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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第391話、パワードスーツを作ろう、その2


 パワードスーツの外の装甲、内側の人工筋肉。さらに中に入る際、身体が密着するわけで、そのためのインナー部分を製作する。


 すでにこの時点で、人間がそのまま装着するには無理なサイズとなっていた。パワードスーツの肩幅が広くなったために、人間の肩から先を、パワードスーツの腕に入れて操作できなくなったのだ。


 というわけで、腕の部分は完全に機械の腕として、中に乗り込む人間の腕はパワードスーツの胴体に入れることとした。バイクハンドルを握るような感じだ。正確には、それぞれレバー式としていて腕の操作のほか、トリガーやスイッチなどもつけた。


 さて、インナーであるが、大蜘蛛の糸をもとにした強化繊維にミスリル銀を粒子レベルで結合させる。大蜘蛛糸素材は加工することで強靭かつ耐久性に優れる一方、魔力伝達線の素材でもある。

 これで中の操縦者の意思や動きを人工筋肉にダイレクトに伝えられるようにする。腕の操作はレバーなのであまり関係ないが、腰や下半身の操作には影響する。


 これを作るのに、久々に俺自ら魔力合成を行った。一着作るだけで、その日は俺はもうクタクタになり、久しぶりに吐き気と戦う羽目になった。休憩にユナさんのおっぱい枕で癒してもらった後、この日はアーリィーからたっぷり魔力を頂いて回復した。


 なお、二着目からは、一着目を解析したサフィロが何度かの試行錯誤の末、製作できるようになったので、以後楽をさせてもらった。


 さて、電力代わりに魔力を通すことで動かせるようになるところだが、これを長時間着込むことの快適性なども確かめなければならない。スペックばかりに気をとられて、実際の着心地が最悪では、使うに使えない。


 というわけで、サキリスに魔力を切った状態のパワードスーツ(張りぼて)に入ってもらう。新しい拘束具だよ、と言ったら、彼女は喜んで実験に参加した。この変態め。


 金髪メイドさんは膝立ち状態の張りぼてスーツに後ろから着込み、それを俺が閉めてやった。魔力が通ってないので、中のサキリスは手も足も動かせない。


「本当に身動きできませんわ。まるで石像になったようです、ご主人様」

「呼吸は? 胸は苦しくないか?」

「それは大丈夫ですわね」


 胸の豊かな彼女が言うのなら問題ないだろう。基本的に身体はスーツと密着しているわけだから、そこで呼吸しづらいようでは話にならない。


「じゃ、仮の頭と肩を乗せるから。空気穴は開いてるから窒息することはない。とりあえず、半日、その人型の棺桶で過ごしてね」

「は、はい……頑張りま――」


 言い終わる前に被せて、おしまい。一応、頭の目の辺りはゴーグル状にしてあるため、ガラス越しにサキリスの表情は見えた。


「俺は次の作業があるから離れるが、何かあったら魔力念話で呼びかけること」


 ちょっとした放置プレイ。

 念のため、シェイプシフターにサキリスの様子を監視してもらう。もし彼女が気絶したりするようなことがあった場合の非常事態に備えさせた。

 この試験自体は問題はなく、細かな調整をして採用されることになる。


「……」


 俺はここで、別の考えが浮かんだ。


 装甲をつけた、いかにもメカメカしいパワードスーツだけでなく、最低限の外装のみの身軽なパワードスーツがあってもいいのではないか、と。


 軽装スーツと、元々の予定であるパワードスーツ、その二種類を作ることにした。


 さて、従来のパワードスーツのほうであるが、インナースーツの動きをトレースして、きちんと動作するかの同調試験も繰り返し行われることになる。中の人間の意志に従って、外装もついてこなければ意味がない。


 こちらは、経験者であり言いだしっぺであるリアナが担当した。

 装甲なし、人工筋肉で覆われたスーツを動かしてみる。……最初は動きがぎこちなかった。特に細かな動作になると、中の人間の力の加減が微妙に伝わらず、ズレが発生するのが原因だった。


 サイズが人間よりひと回り大きくなってマッシブになっている分、挙動に差が出るのは仕方がない。足回りの挙動もだが、腕なんか完全に機械腕だし。


「……コピーコアを載せよう」


 というわけで、細かな動作、力の加減などを、中の人とのやりとりでコアが学習し、適性を詰めていく。


「加速」「ジャンプ」「着地と同時にダッシュ」――傍から見ると、リアナが機械的に独り言を呟いているようにしか見えず、ちょっとした狂気を感じた。


 青藍(せいらん)などのバトルゴーレムで基本的な動作をマスターしているコピーコアによって、動作の補正作業は順調に進行した。


 一方で、軽装スーツのほうは、あくまで人間が着る鎧という魔法甲冑のコンセプト同様、そのまま着用する形なので、動作や挙動についてパワードスーツのようなズレは発生しなかった。


