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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第366話、ヴィルヤ奇襲


 街道を驀進していると、ルーフから空を見張っていたアーリィーが声を上げた。


「ジン! 空! グリフォンがいっぱい飛んでる!」


 俺は、デゼルト搭載のコピーコア(ナビ)に指示してパネルに外の映像を映してもらう。

 外部カメラが、装甲車より前方上空を通り抜けていくグリフォンの姿を捉える。……人が乗っているように見える。しかも一頭に二人、いや三人か。


「ヴィルヤに向かってるな」

「青色エルフか?」


 ベルさんが同じくパネルを覗き込む。連中にもこっちが見えているだろうか。だとしたら襲ってくるか……?


「アーリィー、このあたりの木の高さは?」

「えっと……」


 アーリィーがディフェンダーを引っ張り出すと、それを手に再びルーフへと戻る。


「だいたい、五〇メートルくらいかな? 古代樹にしてはあまり高くないね。グリフォンたちはその上を通過してる」


 比較の問題であって、それでも充分高いんだけどな。感覚が麻痺しているね。


「……こっちには来ないね」


 彼女の声。ダークエルフたちにとっても、あまりに見慣れない物体過ぎて見逃されたのか。


「エルフじゃないから、無視されたのかな」


 あるいはこっちが全速でかっ飛ばしていくから、追いかけるのを面倒と考えて諦めたか。飛行しているグリフォンのほうが速いのだが、ちょうど行き先が真逆だからどんどん距離が離れていく。


「数は……四、五〇頭くらい」

「で、乗っている青色エルフの数はそのおよそ三倍か」


 かなり窮屈そうに乗っている。あれではグリフォンも派手な機動がとれないのではないか。重くて。

 ともあれ、今はどうすることもできない。ただ連絡だけはいれておかねば。俺は魔力念話で、ヴィルヤにいる仲間を呼び出す。


「ユナ、ユナ、聞こえるか? こちらジンだ。青色エルフを乗せたグリフォンの集団、およそ50がそちらに向かっている。その三倍の兵を乗せているようだ。おそらく十数分後には敵はそちらにつくと思われる!」


 ナビが数えたので数については目視より正確だ。……聞こえたかな? 返事を待つこと、少し、魔力念話で返事がきた。


『お師匠、こちらユナです。いま、ヴィルヤでは青色エルフの軍勢が結界前に現れたと騒然となっています!』

「結界前に現れた、だ? どういうことだ!?」


 俺は思わず声を荒げた。相変わらずアクセルは全開。デゼルトは森の外を目指して突っ走ったままだ。

 古代樹の森はエルフのテリトリーだ。それなりの規模の軍勢が進んでいたら、ヴィルヤに近づく前にどう足掻いても気づかれてしまう。進発したエルフの軍勢もいたはずだ。それを避けて世界樹にたどりつくなど……。


