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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第409話、美人のお医者さん


 エリサ・ファンネージュがウィリディスの仲間に加わった。


 俺は彼女のために、研究室と実験室を制作した。場所は地下屋敷の奥にある、研究ならびに製造区画である。

 いつものようにサフィロの力で部屋を作り、魔力生成で必要な家具や道具一式を用意する。さっそくエリサは魔法薬作りを開始した。


「便利よね、魔力生成って」


 試験管を模したガラス瓶の中に、水とすりつぶしたクアブラッドの葉を入れるエリサ。


 クアブラッドは薬草である。ペースト状にして塗り薬にしたり、水に溶かしてポーションなどにする。

 基本的な薬草などは、魔力生成で生産ができるので、素材調達の手間は大幅に軽減されている。


「こうして、魔力を注ぎ込む」


 水と薬草の入った瓶を慣れた手つきで撫でる妖艶魔女。

 とか言っているうちに、うっすらと青い液体――ポーションが完成した。


「はい、エリサさん特製のハイポーションよ」

「ポーションってこんな簡単にできるんだっけか?」


 何だか煮沸処理とか、色々手間がかかって作るものだと覚えていたのだが。彼女のしたことは青い薬草の葉をすりつぶして水に入れ、それに魔力を込めただけに見えた。


「品質は保証するわよ? というか、あなたが私の店で初めて買ってくれたハイポーションもそれなんだけど」


 なるほど、魔法薬の専門家が作るとこうなるんだなぁ。世界は広い。


 魔女といえば、攻撃魔法や補助魔法が得意という印象だが、エリサは身体の診断や治療などの心得があった。


「相手に、異常や変化を与える補助魔法を操るのだから、身体のしくみに精通していたほうがいいに決まってるわ」


 そこにきて治癒薬や状態異常解除薬などを作れるのだから、ある意味心得があるのは当然とも言えた。


 そんな調子のエリサだったが、彼女はすぐにウィリディスに住む者たちから受け入れられることとなる。

 いかにも魔女です、という三角帽子に魔女ドレスだった彼女は、ウィリディスに来てから、薄い水色の衣服をまとうようになった。

 エリサいわく――


「薬屋で売るわけじゃないから、魔女らしい格好をしなくてもいいからね」


 どこか看護士を思わす格好になったせいか清楚な印象が増した。

 そんな姿でウィリディス食堂で食事をするようになれば、食堂の料理人や、上の白亜屋敷に勤める王族守護兵、世話人たちの目にも留まるものだ。


 男連中がエリサのもとへ相談に訪れるようになった。料理で火傷しただの、模擬戦で打ちつけて痛いだの、まあ理由は色々らしい。


 エリサが簡単な手当てを施すと、美人に弱い男たちはそれで満足な顔をする。疲労抜きでエリサ式マッサージとやらを行うこともあるらしい。

 サフィロやシェイプシフターたちに確認させたが、性的なものはなかった。


 俺も一度体験したが……めちゃくちゃ気持ちよかった。かなり疲れがとれたのは事実で、効果はあったけどね。


 サキュバスといえば、エリサは一定期間に精を摂らないといけない身体だ。

 そのあたりは、これまでどおり、グレイブヤードに魔法薬と引き換えに届けてもらうことにした。上の屋敷で働く連中の中には、エリサと寝れるといえば喜んでくる奴らもいるだろうが、サキュバスであることを明かすことはできないので、NGである。


 魔法薬で思い出した。アウラ・ボナのボナ商会がグリグの件で潰れたため、王都では魔法薬の品不足現象が発生した。それによりポーションの値段が上がり、下級冒険者たちの財布を直撃するような事態になりかけた。


 が、ここでエリサが作ったポーションを、ウィリディス印で冒険者ギルドに卸したことで、もとの金額で、より上質なポーションを冒険者たちは購入することができて危機を回避することができた。


 冒険者ギルドでも、良質ポーションの出来のよさに驚いていた。商業ギルドが、ウィリディス印ポーションをどこから仕入れているのかと押しかけてきたらしい。はて、冒険者しか買わせていないはずなのに、どこからそんな情報を得てきたのやら……。


 さて、このほか、エリサの貢献を上げると、その1、翡翠騎士団の衛生キットの充実。衛生兵が携帯する薬の種類が豊かになった。


 貢献その2、グリグによる中毒症状を緩和させる薬の開発。俺が頼んだとおり、彼女は危険薬物であるガルガンダ系薬物の治療薬を作った。飲めば一発で治るわけではないが、その症状を緩和させ、リハビリの助けになるという。

 試験で安全性を確認しつつ、大丈夫なら治療に使われるとのことだった。



  ・  ・  ・



 ウィリディスの地下、研究施設などがある奥、屋敷とは反対側に俺は通路を作った。

 丘の西側へ通じる地下通路を、ダンジョンコアの力で形成しつつ、第三の地下格納庫をこしらえるのである。


 範囲を指定し、中の土砂を取り除く。天井が崩れないように、サフィロが魔力の層を張り固めたところに、指定の天井、床、壁を魔力生成で作り出して貼り付ける。それらをダンジョンコアが補強し、魔力層なしでも崩壊しないようにしていく。設置された魔石照明が天井から光源を提供する。


 俺が、手元のホログラフ状のパネルを操作している横で、ダスカ氏が感嘆の声を出す。


「いやはや、ダンジョンコアの力は、凄まじいものがありますね。城や砦も一日二日でできてしまうのではありませんか?」

「ここの屋敷も、そういう風に作ってる」


 今ほど効率的ではなかったから、日にちがかかっているけどね。一方で、北方のケーニギン領に作ったレイド基地は一日かからなかった。


 丘の西側斜面を切り開く。外の光が入ってきて、魔石照明より強い光に、俺たちは思わず目を細くした。


「大きな格納庫ですね。天井も少し高い」

「ここは大型機を運用する予定だからね」


 切り開いた西口に航空機用のゲートを作る。この地下と外を繋ぐ巨大扉は、まさしく秘密基地を作っているみたいで、ワクワクするのだ。


「大型機、ですか?」

「そう、大帝国の帝都まで往復できる大型の航空機のためのね」


 格納庫としての体裁が整うと、俺が作った通路を通って、ユナとシェイプシフター整備員たちがやってきた。一台のカートと共に。


 そこにあったのは、高さ80センチほどの青い正八面体。エルフの里を救ったお礼に提供された浮遊石と呼ばれる物体だ。古代文明時代のものかもしれないと言われるオーパーツ。


 たった一個しか手元にないものである。これをコアにした大型航空機――長距離偵察機を作るのである。

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