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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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367/1943

第365話、炎の大釜


 女王の執務室を出た後、俺たちは早速行動に出た。


 まず、ヴィルヤの防衛強化だが、ユナとサキリスを残し、ウィリディスからポータルを繋いでバトルゴーレムの青藍(せいらん)深紅(しんく)、さらにスクワイアゴーレム三体とガードゴーレムを一〇体、シェイプシフター兵を二個分隊、運び込む。


 クリスタルイーターが侵入してきた際、彼女たちとゴーレム部隊は、現地守備隊と共闘する。水晶喰いどもがこなければ、結界が働いて安全ではあるが。


 そして俺、ベルさん、アーリィー、マルカスは魔法装甲車(デゼルト)に乗って、一度ヴィルヤを出る。


 敵がグリフォンを使うなら、こちらも航空兵力で対抗する。仮にグリフォンを奴らが使っていなくても、制空権を取った上での攻撃は、ダークエルフの部隊と交戦するだろうエルフ軍を掩護しつつ、万が一、ヴィルヤに救援が必要なら、そこから駆けつけることもできるから損にはならない。


 兵力は戦闘機1個中隊に加え、北方のベース・レイドに展開しているファルケ隊の半分をポータル経由で連れて行く予定だ。


 さらにTH-1ワスプ戦闘ヘリを6機――うち三機は強襲兵輸送コンテナを搭載して、SS兵合計30名(1個小隊)を運ぶ。エルフ軍の主力を支援する際に、歩兵が必要になるかもしれないからな。SS兵たちは新型武装を持つが、本格的な戦争参加は今回が初めてとなる。


 というわけで、俺はエルフ街道をデゼルトで爆走中であった。専用席のベルさんが声を張り上げた。


「なんで、森の外へ行こうとするんだ!?」

「航空機用のポータルを作るためだよ!」


 戦闘機やコンテナ付きワスプを通すとなると、ポータルのサイズも大きくなる。


「最初はヴィルヤに大型ポータルを置こうと思ったんだが、戦闘機を並べておくスペースが足りなくてな」


 いちおう、ヴィルヤの枝葉のドーム内の南側に航空機が通過できる隙間があるのだが、駐機スペースがない以上、飛行しながらポータルくぐった先が屋内というのは、あまりよろしくないのだ。


 同様の理由で古代樹が群生する森の中も不可。滑走路にもなりそうなエルフ街道は開けているものの、さすがに道の真ん中にポータルを置くと、よそ者や動物が中に入っても困る。

 そんなわけで、古代樹の森の外へと向かっているのだ。



  ・  ・  ・



 古代樹の森の南に位置するエルフ集落のひとつ、アングはすでに廃墟だった。


 この村はツリーハウスでなく、よくある木造家屋が立ち並んでいたが、いまは一軒残らず焼き討ちとなり、炭と廃材の山となっている。


 ダークエルフ第一遊撃隊隊長、クルータンは、薄青肌に銀髪の男である。

 背は高く、しかしエルフにしてはふくよかな体格だ。尖った耳はエルフ特有のそれだが、その凶相とあいまって悪魔のように見える。


 実際、エルフに対してクルータンは悪魔だった。老いも若きも、男も女も関係なく殺した。エルフ討つべし! 青肌のダークエルフを迫害してきたエルフどもに正義の鉄槌を下さん!


 かつて住民だったエルフどもは中央広場に立てた丸太に縛り付けてある。遊撃隊はその主力を村の後方の森へと隠していた。


 クルータンは、その時が来るのを待っていた。ヴィルヤから出てくるエルフ軍を。


「隊長、来ました! エルフです」


 斥候(せっこう)が戻ってくるなり、叫ぶように報告した。クルータンは唇の端をゆがめた。


「ようやく来たか」


 ふてぶてしく言い放ったクルータンの目に、エルフの軍をあらわす、緑地に鹿の紋章が描かれた軍旗とその軍勢が見えた。

 すでにご自慢の弓を持った偵察兵が前方に進出し、森から様子を窺っているのは知っている。


 その偵察兵の報告を受けて、アングまで軍を進出させてきたのだ。その数およそ500。狭い街道から、部隊を急ぎ足で進ませ横隊に展開させている。


 と、どうやら森の中を進んできた部隊もいたらしく、その横隊の展開が予想以上に速かった。

 いいね。クルータンは口の中で、その感想を呟いた。では奴らには慌てふためいてもらおうか。


「村に展開している者たちを下がらせろ。……着火だ」


 傍らにいた信号兵が角笛を鳴らした。その音を聞いたアング村のダークエルフたちは、ただちに火打ち石を使った着火を行うと、速やかに撤退を開始した。


 付けられた火は予め仕込んでいた油の線に燃え伝わり、柱にくくりつけられていたエルフたちの身体に燃え移った。


 エルフ軍に動揺が走る。クルータンには、悲鳴ともどよめきともとれるエルフたちの声が漏れたように聞こえた。……そうだ。さぞ胸が痛むだろう。同胞の死体が燃えているさまは!


 いや、エルフ軍の連中には、柱のそれがすでに処刑済みであることなどわからないだろう。距離が離れているからな。もしかしたらまだ生きているかもしれない――


 エルフ軍が、唐突に前進を始めた。

 ダークエルフが逃げ、燃えている同胞を救わんと義憤に駆られて突っ込んできているのだ。このまま中央広場を駆け、村人を救助するのだろう。


 ようこそ、自ら大釜に飛び込む哀れな白ウサギども! クルータンは肩を震わせ嘲笑した。


 アング村になだれ込むエルフたち。陣形は乱れ、一気に廃墟の村全体に浸透(しんとう)する。先頭を行く集団が広場に飛び込み、松明の如く燃える村人たちを救おうと叫んでいる。

 バーカ! 飛んで火に入るエルフども!


「火を放てェ!」


 クルータンの命令はただちに実行された。アング村の外縁に沿って仕掛けられた大量の油にファイアボールが放たれ、引火した。さらに広場を除く廃墟に紛れて縦横にめぐらせた油にたちまち火が伝わり、村は炎の釜へと姿を変えた。


 村に入ったエルフ軍の兵たちは、たちまち炎に囲まれ、その熱に焼かれ、煙に巻かれ、倒れていく。


 エルフどもの断末魔が真に心地よく、クルータンは踵を返すと、森の中で待つ部下たちのもとへ戻った。そこにはダークエルフの他に、グリフォンが無数に待機していた。


「さて、愚かなくそエルフどもが焼き上がるの待つ前に、次の仕事と取り掛かろう。ヴィルヤに向かい、残るエルフを皆殺しにするんだ!」

「オオッー!!」


 部下たちが腕を振り上げた。グリフォンどもも、それに刺激を受けたか羽根を動かし、咆哮した。

 クルータンはそれを満足げに見やると、自身の愛馬、いやグリフォンの背に飛び乗った。


「いざ行かん! ヴィルヤへ!」

クルータン:第一遊撃隊指揮官。グリフォン兵団を指揮する。なお今回のエルフ殲滅軍の総指揮官ではない。

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