エピローグ その7
マルカスとスクワイアゴーレムらとテントと張る俺。女性陣は、魔法装甲車内で、お着替え中。着替えができる簡素な脱衣所もあったほうがいいな……。
その作業はさほどかからず終了。彼女たちもお着替えを終えて泉のほうへ向かっている。さてさて……その女の子たちがやや離れたところにいた。海ではないが、プライベートビーチっぽくあたりを砂地に変えたので、そこを拠点にしたのだろう。デッキチェアやドリンクボックス――氷魔石を詰めたクーラーボックスだ――が置かれている。
俺たちもボクサータイプの水着に着替え、そちらへ向かう。
「ジン!」
アーリィーが手を振ってくる。
健康的な白い肌。手を振れば、もはや隠すこともなくなった魅力的な胸も揺れる。彼女の水着は、緑、いや翡翠色のビキニで、腰に青と白――違うな空の模様のパレオを巻いていた。
翡翠色は、アーリィーの誕生石の色でもあるから、気に入っているのだろう。ただ、人前で水着は、まだ少し恥ずかしかったのかな。パレオなら、スカートを穿いているような感じで、やや露出は抑え目になる。……心持ちだけどな。
「よく似合ってるよ、アーリィー。可愛い」
「そ、そう……?」
照れたように頬をそめるアーリィー。
俺の隣でマルカスが、ほぅと感心したような吐息をつく。俺の嫁だぞ。
「あ、お師匠」
泉に膝まで突っ込んでいたユナが、俺たちに気づいて振り返った。
ぷるん、と揺れる圧倒的な二つの山。紐を首の後ろで結ぶタイプのホルターネックビキニ。肌の色ではおそらくこの中で一番白い彼女の水着は黒で、コントラストが非常に映える。
だがやはり突っ込まずにはいられない。圧倒的、肉! 圧倒的な肉感。ダントツ大きなそのバストのせいか、水着が小さく見える。まさにはちきれんばかりだった。……おぅ。
「男性用は、パンツだけなんですね」
いつもの淡々とした調子でユナは言った。表情が変わらないせいか、はたしてこの娘に羞恥心はあるのか。……いやまあ、いちおうあるんだけどな。
そこへラスィアさんとヴィスタ、ダークエルフとエルフの調査隊コンビがやってくる。おおう、ラスィアさん……。
褐色肌のダークエルフさんが身に付けているのは、いわゆるスリングショットと言われる露出強めの水着だ。スリングビキニとも呼ばれているらしいそれは、過激なものだとほぼ大事なところをカバーする程度で結構肌が……。
これはエロい。ふだん知的な褐色美人が、こんな露出強い水着を選ぶとは……。ギルド制服でもプロポーションのよさがかもし出されていたが、それが露わになっていると鼻血ものだ。
だが当のラスィアさんは、すました顔で言うのだ。
「この程度、普通ですよ」
ダークエルフの基準では普通らしい。……確かに、この種族、もとから露出がやや強めだったからな。女の戦士ともなるとビキニアーマーちっくなのがデフォルトみたいな印象だ。
それに対して、エルフである魔法弓使いのヴィスタは。
「……む、あまりじろじろ見ないでくれるか? 恥ずかしいから」
薄緑色のワンピースタイプの水着姿である。いかにも森の人と言わんばかりに緑系である。ダークエルフと違って過剰な露出は好まない種族柄か、大人しめに見えるが、ヴィスタはヴィスタでスレンダーな体型をしているので、モデルばりに目を引く。
……ただ、気のせいかな。どこかでゲームか何かで、そんな女キャラクターを見たような気がしないでもない。
「泉はどうだい?」
「綺麗だな」
ヴィスタは答えると、視線を池のように広がっている大きな泉に向ける。
「全体的に浅いから、水が透けて底が見える。魔力を感じるほど清んでいる」
「いい場所ですね」
ラスィアさんもまた頷いた。
「ここなら、暑い日は泳ぎにきたくなりますね」
「言ってくれれば、いつでもどうぞ」
俺がデッキチェアのもとまで行くと、「ご主人様!」と後ろからサキリスの声がした。
エプロンをしている。その下には水着――これは……紺色のスクール水着っぽい。
ちょっと意外だ。やや露出癖のある彼女だから、過激なやつを選ぶと思ったのだが……。メイドさんだから遠慮したのだろうか。
ただ……あれで完璧スタイルのサキリスが、スク水とかミスマッチ感がどことなく背徳の香りを……。
「いやいや、眼福だねぇ、実に眼福だ」
いつの間にか、俺の足元に黒猫姿のベルさんがいた。親父モード全開だな、ベルさんも。
