第326話、古代ダンジョン(仮)
敵性ゴーレムと、シェイプシフター兵が交戦した場所に到着した時、地面には、その敵性ゴーレムが、四肢をバラバラにしたような格好で横たわっていた。
現場に着く前に、スフェラから『申し訳ありません、主様。こちらから命令を伝えるより早く、偵察兵がゴーレムを無力化してしまいました』と報告は聞いていた。
シェイプシフター兵、やるじゃないか! 初見でゴーレムを一体撃破とは。
人型SS兵は俺の予想以上の働きをしてくれたようだ。
魔法装甲車から降りると、すでにユナとサキリス、他にもシェイプシフター兵たちがすでに集まっていた。
さて、その撃破した謎のゴーレムであるが、その身体を動かすゴーレムコアは、シェイプシフター兵の一人が両手で抱えて、本体より切り離している。
「君が仕留めたのか?」
『はい、主様』
男性の声である。四角張った兜、スリット部から覗く目は青く光っていて、どこか機械じみている。その身体は漆黒、未来的な戦闘スーツに軽鎧じみたアーマーがついている。腰にあるベルトには量産型魔法銃と携帯用ポーチなどがついている。一見すると、不定形の黒スライムだとは思えない姿だ。
「どうやって倒した?」
『はい、敵は動きが遅かったので、背後に回りました。そのまま上半身と下半身の間の空間に手を突っ込み、コアを切り離しました』
「よくコアを切り離すという考えに至ったな」
シェイプシフターにそういう知恵があるとは……。俺は感心したが、SS兵は機械的な調子で答えた。
『はい、魔石銃も刃物も、敵の強固な装甲を抜けませんでした』
なるほど、最初は普通に攻撃したのだが、効かなかったからゴーレムの身体を制御しているコアをどうにかしようとしたということか。……うん?
「サンダーバレットでコアを撃たなかったのか?」
一応、弱点となるコアが剥き出しになっているから、そこを狙い撃てばよかったのでは、と思った。まあ、撃っても効かなかったかもしれないが。
シェイプシフター兵は、数秒黙った後、首を小さく傾けた。
『次からはそうします』
……。
まあ、何から何まで上手くやる奴なんていないさ。
「主様」
スフェラが声をかけてきた。
「ゴーレムが出てきた場所がわかりました。近くに洞窟のような裂け目があり、そこから先が地下ダンジョンになっております」
「ダンジョン」
俺は思わず天を仰いだ。うん、あってほしくなかったが。
スフェラが続けた。
「様子見に斥候を送りましたが、入り口付近にゴーレムが集結しつつあり、こちらの侵入を阻止する構えです」
出てくるわけではなく、守りを固めているということか。
ダンジョンの配置がゴーレムタイプということは、かつてはダンジョンマスターがいたタイプだろうな。今も生きてこいつらを操っているのかはわからないが。
何せゴーレムは命令に対して忠実。機械さながら与えられた命令を、主が死んだ後も実行する。
ダンジョンが無人で、ゴーレムが命令どおりの行動をしたと言うのなら、シェイプシフター兵が近づき監視コアを置こうとしたので、迎撃に出てきたという線が妥当か。なら近づかなければ、交戦も避けられるか……。
一度敵性存在を見つけると、兵力を整えて攻めてくる、とかそういう命令とか持ってたらだったらどうしようかね。そうなら放置しておくと逆に危ないということになるが。
「ジン、どうするんだ?」
ベルさんが聞いてきた。
マルカスも盾とハンマーを準備しながら俺を見る。先日俺が用意したホワイトオリハルコン製の武具でその装備は統一されている。
「うだうだ考えても、結局は行ってみないとわからない、ということだな」
「ジン?」
アーリィーに、俺は笑みを向ける。
「探索しよう。危険の芽を放置するわけにもいかない」
今のところ、ダンジョンで確認されている敵はゴーレム。表に横たわっているそれは、上半身と下半身、腕と足のパーツが分かれているが、構成されているパーツは金属製。アイアンゴーレムの亜種で、通常武器における攻撃に対して強い耐久性を誇る。防御力はもちろん、その金属アームで殴られたら、即死モノだろう。近接戦は避けるのが被害を少なくする戦術と言える。
そうなると魔法や、コアを狙った投射武器がいいだろう。例えばサンダーバレットとかな。
アーリィーは魔法弩を武器に、ホワイトオリハルコン製の軽鎧を身に付けている。
サキリスは例によってシェイプシフター武具。ユナも蹂躙者の杖を持つ以外、いつもと同じ魔女の三角帽子にローブ姿である。
今回はそれに加え、漆黒の魔女姿のスフェラ、魔石拳銃とホワイトオリハルコン製ブレードを装備したシェイプシフター兵が一個分隊(8名)、スクワイアゴーレムのブラオ、グリューンが随伴する。
木々生い茂る森、そのすぐそこに裂け目が地面に走り、そこにダンジョンの入り口があるという。当然ながら、車は入れないので徒歩で移動する。まあ、歩いて三分もかからなかったが……なるほど、裂け目はあるが、ひと目みただけでは入り口としては非常にわかりにくい。
ここから先は、このダンジョンのテリトリー。サフィロの支援は望めない。先導にSS兵が入り込んでいるはずだが……。
いた。裂け目をくぐって、進んだ先は、緑がかった石造りの大フロアが広がるダンジョン。長方形のその部屋は高さが五メートルほど、奥行きは30メートルほどだろうか。照明はなく、本当なら真っ暗闇のはずだが、緑の床や壁がわずかに発光しているのか肉眼でも室内を見ることが出来た。
SS兵が三人、こちらに背を向けている。そしてその視線の先には、無数の光点がよりはっきりと人魂のように浮かんでいる。
このダンジョンの守護者たち。ゴーレム――その目となる部分と、ゴーレムコアが青く光っているのだ。
「なるほどね、あれを突破しないと先に進めないわけか」
俺は先導のSS兵らの傍らに立つ。
「せっかく、向こうから弱点を発光させてくれているんだ。近接戦などさせずに仕留めてやろう」
俺が言えば、アーリィーがディフェンダーを、SS兵らが横列に展開して魔石拳銃を構えた。
「撃て」
魔石から放たれた電撃弾が一斉に空間を裂いて、ゴーレムたち、そのむき出しのコアに殺到した。




