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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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第363話、可能性の話 


 世界樹にある空中都市ヴィルヤ。

 光の精霊宮の一角、賓客が滞在する部屋は、曲面が多様された家具が多く、優しい木材の匂いと静かさがあった。

 が、そこにいる俺たちは、精神の安らぎを感じている余裕はなかった。


「観光で来られればよかったんだけど……」


 アーリィーはそれをとても残念がっていた。窓から見ることのできるヴィルヤの町並みは幻想的であり、ちらちらと動いている妖精の光が、メルヘンチックな効果をより引き出していた。


「いまはそれどころじゃないんだよね……」


 町中を武装したエルフが行き来するのが見えて、アーリィーはため息をついた。

 世のため人のためとはいえ、まあ、とんでもない問題に巻き込まれてしまったなと俺は思う。


 さて、エルフの里とそこに住む者たちの破滅の未来を変えるべく、俺たちが呼ばれたわけだが、果たして何ができるだろうか?

 実際のところ、俺たちが介入したからといって、先読みの力が見たものを覆す確証はないのだ。


「やることと言ったら目の前の青色エルフをぶちのめす、だろ?」


 机の上に座る黒猫は、迷うことなく言い放った。まあ、そうなんだけどさ。


「他に出来ることと言ったら……」


 マルカスが少し考える。


「偵察とか斥候……。あとは人質救出とか?」

「お、敵地まで行っちまう?」


 ベルさんが茶化す。


 正直、立ち位置が微妙なところではある。傭兵として参戦する、みたいな感じでいいのかね。エルフの指揮下に入ればいいのか、それとも勝手に動いていいのか……。できれば使い捨ての駒のようには使われたくないものだが。


 古代樹の森にしろヴィルヤにしろ、青色エルフと戦うことになったら、光の掃射魔法のような広い範囲を攻撃する技は使えない。周囲への被害が大きすぎるからな。エルフにとって古代樹はただの木ではないし。


 女王陛下と今一度話し合って、その当たりの立ち位置や役割をはっきりさせておこう。元々はエルフたちの戦いであるわけだし。


「それにしても――」


 アーリィーが外の、とりわけ輝く結界水晶を見つめている。


「青色エルフたちは、どうエルフの里を攻略するつもりなのかな?」


 結界に守られたヴィルヤ。そこを外部から攻撃して突破するのは不可能、というのがエルフたちの共通認識である。


「結界を無効化する武器とかあるのかな?」

「そりゃ、あるぞ」


 ベルさんは答えた。


「解除魔法は、おそらくすぐ塞がれるから意味ねえだろうけどよ。例えば魔断の槍みたいな障壁を引き裂く武器を結界にぶちこめば、穴は開くぜ?」

「一人二人、数人はそれで忍び込めそうだが」


 俺は顎に手を当てる。


「部隊を送り込むとしたら、魔断の槍のような武器が数本ある程度では心許ないな」


 入ってきたところをエルフたちに狙い撃ちにされる。

 すると考え込んでいたユナが口を開いた。


「ですがお師匠。密かに侵入するという意味でなら、その手もありなのでは?」

「詳しく」

「結界の中に入り込み、結界水晶を破壊する。……そうすればこのヴィルヤを守護する結界は失われ、大規模な攻撃が可能になる」


 巨乳の魔術師が言えば、戦えるメイドさんであるサキリスも手を挙げた。


「潜入だけでなく強襲でも使えるのでは? 例えば結界に開けた小さな穴でも、最初に飛び込むのが強固な防御力を持った魔獣なら、それが防衛側をひきつけている間に結界内に部隊を送り込むことも可能ですわ」

「クリスタルイーター……」


 ぽつり、とアーリィーが漏らした。周囲の視線が集まる。


「何だって?」

「あ、いや、結界水晶って水晶って名前だから。もしかしてと思って」


 俺とベルさんは顔を見合わせた。

 ふだん群れないはずの水晶喰いに襲われたドワーフ集落。不可解に追い立てられて喰われた住民たち、いるはずのない複数のグリフォンのいた痕跡。


「まさか、あれってここを襲うための予行演習だった?」

「わからねえよ。あのドワーフ集落に青色エルフがいた証拠はないんだからな」


 ベルさんは唸ったが、すぐに首を振った。


「ただ、イーターどもが自然に群れると言うのは考え難い。魔獣の集団を統率する魔法具でも使って操っているっていうなら、可能性はあるわな」

「クリスタルイーターが結界内で暴れたら、エルフたちは大混乱だろうな」

「間違いなく、結界水晶を守ろうとそっちに気が取られるだろうな。イーターどもは鉱物や鉱石が好み。連中にはさぞ美味しく見えるだろうよ」


 とはいえ、まだ仮定の話だ。青色エルフたちが結界を突破する方法を持っている確証はない。つい最近、水晶喰いの事件に出くわしたからといって、それが関係している証拠もない。説としては強引であることは認める。

 いや、ちょっと待てよ――


「なあ、ベルさん。ここの結界て、地面の中って影響してるのかな……?」

「!?」


 黒猫が目を見開いた。


「そいつはつまり、もし結界が地面の下からの攻撃に対して効果がなかったら――」

「クリスタルイーターが結界内に侵入できてしまう、ということにならないか?」

「それってやばくね?」


 もし青色エルフが、クリスタルイーターを使役していると仮定した場合、ヴィルヤを守る結界は無力化される可能性が出てきたということだ。


「そう、まだ可能性だ。結界が地面の下も働いているなら、この予想は杞憂(きゆう)で終わる」

「だが可能性が出てきた以上、考慮すべきじゃないだろうか」


 マルカスも頷いた。


 そこへ、扉が叩かれ、エルフの魔術師ヴォルがやってきた。


「皆様、女王陛下がお呼びです。……よろしいでしょうか?」



  ・  ・  ・



「エルフの戦略会議の結果、ヴィルヤから軍を出し、ダークエルフ軍を撃滅することになりました」


 女王の執務室。カレン女王陛下は憂慮の表情を浮かべながら言った。


「ダークエルフ軍がヴィルヤ以外の集落を制圧し、同胞が虐殺されるのを座して見ているわけにはいきません」

「そうですか」


 エルフの上層部がそう決めたのなら、そうなのだろう。兵を出して戦うということは、ヴィルヤの守りが薄くなることを意味するが、結界があるから許容できるということなのだろう。

 俺は首肯した。


「それで、我々は何をすればいいのですか?」

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