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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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322/1941

第320話、ユナ、魔法車を修理する


 アクティス魔法騎士学校の高等魔法科授業を教えているユナ・ヴェンダート教官は、俺の弟子である。

 ……といっても、師匠らしいことはほとんどしていないのだが、彼女は俺を「お師匠」と呼んで、魔法のことを色々聞いてくる。


 本来は学校の教官として雇われたわけだが、いまは俺がその授業を引き継ぎ、ユナはもっぱら俺の助手をやっている。いちおう俺はまだ生徒なんだがね、この学校では。


 生徒が教え、教官が補助をする――普通なら憤慨ものなんだろうが、ユナは魔法にしか興味がないので、周囲の目や評判をまったく気にしていなかった。


 そのユナは、俺が与えた玩具に夢中になっていた。

 青獅子寮の地下にある魔法車専用秘密通路。そこに面した格納庫に、一台の魔法車が置かれている。

 それは俺とベルさんがヴェリラルド王国に初めてやってきたときに乗っていた初代の魔法車である。草原のど真ん中で故障してから、ストレージに回収して、そのまま放置されていたのだ。


 それが今、地下秘密通路の格納庫に置かれている。


「修理は進んでいるかな?」


 俺が声をかければ、車内で作業していたユナは顔を覗かせた。近くに置かれた机には、サンドイッチが皿にのったままだった。寝食忘れて没頭していたようだ。


「お師匠」


 何故、ユナが俺の魔法車を修理しているかと言えば、きっかけは彼女の発した言葉から始まる。


『そろそろ、私に魔法車の作り方を教えていただけませんか?』


 どうやら自分でも魔石動力の自動車を作ってみたいと思っていたようだった。魔法研究大好き人間のユナである。運転できるようになっただけでは不足ということなのだろう。


 それならば、と、俺は教材がてら、故障中の初代魔法車を出したのである。


 魔法車は、俺がもといた世界での自動車を外見上のモデルとしているが、その構造はかなり簡素化されている。……まあ、そこは俺が車の専門家ではないから、というのもある。


 基本は動力である魔石エンジンに、魔力伝達線を繋げて、魔力を流すことにより、稼動部分を動かす。

 例えば、アクセルペダルを踏むことで、ペダル裏の魔石が魔力伝達線に接触。すると魔力が発生し、信号となって魔石エンジンに伝わる。


 すると魔石エンジンから、前進するためのギアに繋がった別の伝達線に魔力が流れて、ギアを回転させる。回転するギアは、車軸を通じて車輪へと伝わり、車体を前進させる。


 ブレーキペダルや、変速ギア、ハンドルの操作も、基本的には同じような流れである。これら一連の動作を可能にするためには、稼動部と魔石エンジンを繋ぐ魔力伝達線と、その稼動部に「どういう動きをするのか」を伝える魔法文字の組み合わせが必須だ。


 ユナには、魔法車の仕組み、魔力伝達線の張り方、各部を稼動させるための魔法文字などを一通り教えた。足りない部品や必要な素材については、俺が用意してやることになっていたが……見事に彼女は修復ないし製作作業にのめりこんでいたわけである。

 今年23だっけか? 玩具を与えられた子供のような集中力だった。


「修理は間もなく完成いたします」


 ふだん表情に乏しいユナが胸を張った。そのとても大きな胸が揺れたが、それよりもややドヤった顔のほうに俺の視線は向いた。まるで幼子を見守るような気分になって、彼女が可愛らしくみえた。


「うん、それは頼もしい。優秀な弟子をもって俺は嬉しいぞ」


 弟子なんて口に出したことはないが、冗談めかしたつもりのその言葉に、ユナはますます有頂天になった。


「光栄です、お師匠」

「こいつが無事動くようになったら、本格的に君専用のオリジナルも作れるようになるな。どんなのがいいか今のうちに考えておけよ。それまではこいつを自由にしていいから」

「ありがとうございます、お師匠!」


 お、おう……。やたら力のこもったユナの声が珍しく、俺はちょっと驚いた。そんなに自分用の魔法車が作れることが嬉しいんだろうか。


 ……などと考えた俺だったが、後で聞いたところによると、お師匠の道具――この場合車だな――を与えられるのは弟子として誉れなのだそうだ。それはつまり、弟子の成長を、師が認めたことを意味するかららしい。


「ああ、そうだ。ユナ、車を修理する傍ら、君にひとつやってもらいたいことがあるんだが……」

「おっぱいを揉みたいのですか?」

「……このタイミングで、それを真顔で言うのはやめてくれないか」


 何の羞恥もなく言い放つユナもユナだが、それでは俺がただの変態みたいじゃないか。ちゃんと時と場所はわきまえてますぅー。


 ひとつ咳払いを挟み、仕切りなおす。


「車にひとつ機能を追加したいのだが……。エア・コンディショナー――空気調整装置を載せてみる気はないかね?」


 つまりは、エアコンだ。もったいぶった言い方のせいか、ユナが目をわずかに大きくした。


「それは、いったいどのような魔法具なのでしょうか?」

「ここに三つの魔石があります」


 俺は、机の上に、火、氷、風属性の魔石をそれぞれ置いた。



  ・  ・  ・



 ウィリディスの地におけるマイホーム製作は順調に進んでいた。

 家具などはまだ入れていないが、一階と二階の大まかな部屋の配置は完了しつつある。……しかし、暑いな。


「サフィロ、室内温度、もう二℃ほど下げてくれ」


 しっとりかいた汗を拭いながら言えば、ダンジョンを管理するコアであるサフィロが『了解』と魔力念話で返してきた。サフィロの管理下になかったら、エアコンや扇風機は必須だな、こりゃ。


『マスター、アーリィー様がいらっしゃいました』


 サフィロが報告してきた。青獅子寮のポータルを通って、こっちの様子を見にきたのだろう。それとも、もう夕食時かな……?


「もういい時間かな?」

『お迎えのようです』


 事務的にサフィロは答えた。


「オーケー、じゃあ、今日はここまでにしよう。三階部分の部屋は明日にしよう」

『……マスター、三階の配置が決まっているのでしたら、私が空間を作っておきますが?』

「なに?」


 いま何て言った? 配置が決まっているなら、私が作っておきます、だと?


「そんなことができるのか?」

『肯定です』

「……」


 俺は閉口した。じゃあ、何かね? 俺がわざわざ、ここに足を運ぶことなく、例えば寝ているときや学校にいるときに、指示した工程を終わらせることができたということかね?


『肯定です』


 幸い、この地は魔力が豊富なため、マスターがいらっしゃらなくても内蔵魔力で、ある程度の作業は進められます――と、あくまで事務的にサフィロは告げた。


「……素晴らしい!」


 本音。そういうことはもっと早く言え! 


 基本的にこっちから言わないと自分からは言わないところが、まことにもって融通の利かない機械のようだ。素材の魔力生成項目といい、今回の自動作業機能といい……。まだまだ便利な機能があるが、俺が開示を求めない限り黙っているんだろうな、こいつは。


 まるで電卓だな。俺は思った。押せば答えを出すが、押さなければ何もしない。

 俺は、サフィロに、三階部分の部屋配置を教えると、やってきたアーリィーと共に青獅子寮に戻るべく歩き出すのだった。

※初代魔法車:2018年8月24日に追加(改稿)されたエピソード『プロローグその2』によって、ヴェリラルド王国にきたジンとベルさんは、車に乗って登場しております。

 それにより、のちのサフィロと名づけられる魔法車は二代目(二台目)ということになっております。

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