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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第436話、ウィリディス演習地


 三号魔法甲冑シュタールが整備担当の職人たちにメンテをされている間、騎士たちは昼食後、午前の演習の反省会を行った。

 それぞれが手応えをつかんだようで、終始和やかな雰囲気で進行したようだった。


 さて、そんな彼らを尻目に、俺は意地の悪さを発揮した。

 うちの人型戦闘部隊を演習地に突っ込ませたのだ。TPS-1ヴィジランティが2機とTBG-1ヴィジランティが6機の計8機である。


 どちらもヴィジランティだが、型式番号が異なるように6機はバトルゴーレム、つまり無人機である。

 パワードスーツのヴィジランティの外観をそのままに、青藍ら同様、コピーコアことゴーレムコアが機体を操る。普通にTPS-1を量産しても乗り手がいないから、それならゴーレムにしようと考えたわけだ。うちの兵隊の主力はシェイプシフターだからね。


 ただ、一応、一個中隊分の有人機仕様のヴィジランティを生産しておこうとは思っている。乗り手をSS兵にする、という手もあるからだ。


 さて有人、無人織り交ぜたヴィジランティ8機は、先ほどシュタール隊が進んだ演習地を進撃する。目的は敵陣地の奪取と護衛戦力の殲滅(せんめつ)と同じ。


 だが迎撃の敵ゴーレムは倍以上。さらにその戦闘スキルも引き上げている。


 俺は例によって観測席から、演習の様子をモニターしている。


 と、シュタールを操る騎士たちが、ウィリディス側の演習を見にきた。これ見よがしにその姿をお披露目してやったのだから、当然だ。


 前衛第一陣と、ヴィジランティが目視範囲に入る。するとヴィジランティは脚部のホバーで地表を滑るように浮かびながら、肩のサンダーキャノンを先制とばかりに撃ち込んだ。


 さらに重機関銃装備の機体が、部隊の中央で適当な地面の傾斜の裏に伏せると二〇ミリ弾を連射。残る機体は両翼に広がりながら、機関銃の射線を開けながら前進を継続した。


 両翼のヴィジランティは、敵との距離を詰めつつ残敵掃討にかかる手はずだったが、その前にゴーレムの前衛は全滅した。第一陣撃破はすべて射撃武器によるもので、近接戦は一度もなく終わった。


「……」


 シュタール隊の騎士たちは開いた口が塞がらないようだった。


「俺たちより倍の数はいたよな……?」

「まあ、武器が違うからな武器が」

「そ、それもそうだな……」


 続いて、壁のような地形が連なる岩場。シュタール隊はブーストであっさり通過した場所だが、ヴィジランティ隊の動きに騎士たちに困惑した。


「何をしているんだ……?」


 周囲を警戒しているのは、持っている武器が部隊の外側に向いているからわかる。だが一機のヴィジランティが壁にジャンプするも、登り切らずそのてっぺんに手でつかまった。


「なんで一気に越えなかったんだ?」


 そのヴィジランティはそっと頭だけ出して、壁の上を確認する。ゴーレムの姿を複数確認。ハードモードのゴーレム部隊が、壁を越えてくる敵を待ち伏せしているのだ。


 ゴーレムの姿を確認したヴィジランティは、壁を降りると、腰にマウントしていたウェポンラックから筒状の物体をつかんで、それを壁の向こうへ放り投げた。


 広がる白煙。煙幕である。すると敵ゴーレムが電撃弾を撃ってきた。煙を突き抜ける魔法弾は、しかし空を切った。


 その頃、ヴィジランティは二手に分かれて迂回し、別の場所からブースタージャンプで壁を越える。煙幕に気をとられている敵ゴーレムを挟み込むように射撃しつつ前進、排除していった。



  ・  ・  ・



 ヴィジランティ隊の演習は終わった。味方三機が被弾、敵五〇体の撃破。ハードモード相手に無傷とはいかなかった。


 だが、こちらの演習を見学したシュタール隊の騎士たちは愕然(がくぜん)としていた。

 彼らは悟った。もしハードモードのゴーレム部隊と交戦したら、自分たちは全滅していたに違いない、と。


 なおヴィジランティの有人機仕様に乗っていたのはマルカスとアーリィーだったのだが、特にアーリィーが実際に動かしていたのを知った騎士たちは大きく驚き、彼女に対して尊敬の念を抱いていた。