サキリスの後ろから、クロハがやってくる。黒髪メイドさんはこちらも紺色のワンピース型水着にエプロンと、ちょっとマニアックな格好。サキリスとお揃い。メイドさんたちはそれで統一したのか。
思えば、この世界に最近出回りだした水着、妙に現代チックなんだよな。衣装系統は妖精種族により結構発展しているとはいえ、このバリエーションを見ると、俺以外にも異世界から転移したやつがいて、入れ知恵をしているように思える。……うん、まあ、いいか。俺は損してないし。
「って、マルカスさん!?」
そのクロハが駆けてきた。見れば、マルカスの奴は、マジで鼻血を出して手で押さえていた。……ここの美女たちは、童貞を殺すつもりらしい。
デッキチェアにマルカス坊やを座らせ、クロハが甲斐甲斐しくお世話をする。ベルさんは「しょうがない奴だ」とぼやきながら、俺を見た。
「こっちはこっちで遊ぶか」
そうだな。というわけで、俺も砂浜もどきの砂地から泉へと足を入れる。冷たっ。だがとても綺麗な水だ。ヴィスタが言うとおり、水深が浅いので、立っている限りは溺れることもない。
ボート用意して漕ぐのもいいかもしれない。が、今回、俺は鉄馬を改良した水上バイクもどきを準備しているのだ。試し乗りにちょうどいい。
ということで、俺はアーリィーと泉の端から端まで歩いてまわってみる。泉の南側に川が流れていて、そこから流れていくので、一定の水量を越えないようになっている。泉で一番深いところでも一メートルくらいか。
「そういえば、アーリィーって泳いだことある?」
王子様生活で、人前で裸になるという習慣はおそらくなかったと思う。
「うん、わたしはないな。性別ばれちゃうから脱げなかったから」
「すると、泳げない?」
「うーん……そう、なるかな……」
アーリィーは上目遣いで俺を見た。
「ジンは泳げるんだよね? 教えて、もらってもいいかな……?」
「もちろん」
ということで即席の水泳講座が始まる。といってもまずは水に慣れるところからだね。そもそも潜るという経験がないだろうし。
ちなみに、他の面々に聞いてみたところ、他にユナ、マルカス、クロハは泳いだことがないことがわかった。
一方で、ヴィスタは「川や泉で泳いだことはある」と答え、ラスィアさんは泳げて「当然です」と断言した。何故かサキリスは「も、もちろん、わたくしも泳げますわ!」と少し怪しい調子で返した。
マルカスは「そういえば泳ぐ機会なかったなぁ」と真面目な調子で言えば、クロハもまた「ほとんどお屋敷で働いていて、買い物以外であまり外に行く機会ありませんでした」と、正直だった。
ユナは「泳げなくても魔法で浮けば問題ありませんから」としれっと言いやがった。そうなんだけど、ちょっとふてぶてしく見えるのは気のせいだろうか。
ベルさんは……聞くだけ野暮だったな。あの黒猫、何か猫の姿とは思えないスピードで頭だけ出してスイーと泉を泳いでいた。……まてまて、何だその泳ぎは? あのサイズだから浅くても足がつかないのはわかるが、進み方が魔法くせぇ。……そうか、魔法でも何でも泳いでいることには間違いはないか。魔法という言葉を使ったユナとはまた違った使い方を見せてくれる。
さて、昼まで水に慣れたり泳ぎ方を教えたりした後、昼食のお時間。俺の中でのキャンプの定番といえばバーベキューである。
が、冒険者連中のノリは最初は微妙だったりする。野外でメシというのに慣れているせいだろう。一方でアーリィーやマルカス、サキリスら学生組は、そういえばダンジョン飯という経験があまりないせいか、普通にノリがよかった。
だがバーベキューはダンジョンキャンプとは違うぞ? 以前ドワーフに作ってもらった野外用グリルを使って、冷蔵保存した肉や野菜を惜しげもなく焼く。匂いに釣られて獣どもがやってくる心配もなく、好き勝手にやってもいいんだ。
というわけで、どんどんお肉を焼き、焼きたてアツアツをかぶりついた。……塩、コショウで味付けしたが、焼肉のタレがないのが悔やまれる。どうにか作れないものかね……。
そんなことを言ったら、アーリィーやサキリスが、焼肉のタレなるものに興味津々だった。肉を美味くする魔法だ、と言ってやったら、ラスィアさんから「胡椒使ってるだけでも結構贅沢だと思うんですが」と呆れられた。