『これは私の推察ですが――』


 魔力念話からのユナの声は冷静だった。


『おそらく、地面の下を移動してきたかと』



  ・  ・  ・



 結界に守られた世界樹、そして空中都市ヴィルヤ。


 ユナやサキリスらは、ジンの指示に従い、世界樹根元の城下町に移動していた。エルフの里の中枢たるこの都市の防衛の要となるのは、結界水晶である。


 青色エルフが大挙して押し寄せるなら、結界水晶の攻略は必須。逆にエルフはこれを守りきればよい。結界ある限り、敵も手出しはできない。


 女王より、エルフの守備隊には、地下から敵が来る可能性が高いと伝えられた。クリスタル・イーターによる攻撃を聞かされた彼らだったが、その反応は非常に鈍かった。


 エルフたちの頭には結界への絶対的信頼があって、それが破られることなど天地がひっくり返ってもありえないと過信していたのである。

 世の中に絶対などというものはないというのに――ユナはエルフたちの態度に嘆息するのだった。


「教官」


 バトルメイドコスチュームをまとうサキリスは小声を出した。


「エルフたちの視線が、ずいぶんとよそよそしく感じますが……」


 学生時代より、周囲の視線にさらされることに慣れているサキリスである。エルフたちの目、表情から棘を感じ取るのは難しくなかった。


「エルフは他の種族に対して冷淡ですから。彼らの言い分を代弁するなら、『神聖なる世界樹に人間がいるなど気に入らない』ということなのでしょうね」


 ユナの言葉に、サキリスも頷いた。エルフの他種族嫌いは有名だ。

 そうこうしているうちに、城下町を囲む城壁のエルフ兵たちが騒然(そうぜん)となった。


「ダークエルフ!? どこから現れた!」


 敵がやってきた。警戒していた地中からではなく、ヴィルヤの外、結界の前に。

 青色エルフの軍勢が忽然(こつぜん)と姿を現したのだ。


「主力軍が出た後なんだぞ! どうやってここまで来たと言うのだ!?」


 エルフの前線指揮官は、城壁からエルフ街道を進軍するダークエルフ軍を見やり声を荒らげた。進発したエルフ軍を撃破したのでなければ、ここに敵が現れるはずがないのだから。


 信じられないという思いは、ユナやサキリスも同じだった。てっきり青色エルフは地中から第一撃を仕掛けてくると思ったからだ。


「教官、敵はどうやってここまで発見されずに来たのでしょうか?」


 サキリスの疑問に、ユナは考え込む。古代樹の森には、エルフの警戒魔法が施されている。少数なら、迷わせる程度でその侵入を掴むのは難しいが、部隊以上の規模ならば発見は容易なはずだ。

 それをかいくぐって来るとは――


 ユナがジンが魔力念話を受けたのは、ちょうどこの時だった。

 グリフォンに乗ったダークエルフ部隊の進撃。グリフォンと青色エルフが結びついたとなれば、当然、クリスタルイーターもいることは確実。……ひょっとして地下にトンネルを掘ってヴィルヤまで迫った?


 クリスタルイーターは森を突破するために用いられた――ジンに自らの推測をユナは説明した。


 だがその時、またも場が騒がしくなる。青色エルフは第二の矢を放ったのだ。


 結界の前に進軍し、隊列を整えつつある青色エルフ軍。対するエルフ守備隊も城壁へと集まる。結界があるとはいえ、敵が表に来ている以上、そちらに集結するのは彼らの防衛手順として何も間違ってはいない。


 そう、だからこそ、読みやすいと言える。


 青色エルフに備えるべく視線が集まったその時、クリスタルイーターが本来の目的である、結界水晶破壊のために地下を掘り進め、結界内に侵入を果たしたのだ。

 局地的な地面の揺れと共に、イーターたちが城下町に突入。地面を食い破り、石畳を砕き、体長5メートルを超えるワームが地上に躍り出た。


 城壁にいたエルフ守備隊は、完全に虚を突かれた格好だった。手薄になった城下町を進むクリスタルイーター。目指す先は、当然、結界水晶だった。


「お師匠の読みどおりになってしまいましたね」


 ユナは蹂躙(じゅうりん)者の杖を手に、近くの民家の屋根の上に浮遊の魔法で上がる。視界確保のためだったが、立ち並ぶ民家のせいで、石畳を這いずるイーターたちの姿は見づらかった。ときどき粉々に吹き飛ぶ建物の破片を見やり、だいたいの位置はわかったが。

 最低限残っていたエルフの民がイーターから逃げているらしく、悲鳴が聞こえた。


「ざっと十数体は超えているようですね……」

「やりますか?」


 サキリスが背中にシェイプシフター装備の羽根を生やした状態で浮遊する。まるで美貌の人型悪魔のようにも見える。


「当然です。そのためにここにいるのですから! 深紅(しんく)――」


 紅蓮のバトルゴーレムが動き出す。脚部に新設された浮遊ユニットが唸りを上げる。

 傭兵マッドハンターの魔法甲冑の技術を応用し、浮遊魔法式を組み込んだ装備だ。石畳の上を滑るようにゴーレムが突き進む。


 ユナたちに与えられたクリスタルイーターの『火消し』に動く。エルフ守備隊が城壁に気をとられてできてしまった穴を埋めるために。


 だが、ダークエルフの指揮官は第三の矢を放っていた。いや、正確には一番最初に放たれた矢というべきか。

 結界破りの本命ともいうべき手を、すでに打っていたのだ。

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