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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第396話、魔女エリサの正体


 墓守を名乗るグリム青年から、ボナ商会なる大手の薬・道具屋の名を知らないのかと聞かれた俺は、即答した。


「ない」


 そういえばでかい店って、あまり利用してないな。英雄から一転、目立つ所は避けるようになったのもあるけど。


「何故、エリサは、そのボナ商会がグリグと関係があると?」

「よくは話してくれなかったのですが……」


 言い難そうに上目遣いになるグリム。


「もし自分の身に何かあれば、ボナ商会の女社長、アウラ・ボナの仕業だからって。……これは僕の勝手な推測ですけど、ひょっとしたらアウラ・ボナに、グリグ作りを持ちかけられたとかじゃないですかね。エリサさんはそれを断って……」

「……そのアウラ・ボナにはめられたと」

「勝手な推測です。証拠はないです」


 魔法薬を専門に作る腕を持っているエリサである。彼女の腕を見込んで、グリグ作りに誘った、というのは、グリグを流行らせたいと思っている奴にとっては、それらしくある。


 言ってはなんだが、エリサ・ファンネージュという魔女は、美人だが得体の知れない不気味さも持っている。店もお世辞にも流行っている感じではない。アングラな連中に目を付けられてもおかしくはない。

 逮捕される前にエリサが、アウラ・ボナの名を出したというのも、その推測を裏付ける。

 ああ、ほんと、それらしくある。……この目の前の、グリムと名乗る青年の話が本当なら。


「話は変わるが、君はエリサとはどういう関係なんだ?」

「は? 関係、ですか?」


 俺の質問に、グリムはキョトンとする。まったく想像していない問いだったのだろう。


「比較的、親しい間柄?」

『つまり、エロエロな関係だったかってことだよ、グリ公』


 猫被っているベルさんは、口には出さず、魔力念話で言った。当然、俺以外には聞こえていない。

 ……しかし、なるほど、グリムは好青年っぽい。エリサも例のモーションで肉体的関係を迫る可能性も充分にありえる。


「親しい、というか、彼女とは仕事的なつながりがありまして――」

「ほう?」

「僕は墓守ですから、その……あまり大きな声では言えませんが、そういう薬品とか扱うこともあるんですよ」

「死体の保存とか?」


 あるいは死臭消しとか? そう言われると、これもそれらしく聞こえる。


 墓守というのは、結構ダークなイメージがあって、人によっては避けられることもある。『死』に関係ある仕事というのは、大概そういうもんだ。


『つまり、エロい関係はなかったと?』


 ベルさん、本人に聞こえない質問をあたかも尋問風に言わないでくれないか?


『なあ、ジンよ。グリ公のバッグの中身、確認しろよ』

「……グリム、失礼だが、君の持っている荷物の中身を見せてもらってもいいか?」

「はい!?」


 驚くグリムは、とっさにバッグを庇うような仕草をとった。……あ、これ、何か見られたらまずいもん入ってる率高いな。


「いきなりでビックリするのもわかるが……何かヤバイものでもあるか?」


 俺はじろりと、グリムを見やる。青年は口もとを引き結んだが、すぐに諦めたようにため息をついた。


「わかりました。ただ、人の目があるので、路地に入りましょうか」


 薬の売人みたいに人目を気にするんだな。グリグを持っているのでは、と俺が疑っていると思ったのかもしれない。疑われて騒がれる前に、潔白を証明しようとしているようにも見える。


 薄暗い路地へと入り込み、周囲の人の気配を探る。誰も見ていない。まさか俺を闇討ちしようとしている……こともなく、グリムはカバンを開け、中に入っている試験管じみた瓶がいくつか出てきた。ガラス自体に色がついているので、中の液体が何かわからない。


「これは?」

「……男性の精ですよ。つまり、そういうことです」

「は?」


 今度は俺が固まる番だった。聞き違いかな? つまり、アレだろう。白い――

 グリムは、少し苛立ったように言った。


「ジンさんもエリサさんのお店を利用していたならわかるでしょう? あの人、男性から魔力と精を採ろうとして――」

「あー」


 心当たりしかなかった。彼女には、誘われたこともあるわけで。


『なんだ、やっぱりこの小僧、あのねーちゃんと寝てたんじゃねーか』

『まだそうと決まってないよ、ベルさん』

『じゃあ、家で、ひとりシコシコしまくって……』

『やめないか』


 グリム青年がかわいそうな奴に見えてくるから。


「何故、その……精を瓶に?」

「彼女は、一定期間の間に男性の精を摂らないといけない体質なんです。だから時々、彼女の店からマジックポーションとか薬品を調達する代わりに届けていたんです。……と、体質のこと、知らなかったり?」


 グリムが逆に聞いてきた。ああ、まったく初耳だった。そんな体質の話。


『なあ、ジンよ。これひょっとして、エリサってねーちゃん……』

『ああ、俺もそんな気がしてきた』


 俺はグリムに向き直った。


「最近、王都で話題になってたサキュバス……。エリサだったんだな」


 グリムは微妙な表情ながら否定はしなかった。……なんでまた。



  ・  ・  ・



 俺はベルさんとグリムを連れて、王城へと足を向けた。


 逮捕、拘束されているエリサの様子を見に行くついでに、面会が叶うなら彼女の口から事情を聞くためだ。


 すっかり王都の英雄として、城の人間に覚えられているせいか、あっさりと城門を通過。……まあ、止められたらウィリディスのポータル経由で城内に入ればいいだけなんだが。

 適当に王都騎士団の者をつかまえて、おそらく取り調べを受けているだろうエリサの居場所を聞き出し、そこへ向かう。


 だが、一足遅かった。王都騎士団でもトップの実力者である聖騎士ルインが、取調べ室の前にいて、俺を見るなり声をかけてきた。


「やあ、ジン君。君も呼ばれたのか?」

「何です?」


 嫌な予感がしたので、聞こえなかったふり。以前の武術大会で剣を交えた聖騎士殿は、表情を引き締めた。


「つい先ほど、禁止されているガルガンダ系薬物の密造の罪で収監した女魔術師だが……人外の化け物――いや悪魔だったことが発覚したのだ」

「悪魔……」

「ギルドでも噂は聞いていたのではないかな? ここ最近出没していたサキュバスの噂は。どうやら、この魔女がそのサキュバスだったようだ」


 万事休す。グリグ製造が濡れ衣だったとしても、悪魔と発覚した以上、無罪放免はなくなった。


 何せ、人間にとって悪魔は排除すべき敵なのだから。

 ベルさんが思いっきり顔をしかめたのだが、むろん普通の人間にその表情の変化はわからなかった。

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