 ロマンはないが、もうこっちのほうが早いし手軽なような気がした。軽装スーツは、某変身ライダーみたいなものと思えば、理解は早いと思う。


 ただ、軽装スーツは、リアナが当初提言した、重量物の輸送という点でパワードスーツに劣る。トータルで運べる装備の量がどうしても一般的な人間の輸送量に毛が生えた程度になってしまうのだ。


 とはいえ、それでも普通に運ぶより身体にかかる負荷が少ないために、一般歩兵の装備としては有用だとリアナは言った。


 ミスリルを織り込んだインナースーツと薄いながらも装甲がある点も好ましいが、パワードスーツに比べれば防御に不安がある。

 これをさらに魔法金属などで重量を増やすことなく補強もできるが、そうなると凄まじく調達にコストがかかり、量産性は悪くなる。

 軽装スーツ一着で、魔石エンジン搭載戦闘機並みのコスト(魔力)が必要になるがよろしいか?


 はじめは、俺とユナ、リアナ、時々ダスカ氏やサキリスが手伝っていたのだが、そのうち、パワードスーツ作りを見学していたジャルジーが、魔法甲冑作りの参考に、エルフのガエアとドワーフのノークを呼びたいと言ってきた。


 あわよくば俺が作っていたパワードスーツの技術を、魔法甲冑にも活かそうというのだろう。


 正直、気乗りはしなかったのだが、俺が人型兵器を作り、そしてそれをジャルジーが見ることができた時点で今さらと言える。


 どの道、あのふたりと顔を合わせれば、技術的なことで相談されるだろうし、どうせ教えたりすることもあるだろうから、それなら遅いか早いかの違いしかない。


 いくつか機密事項にして、口外しないようにする取り決めを交わした上で、二人の職人をウィリディスへ招く許可を出した。


 やってきたガエアとノークは、そこで目の当たりにした地下工場の設備と、見たこともない車や戦闘機などに驚愕し、また製作中のパワードスーツを見るにつけこれ以上ないほど頭を下げた。


「師匠、本当の本当に弟子にしてくださいッ!」


 エルフ、ドワーフの両職人は、ウィリディスの技術を学ぼうと協力は惜しまなかった。まあ、俺もエルフとドワーフの技術を学ばせてもらうから、ちょっとした取り引きではある。魔法甲冑のことを気軽に質問できるようになったし。


 ともあれ、ウィリディスにおけるパワードスーツの開発は進み、青藍とマッドハンターの魔法甲冑を足して二で割ったようなスタイルの機体が完成した。


 TPS-1ヴィジランティ。……名前については以前、ゴーレムで使ったのを流用した。


 サイズは高さ2.5メートルと、二メートル少しのモデルとした機体よりも頭ひとつ大きくなっている。オーガの平均身長くらいはあるだろうか。


 武装については、バトルゴーレムのものを改良した連装サンダーキャノンを両肩部に搭載。ほか、手に実弾系重機関銃や竜剣ことドラゴンテイルなどを装備が可能だ。

 背中にハイエアブースターで採用したブースター、そしてコピー・コアを積んでいる。


 完成したヴィジランティは、リアナが操縦することで稼動テスト、実戦を想定したテストをそれぞれ行った。


 ブースター効果で、青藍や魔法甲冑を凌駕する移動スピードを獲得。

 仮想敵として作った即席のロックゴーレムを竜剣で砕くパワー、そして敵の豪腕を機敏に回避する運動性など、充分な成果を発揮した。

 視察していたエマン王、ジャルジー、そして職人であるガエアとノークは、その高性能ぶりに歓喜した。


 ……うん、まあ、まずまずじゃないかな。


 元の世界でアニメや映画を親しんでいる俺としては、ヴィジランティに対してそういう評価となる。特徴がないのが特徴みたいな、そんな感じだ。


 最初のモデルは完成した。後はこれをどう向上させていくか、である。


 なお初期モデルは3機製作。アーリィーやマルカスは戦闘機に続き、パワードスーツの動かし方を練習していた。

 アーリィーは興味から、マルカスは騎士らしい装備だからと操り始めたのだが……家の人たちは実に積極的である。

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