E(1個から複数の連結可能)もしくはA、E(無人輸送車)。
高速偵察車:Aのみ。
フライングボード:Aのみ、もしくはA、D。
主力戦車は、実弾系主砲(100ミリ前後の砲?)を一門備え、大帝国の戦車や装甲物、あるいは比較的大型魔獣と戦う。エクスプロード砲弾を使用した対歩兵にも対応する。
歩兵戦闘車は、8から10人程度の完全武装兵を運び、反動がほぼないマギアカノーネや20ミリ重機関砲で歩兵を援護する。
軽戦車は、メインの浮遊ユニットであるDブロックがない戦車で、最大速度や砲使用時の安定性に若干劣るものの、横幅を抑えられるため、比較的狭い地形にも対応可能だ。
またワスプヘリや汎用偵察機のポイニクスにも載せられるサイズになる……予定だ。
輸送車は、操縦区画のあるCがあるのが有人仕様。無人浮遊ユニットと輸送ブロックのみのものが無人仕様である。Eブロックを列車のように連結させていくことで、輸送量を増やすことができる。Cブロック付きの有人仕様は、Bの砲塔ブロックも載せられるので、自衛戦闘もできる。
そして高速偵察車とパワードスーツの足代わりのフライングボードは、Aブロックの無人浮遊ユニット。Dの浮遊ユニットを接続すれば、より高速で戦場を移動することができるだろう。
上記のように、共通ブロックが存在することで、たとえば車両ごとに操縦室を設計、製作する必要がなく、同じもの一つを量産すれば、それが各種車両に適合する。……さすがに砲塔はタイプに合わせて製作する必要はあるが、接続するCブロックにはサイズを合わせる。
こうなると、一両単位で作るのではなく、ブロックごとに生産、使うときに組み合わせていく形になるだろう。
ちなみにAからEまでのフルセットを20両分生産した場合、主力戦車ないし歩兵戦闘車20両、高速偵察車ないし輸送車20両を同時に用意できる計算になる。
とまあ、机上の空論ではこうなる。実際に作ってみて、予定通りの性能を発揮できるか、不都合がないかを確かめるしかない。
組み替え――つまるところブロックごとの合体時に、きちんと動作するかについては、こちらはバトルゴーレムの部位交換ですでに実用化しているので、さほど心配していない。
この部位交換は、戦場での破損、応急修理を迅速に行い、戦線復帰を早めるために考案、実装されたものである。
壊れた部位を修理を施す間、戦線離脱されるより、腕ごと新しいものを取り付けたほうが復帰が早い。某あんパンヒーローの新しい顔の交換を例にすればわかりやすいだろう。その分、予備パーツの用意が必要ではあるが。
戦車案ができた俺は、さっそく兵器に精通しているマッドとリアナのもとに話を持っていく。こういうことを相談できる相手がいるというのはいいことだ。ベルさんやダスカ氏は、この手の話を理解しづらいからね。
「共通パーツが多いのは、整備で使い回せるからいいな」
マッドは、そういいつつ首をかしげた。
「が、このブロックごとの接続は、専門の工場でやるんだよな?」
「というと?」
「いや、被弾したものを交換するなり、戦地で形態を変更したい時があっても、結局、工場に戻らないとできないのかと思って」
「戦場でも交換できるよ。ゴーレムコアがブロック間を魔力で引っ張ったり分離させたりする予定だ。それに各ブロックには簡易な浮遊魔法で浮かび上がるようにする。多少苦労はするけど、人力でも換装ができるように」
「よく思いつくな」
「昔、人型兵器ものをネタに小説を書こうと思ったことがあってね」
「小説……?」
マッドが珍しく面食らう。俺は苦笑する。
「ロボット兵器にも『衛生兵』がいてもいいと思ったんだよ」
片手を失った人型ロボットが、戦場で予備の腕パーツをつけられて、即復帰したら――というやつ。足を喪失したら、そこで戦闘に参加できないとか、もったいないじゃないか。
今回は戦車だが……そうだな。パワードスーツやバトルゴーレムにも予備パーツを持たせた衛生兵型を用意してもいいかもな。
ディスカッション中に、ひらめくこともある。そういえば、さっきからリアナは黙っているが。……何かあるかね、軍事顧問殿。
「人型兵器の衛生兵案、いいですね」
そっちに食いついてきたか。