 午前のシュタール隊に続き、ヴィジランティ隊の演習も視察したジャルジーは頭を抱えていた。


 とくにヴィジランティの大半が無人仕様のバトルゴーレムだったことに、『いっそゴーレムを採用すべきだろうか……』などと公爵殿は言っていた。


 指揮官であるルインと騎士たちは、こちらの演習後ずっと討議している。

 ヴィジランティがシュタールより性能がいいのは理解していた。だが演習結果を思い起こすと、性能以外の要素に話題は集中した。


 まずは武器の違い。ヴィジランティが使用していた射撃武器の強力なことは全員が認めた。機体性能はともかく、これらの武器をシュタールが運用できれば、攻撃面では同等になれるはずである、とも。


 次に機体の運用方法。主に戦術である。前衛と後衛の配置の見直し、飛び道具の積極的使用と、その射線確保などなど。特に前衛の位置取りによっては、後衛が射撃できなかったことがあった点が指摘され、改善点としてあげられた。

 一通り終わった後、ルインと騎士たちは揃って俺のもとへやってきた。


「賢者ジン。魔法甲冑の戦術について、我々にご教示いただけないでしょうか?」


 その頃には、リアナのレポートもできていたので、うちの軍事顧問である彼女を交えて、シュタール隊の戦術と機体の動かし方などの指導が行われた。


 なお、一部の騎士は、見た目少女であるうちの最強兵器を侮った結果、あっさり返り討ちにあったことを追記しておく。


 世の中には、年下の可憐な少女にこっぴどく叱られるのが我慢できない大人もいるのだ。


 翌日からの演習では、ゴーレムのレベルを上げた。結果、シュタール隊の被弾判定が増加した。頭で戦術を理解しても、身体が追いつかないというやつだ。

 それでも着実に経験を稼ぎ、回を重ねるごとにその動きは上達していった。


 うちのパワードスーツやバトルゴーレムの最新データが、シュタールのコピーコアに移植されたことで、操縦者に対する機体の反応が向上した。この貸しは高いぞ。コピーコアが、うちと同じだからできたことだが。


 三日間の演習が終わるころ、シュタール隊の技量は飛躍的に上がり、ルインに大変感謝された。俺や、実際にパワードスーツを操って指導したリアナに対して、騎士たちは敬意を払うのだった。


「ここは最高の演習地でした」


 ルインは、ウィリディスの演習地を見渡す。岩だらけの地形は、初日とはまた違っている。


「いったいどういう魔法なのですかな? 場所は同じなのに、毎日演習地の地形が変わっていた」

「同じ地形だと新鮮味がないでしょう?」


 ダンジョンコアで丘を作ったり穴を掘ったりしただけ。もっともそこまで念入りなものではなく、適当感丸出しで手抜きもいいところだが。だってそこまでやって疲れるのも馬鹿らしいからな。


「騎士たちの実力も目に見えて向上しましたし、魔法甲冑用の新武装も提供していただけるという話ですので、大変有意義でした」


 あと、ここの食堂の食事――というルインの言葉に、俺も笑みをこぼした。


「気にいっていただけてよかった」

「またぜひウィリディスに来たいものです」


 機会があればな。俺は目を伏せた。

 俺も、王都騎士団には感謝しているよ。


 上空に張り付かせた偵察機の戦場監視や部隊運用――あの仮想敵であるゴーレムも、ある程度こっちから指示を出して動かしていたんだよねぇ。

 あとヴィジランティの改良点と武装について。……あのマジックロッドは面白い武器だ。


 最後に機体の輸送。

 馬車に乗せられて運ばれる三号甲冑シュタールの姿を見やり、俺は思う。戦地近くまでポータルを利用する運用もいいが、被弾して動けなくなった機体の回収や、戦場へ迅速に移動できる手段の必要性を感じていた。


 あれは何だったか。とあるロボットアニメで、航続距離を伸ばすための空飛ぶ足場があった。別に空を飛ぶ必要はないがホバーで地上を浮きながら戦地まで運ぶというのも悪くない。

 つまるところ、こっちも収穫があったということだ。

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