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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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425/1944

第423話、対決、人狩り部隊


「追い詰めたぞ、異世界人!」


 大帝国特殊任務群、リベレイター部隊を率いるディリー・ペッカーは声を張り上げた。

 三十代半ば。自身も魔術師であるペッカーは細身であるが、その独特の髪型のせいで目立つ人物だった。


 リーレと橿原(かしはら)――かつて大帝国が異世界から召喚した者のリストにあった二人である。浅黒い肌にベレー帽の女がリーレ。髪の長い、しとやかそうな少女が橿原トモミだ。大帝国領を移動していたことで、その存在を掴み、リベレイターに出動命令が出た。


 この二人は、その戦闘力が高いことで特に危険視されていた。ゆえに、優先的に捕獲ないし始末をつけなくてならないとされている。


「これが最後の通告だ。降伏しろ!」

「うっせ、キノコ野郎!」


 リーレが間髪いれずに、ペッカー――その独特の髪型をなじった。頭のシルエットがキノコに見えるのだから、わりと的を射ている。


「はは、この状況で威勢だけはいいな、リーレ。もはや貴様たちに挽回の機会などない。どうせ運命は決まっているのだから、無駄な抵抗はやめろ」

「あたしは、これでも不死身なんだぜ? お前らにあたしが殺せるかよ?」

「貴様はそうでも、カシハラトモミは不死身でないだろう。そっちを始末した後、貴様を蜂の巣にして本土へ連れ帰ってやる。なに、どうせ死なんのだから遠慮はいらんだろう」

「クソが!」


 リーレが吐き捨てる。包囲する魔術師たちが一斉に呪文を放つ構えをとる。いかに魔法に長けるリーレといえど、すべてを防ぐことができるかどうか。


 ペッカーは、静かに腕を振り上げる。振り下ろされた時が、最期だ――そうほくそ笑んだペッカーだったが、思いがけない方向から呻き声が聞こえた。


「うおっ――」

「あ――」


 何事かと視線をやれば、魔術師たちが見えない何かに殴られたようによろめき、頭から血を噴きながら次々に倒れていく。

 わけがわからず、ペッカーは目を見開いた。


「何事だ……!?」



  ・  ・  ・



 背中を向ける敵など、案山子も同じだ。


 以前、リアナが言っていた言葉が、俺の脳裏に甦る。


 うっすらと雪が残る丘の上から、DMR-M2マークスマンライフル――風魔法による消音装置付きを、文字通り連続射撃するリアナは、装弾数20発を手早く撃ちきり、20人の敵兵の殺害した。


 さすが優良射撃手であるマークスマンでもあるリアナ。全部ヘッドショット。敵じゃなくてよかったよ、本当に。


 ひょっとして俺たちが行かなくても、彼女ひとりで全滅させられるのでは。


 と、さすがにそこまで都合よくはいかなかった。大帝国の連中も、遅まきながら、動きを見せていた。まだリアナの位置を掴んでいないようだが、方向は特定しつつあるようで、その向きが変わりつつある。


 もっとも、そのあいだに何人かが血祭りにあげられていたが。


 ポータルポッドを投下、そのポータルを使って地上に降りた俺、ベルさん、リアナ、マルカス、サキリス、SS兵ら。ちなみに、マルカスはヴィジランティ装備、逆にリアナは銃を使用するための通常武装だ。


 比較的近くにポッドを落としたのだが、敵の反応は鈍かった。リーレたちのほうに集中していたためだろう。一応、様子見に三人の敵兵が来たが、それらを瞬殺した俺たちは、早速行動を開始。


 リアナに遠距離からの射撃を命じ、敵を減らしつつ、俺たちが、リーレと橿原を保護するという段取りだ。


 さて、狙撃で数が減っている敵部隊だが、その動きは大きく二つに分かれた。新手に対応しようとする者たちと、リーレと橿原に向かおうとする者たちだ。

 とりあえず、彼女らの正面にいる連中が邪魔だな。


「マルカス、重機関銃でリーレらの後ろの敵を攻撃しろ! 俺は前の奴らを一掃する。サキリスは、彼女たちのもとへ急行!」

『了解!』

「承知しましたわ!」


 マルカスの操るヴィジランティがその場に止まると携帯するTHMG-1重機関銃を構え、引き金を引いた。

 実弾系機関銃は必要、というリアナの提案にしたがって考案された重機関銃は、20ミリ弾を重々しく吐き出した。


 朝の空気を裂き、よく響いた銃声は注目を集めるに充分だった。リーレたちを追撃しようとした魔術師たちのそばに着弾する20ミリ弾。派手に土と雪を巻き上げたそれが、地面を縫うように走り、直撃した魔術師の身体を上下に引き裂いた。


 航空機用の12.7ミリ弾だって、人体を引きちぎる威力があるのだ。それより大きい20ミリ弾を胴体に喰らえば、生き残るほうが奇跡だ。


 断頭台の一撃にも似た凶弾が、魔術師らを狩る。魔法障壁で一撃を耐えた魔術師もいたが、二発、三発と連続して被弾すれば防ぎきれず、雪上にその肉片を散らせた。


 マルカス機が後ろの敵を叩いている間に、俺はエアブーツの加速で、一挙に距離を詰めていた。俺の視界に入った敵兵が数人、クロスボウを構え、魔術師らも杖を持ち上げる。全部で13人か。


「遅い! エアブラスト!」


 風の刃が吹き荒れ、敵兵たちを切り裂く。魔術師は、とっさに障壁を展開し難を逃れる。なかなか反応がいい。錬度の高い部隊かもしれないな。残り7人。


「だが、そんな正面だけを守る障壁でいいのかな?」


 アーススパイク! 魔術師たちの足元の魔力を動員、岩の刃が下から突き上げ、敵を串刺しにした。

 前面の敵は排除。ちらと視線をやれば、背中に翼を生やしたサキリスが、リーレと橿原のもとに駆けつけていた。負傷した橿原に癒魔法を試みている。俺もそっちへ行くぞ。


「よう、ジン」


 俺に気づいたリーレが不敵な笑みを浮かべた。相変わらずの様子だが――


「リーレ、お前、眼帯はどうした?」

「ああ? あー、そういや、どこやったかな。わかんね」


 あっけらかんと言い放つ。


「昨日から追い掛け回されてたからな。もう無茶苦茶だよ。つか、ジン、お前らこそ、ここで何してるんだ?」

「なに、ちょっと大帝国へ行ってきた帰りさ」


 俺は、橿原とサキリスのもとへ着き、膝をつく。


「傷の具合は?」

「よくありません、ご主人様」


 サキリスが悲壮感を漂わせる。


「衰弱が激しく、治癒魔法を試みましたが、むしろ命を縮めてしまいそうです!」

「つまり、もう魔法じゃヤバイってことだな……」


 そういう時のための非常薬。ストレージから、エルフの泉から汲んだ精霊の秘薬。


「これの半分を傷口に。残りは飲ませろ」

「はい!」


 俺から秘薬を受け取ったサキリスは、橿原の背中に青く澄んだ薬をかけた。リーレが珍しく不安な表情を浮かべる。


「助かるのか?」

「まだ生きているならな。この秘薬で回復するよ」

「よかった……」


 心の底からホッとしたのか、リーレはその場に座り込んだ。さすがの彼女もここでドッと疲労感が押し寄せてきたらしい。

 本当、この場に俺たちが居合わせなかったら、異世界仲間が死んでるところだった。

 周囲に気を配れば、すでに機関銃の銃声は聞こえず、敵の姿はなかった。

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