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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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446/1941

第444話、空母のお話


 大帝国戦に向けて、航空艦隊を整備する。

 そのために、空母が欲しい。ウィリディスの航空部隊を運用する能力を持った艦が。


 しかし、大帝国がヴェリラルド王国ほか西側諸国への攻勢を開始するとして、最短は来年春。もう4、5ヶ月しかない。

 独自に戦争準備を進めているが、空母一隻だけに構っている余裕は残念ながらない。仮に大帝国戦が始まれば、俺は戦争に注力しなくてはならないだろうから、あまり大きな建造には携われなくなると思う。


 幸い、大帝国は空中艦隊を保有するが、航空母艦は存在せず、目下ライバルというべきモノがない。

 敵戦艦や巡洋艦には、アンバル級が2隻ほどあれば何とかなる。で、あるなら空母は、航空機を運用する最低限の性能さえあれば、それ以外の能力には目をつぶって建造期間短縮を図り、開戦に間に合わせるのだ。


 こっちはダンジョンコアによるコピーコアやゴーレム、シェイプシフターを使うことで、人間を必要としない。なので人員面は最小で構わない。


 あるいはシェイプシフター戦闘機であるファルケだけを使うと言うなら、居住区画や休憩所すらいらない。

 一応、ドラケンやトロヴァオンといった有人機も使えるようには作るつもりだ。


 だから、計画中の空母は、新たに生成が必要なパーツは最低限。残骸を利用して、節約できるところは節約する。簡素な設計、最低限の能力のみに厳選する。


 現状のプランは、ブロック化した格納庫を二つ連結し、それに操艦用の艦橋と居住区を艦首に付け、後部に推進用のエンジンブロックをくっつける。それぞれ連絡用の通路をつけて完成、みたいな、実に大雑把な造りとする。


 おそらく機関もあり合わせで間に合わせるので、艦は低速。格納庫に弾薬庫も放り込むから艦載機搭載枠を圧迫するし、居住性については人数を絞ることで最低限となる。

 現代レベルで言えば、軽空母で最低限の航空機運用能力を持っているだけの低性能艦となるだろう。


 だがそれでもいいのだ。

 どうせ、うちの航空隊は、ドラケン、トロヴァオンは全機を合わせて30機に満たず、垂直離着陸が可能な機体だから滑走路はいらない。飛び立つために必要な能力を艦に求めることも少ない。艦体上面を露天甲板としてその上に航空機を載せて運ぶ、という使い方もできる。


 ただ露天甲板での航空機の運用を考えるなら、航空機用と弾薬輸送用のエレベーターが必要になるから、そのあたりは適当に済ませずキチンと用意しないといけない。


 あと格納庫ブロックは、前方と左右の壁を開閉式にして、エレベーターを使わなくても外に艦載機を出せる仕組みにしておこうと思う。


 という話を、ベルさんやアーリィーたちにしたのだが、空母という存在を知らない皆には、比較対象がないためピンとこないという顔をされた。


「ジンに任せるよ」


 ベルさんはさほど深刻さを感じさせずに言った。他の皆も同様だ。ダスカ氏とユナは手伝いますと言ってくれた。

 ただ、一応、自衛用の装備くらいはつけておいたほうがいいのでは、と意見が出た。


 装甲はほぼないが、魔法障壁を搭載し、船体に対空用のサンダーキャノンを数基搭載するという案で話はまとまった。大帝国に船はあれど戦闘機はないが、飛竜などの飛行生物には備えておこうということだ。


 かくて、航空艦隊案の披露は終わった。


 まとめると、アンバル級軽巡2隻、同級改装の航空巡洋艦ないし揚陸艦1隻、軽空母1隻の4隻を、大帝国が侵攻するだろう春までに戦力化する。


 艦の人員はコピーコア、ゴーレム、シェイプシフターが主になるので、人員を募集することも訓練を課す必要もない。


 相変わらず人件費が極端に低い我が勢力である。軍事においても、組織費用の割合で一番大きいのが人件費だというから、そこが少ないのは実に有利な点だ。……その代わり、俺のワンマン具合が極端であるのが欠点とも言える。


 俺が倒れたら、組織が成り立たないというのは、実は一番やばいと言える。

 ま、そのための空母だったりするんだけどね。ポータル頼りの兵力移動なんて、俺がいなかったら使えないけど、空母があれば、艦載機の輸送や運用は俺なしでもできるようになるわけだから。


 魔法が使えない人でも使える武器や道具を! 

 俺がいなくても、戦争できますように!


 字面にすると酷いけど、これ非常に大事。

 某戦争映画で、戦場では戦死がつきもの。上官は部下に自分の仕事を教え、その部下もさらに自分の仕事を部下にできるようにさせておく。指揮官が死んでもすぐに引き継げるようにしておく、という考え方だ。


 そんなわけで、コピーコアによる制御、管理、魔力生成を利用した航空艦の修理、改修が進められることになる。ウィリディス所蔵の、腐るほどある魔石をどんどん投じる。


 正直、そうするしか数ヶ月で戦力化なんて無理なんだけどね。

 そのおかげで、俺は別のことにも取りかかれるんだけど。



  ・  ・  ・



 その日、騎士学校の授業が終わって、ウィリディスに帰宅した俺たち――というか俺にお客さんがきた。

 王都騎士団、聖騎士のルインだ。何故、ウィリディスにいるんだ?


「陛下より、ウィリディスへポータルの使用許可をいただきまして」


 やさイケメンな聖騎士殿は礼儀正しく言った。


「あとはジン殿のご許可をいただければ」

「……ま、いいでしょう」


 前回の演習の際にウィリディスに来ているし、騎士殿はここでのことを公言しないという誓いを立てている。魔法甲冑にかかわり、こっちのパワードスーツも見ている。


「お昼はとりましたか? まだなら一緒に食堂でも」

「それはありがたい……あっ」


 俺の後ろにいるアーリィーに気づいたルインが一歩身を引いた。


「アーリィー殿下とお食事では? 私がお邪魔するのは――」


 さすが聖騎士殿。俺とアーリィーが婚約関係にあるから、空気を読んだようだった。

 本当は、ウィリディス食堂での食事を楽しみにしていただろうことは想像に難くないが、それは別に俺が一緒である必要はない。

 その元王子にして現王女殿下は朗らかな表情を浮かべた。


「ボクは構わないよ。というか、ルインと食事って、それはそれで貴重だよね」


 そんな感じで、彼女はかえって聖騎士殿を恐縮させるようなことを言った。ただ、彼女の言葉に頷ける俺である。確かにルインと食事をする機会などないだろうから。


「と、言っていますが、もしルイン殿のお話が、他に聞かれたくない案件でなければ、一緒にどうですか?」

「わかりました」


 ルインは少し困惑しながら同意した。冷静沈着で有名らしい聖騎士でも、戸惑うことはあるんだな。ちょっと意外なものが見れた。

 そのまま、ランチをウィリディス食堂でとるという流れになった。


 席は俺と向かい合う形でルイン。俺の隣にアーリィーが座り、あくまで俺とルインの話がメインという形となった。


「それで、話というのは?」


 変に緊張させたままというのもかわいそうなので、俺の方でさっさと話題を振る。ルインは背筋を伸ばした。


「先日の演習はありがとうございました。おかげでシュタール部隊の練成は順調。遠くない未来、大帝国が王国に侵入してきたとしても、そう簡単に後れはとらないでしょう」


 うん、前置きはいいよ、と口には出さずに先を促す。


「昨日のことですが、我らシュタール隊の一個小隊がボスケ大森林地帯からの遠征より戻ってきたのですが――」


 ルインは顔をしかめた。


「魔獣との交戦中に未知のダンジョンに落ちてしまいまして。幸い、シュタールは損傷機はありましたが全機帰還しました。ただ教導役の傭兵マッドハンターの魔法甲冑が……」

「マッドが? 無事なんですか!?」


 異世界召喚された傭兵マッドハンター。この世界における魔法甲冑のオリジナルともいうべきモノを操る男だ。今年の武術大会以来、親交がある人物である。


「彼は無事ですが、愛機を置き去りにしなくてはならない状況にありまして、どうにか回収できないかと相談に参った次第です」


 そう言うと、ルインは頭を下げた。

実は、ちゃんとした形の飛行型の空母(ならびに艦艇)を(魔力さえあるなら)、もっと早く建造する方法があるのですが、それにジンが気づくのは後の話。

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